『ハングリー・ハーツ』
原題:Hungry Hearts
2014年制作
イタリア映画
ヒューマントラストシネマ渋谷で鑑賞
「ワールド・エクストリーム・シネマ2016
「ハングリー・ハーツ」トレーラー
アダム・ドライバー、
アルバ・ロルヴァルケル
サヴェリオ・コスタンツォ監督、
サヴェリオ・コスタンツォ監督
アダム・ドライバー、
アルバ・ロルヴァルケル
『ハングリー・ハーツ』予告動画
監督・脚本:サヴェリオ・コスタンツォ
撮影:ファビオ・チャンケッティ
編集:フランチェスカ・カルヴェリ
音楽:ニコラ・ピオヴァーニ
出演:アダム・ドライバー
アルバ・ロルヴァルケル
ロバータ・マクスウェル
あらすじ
この作品はイタリア人監督による
イタリア映画ですが
舞台はニューヨークです。
エンジニアのジュード(アダム・ドライバー)と
イタリア大使館に勤めるイタリア人のミナ
(アルバ・ロルヴァルケル)は
ある日、中華料理店のトイレで
ドアが開かなくなり閉じ込められる
アクシデントに遭遇。
この偶然の出会いから2人は恋に落ち、
付き合い始める。
そしてミナが妊娠し結婚する。
ミナは食欲が落ちて
殆ど食べられないことが続き
胎児の成長にも影響が出始める。
でも、無理に食べようとはしない。
自然出産を望み水中出産に挑戦するが
上手くいかなかった。
望んだ方法ではなかったものの
息子は無事生まれる。
ミナは出産後さらに神経質になり
汚れた空気に触れさせたくないと
なかなか息子を外に出したがらない。
ヴィーガン(絶対菜食主義者)として
自分で屋上の温室で栽培している
野菜しか与えない。
熱が2週間続いても医者に見せると
毒を入れられると言い病院に行かない。
心配なジュードは彼女の目を盗んで
病院に連れて行く。
熱は心配ないが栄養が足りないために
かなり発育が遅れていると言われる。
動物性たんぱく質を与えるよう
アドバイスされたので
ジュードが1日3回食べさせることに。
しかし息子の体重が増えない。
実はミナが動物性たんぱく質の吸収を阻害する
オイルを与えていたのだった。
このままでは息子の成長が危ういと
児童福祉事務所に相談に行くが
母親の精神疾患が証明されないと
母子を引き離すことはできないと言われる。
困ったジュードだが、
相談した職員が帰るジュードを追いかけてきて
息子を預ける場所があるなら
強引なやり方で「誘拐」になるが
一旦母子を引き離してみてはと提案をする。
そしてジュードの母(ロバータ・マクスウェル)
の家に預ける。
ミナにはいつでも会いに行っていいと話す。
息子と母の家で暮らすようになるジュード。
3人で家に戻って暮らしたいと訴えに来るミナと
激しい口論になってしまう。
そして...
冒頭の2人の出会いは
ユーモアたっぷりで面白いです。
2人の結婚式の夜に未来への暗示的な
出来事が起こります。
誰かが結婚式会場のレストランの前で
鹿を撃って去って行くのです。
それを何度も夢に見てしまい不安になり、
体調がすぐれずマタニティーブルーに
陥ってしまう。
ミナの希望した自然出産には失敗。
ヴィーガニズムを徹底した子育ての拘りは
だんだん強くなっていきます。
なんとか息子の成長の遅れを
取り戻したいと考えるジュード。
ジュードの母親も孫の発育が心配でなりません。
出演者はほぼこの3人。
3人ともリアルな人物造形と
繊細な演技でドラマに惹き付けます。
アダム・ドライバーの見事なイクメンぶり。
赤ちゃんはもちろん可愛らしいのだけど
育児をする彼がめっちゃ自然で可愛らしいですヘ(゚∀゚*)ノ
理知的で穏やかそうだったミナが
どんどん神経質になっていくのを
アルバ・ロルヴァルケルが抜群の演技力で見せてくれます。
佇まいや表情、存在感の変化に驚きました。
ルックや構図の工夫が
主演2人の精神の追い込まれ具合を
上手く表現しています。
どうなってしまうのだろうとハラハラしました。
息子の名前が最後まで呼ばれないことには
普遍性を込めたのだろうか
それとも...
