『日本のいちばん長い日』
日本映画
新作・2015年原田眞人監督版
(チネチッタで鑑賞)
旧作・1967年岡本喜八監督版
(キネカ大森で鑑賞)
2作品を観ての感想。
米内海相:山村聡
8月26日に入場者プレゼントで配られた
「終戦の詔書」
(昭和天皇による玉音放送の原稿)原文のレプリカと
現代語訳↓
↓旧作『日本のいちばん長い日』(1967年)予告動画
↓新作『日本のいちばん長い日』(2015年)予告動画
キネカ大森名画座の戦後70年特集で
1967年岡本喜八監督版『日本のいちばん長い日』と
『ゆきゆきて、神軍』(1987年原一男監督)
を観ました。
とても見応えのある2本立てでした。
新作映画を5~6本観たくらいの感じがしましたよ。
新作の『日本のいちばん長い日』は、
観る予定にはしていなかったのですが、
8月26日のレディースデーに上の写真の
『「終戦の詔書」原文レプリカと現代語訳』の
プレゼントがあるってこともあり、
この際見比べておくのもいいかと行きました。
(この日チネチッタで朝8:50の回で観て、
その後横浜シネマジャック&ベティに行って、
映画を4本観たという1日でしたf^_^;)
この新・旧の2本の映画は、
半藤一利氏の「日本のいちばん長い日」を
原作としています。
この本が出版された1965年(昭和40年)当時、
半藤氏は月刊「文芸春秋」編集部次長でした。
終戦20年の夏に出版せよという
社命のようなものを受けて書かれたそうです。
しかし、販売上の都合で
著名ジャーナリストの大宅壮一氏の
名前を借りて出版されました。
1995年(平成7年)の「決定版 日本のいちばん長い日」
から、本来の著者である半藤氏の名前での出版になりました。
(どうでもよいことですが、
1965年は私の生まれた年、
1995年は娘の生まれた年で、
この間の時の流れを実感してしまう次第です。)
決定版 日本のいちばん長い日 (文春文庫)/
半藤 一利
【自作再訪】半藤一利さん「日本のいちばん長い日」←クリック
1967年の岡本喜八監督版では、
原作が大宅壮一になっているのは
こんな出版社の販売事情があったからですが、
新旧2本の映画は同じ本を原作にしているため
当然のことながら似ています。
台詞が全く同じ個所もあったりします。
しかし、違いも多くあります。
旧作は文字通り14日~15日にかけての
降伏を決定した御前会議から
玉音放送が行われるまで、
クーデター未遂事件の宮城事件、
首相官邸と鈴木貫太郎首相の私邸などの
焼き討ち事件、
児玉基地から出撃する
陸海混成第27飛行集団、
厚木基地の第302航空隊、
などに関わる人間模様が、
膨大な出演者によって重厚に描かれています。
出演者はこれでもかという有名俳優が
ずらっと並びます。
そして女性出演者は、
鈴木首相私邸の女中原百合子役の
新珠三千代さんくらいしかいません。
完全なる男たちのドラマです。
新作も大枠は同じですが、
登場人物が減り、
男たちの熱いドラマが削られています。
旧作では時代の制約もあり、
天皇の描写はとても少ないですが、
新作では昭和天皇の言動が詳しく描かれています。
そして女性出演者は増えています。
阿南惟幾陸軍大臣の
家族ドラマを盛り込んだために、
奥さんや娘などが出てくるのと、
特別出演で戸田恵梨香がNHK放送局員だったりします。
旧作と新作を観て思った一番の違いは
汗の量かな。(;^_^A
汗の量に象徴される
「熱いドラマとメッセージ」迫力の差は歴然。
旧作は錚々たる俳優陣が
本当に汗を額から軍服まで
大量に滲ませての熱演です。
うちの娘は
「スクリーンが狭そうでぎちぎちしている」と言います。
バイオレンス描写も