物語的には、
ミナはネグレクトしてはいないのだし
ヴィーガニズム自体が間違っているわけでもない。
ミナの育児ノイローゼが
重い精神疾患なのかは判然としない。
適切なアドバイスなどで
改善できたのではないか。
異国で不安を抱えながら子育てする
彼女の孤独に胸が詰まりました。
ラストシーンは微かな希望を見出すことが
できるのかもしれない描写だけど、
その前に起こることが切なすぎる。
うむむ、これも家族内の問題として
『ミモザの島に消えた母』と
構造的には似てる所があるなぁ。
見ごたえはありましたが
宣伝に引き合いに出されている
ロマン・ポランスキー監督
『ローズマリーの赤ちゃん』
(ジョン・カサヴェテス出演)
ジョン・カサヴェテス監督
『こわれゆく女』
と比べると正直そこまでの
傑作とは思えないです。
でも、
アダム・ドライバーとアルバ・ロルヴァルケルの
演技は素晴らしいので
興味をお持ちの方はご覧になってみてください。
赤ちゃんを子育て中のママには
あまり積極的にはおススメしません。
子育てを一人で抱え込んで悩まないでくださいね。
この作品は
「世界中のガツン!とくる映画集めました。」
がテーマな
配給会社クロックワークスの特集上映
「ワールド・エクストリーム・シネマ2016」で
上映の4本のうちの1本です。
他の作品は観れていませんが
『隻眼の虎』『ハイエナ・ロード』
『ザ・クルー』
この3本はアクション映画で
『ハングリー・ハーツ』とは毛色が異なり
「ガツン!とくる」
「ガツン!」の種類も違う感じです。
「ワールド・エクストリーム・シネマ2016」予告動画
サヴェリオ・コスタンツォ監督は
イタリアの作家でジャーナリスト、
TVのホストである
マウリツィオ・コスタンツォと
ジャーナリストのフラミニア・モランディの息子で
姉のカミーラ・コスタンツォも作家、監督です。
父のマウリツィオ・コスタンツォが共同脚本の
エットーレ・スコラ監督
ソフィア・ローレン、
マルチェロ・マストロヤンニの
『特別な一日』を今年のイタリア映画祭で観ました。
アルバ・ロルヴァルケルは
『夏をゆく人々』のアリーチェ・ロルバケル監督の姉で
同作品にも出演していました。
イタリア映画祭2016で観た
ラウラ・ビスプリ監督
アルバ・ロルヴァルケル主演の
『処女の誓い』は素晴らしい作品でした。
苛酷な労働環境と地位が低く自由のない生活環境で
女性は60歳まで生きられないアルバニアの山村に生まれ、
「宣誓処女」になり男として生きて家を継いだ
主人公(ハナ/マルク)が、
父母を看取った後、自分の生き方を問い直すため、
結婚の自由がないため恋人とイタリアへ駆け落ちした
ミラノに住むリラの元を訪れる。
(リラとは姉妹のように育った)
女性として生きる自分を取り戻す主人公を演じる
アルバ・ロルヴァケルの表情、肉体、佇まいが
圧倒的な力を持っていました。
フェミニズム的にも普遍性のある作品です。
アダム・ドライバーは今や
スターウォーズのカイロレンとして
有名になりましたが、
ジェフ・ニコルズ監督
『ミッドナイト・スペシャル』
マーティン・スコセッシ監督
(遠藤周作原作)
『沈黙-サイレンス-』
スティーブン・ソダーバーグ監督
『ローガン・ラッキー』(Logan Lucky)
テリー・ギリアム監督
『ザ・マン・フー・キルド・ドン・キホーテ』
(The Man Who Killed Don Quixote)
と、名監督の作品への出演が続きます。
そしてアダム・ドライバー主演
ジム・ジャームッシュ監督の
永瀬正敏もカメオ出演した
『パターソン』(Paterson )の公開が
とても楽しみです。
アダム・ドライバー
ゴルシフテ・ファラハニ
ジム・ジャームッシュ監督
Paterson(パターソン)トレーラー
今週劇場鑑賞した映画
『われらが背きし者』
『人間の値打ち』
『ハングリー・ハーツ』
鑑賞した映画の短評は↓
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に鑑賞後随時投稿しています。
ぜひ読んで下さい。
毎週月曜日に「なう」への投稿が
まとめてブログにUPされます。
投稿が遅れることがあるので
まとめ記事の下の
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アダム・ドライバーとワンコ
撮影:アニー・リーボヴィッツ
2014年ヴェネツィア国際映画祭
ロバータ・マクスウェル
アンドリュー・ガーフィールドとアダム・ドライバー
ダニエル・クレイグとアダム・ドライバー
カンヌ映画祭2016で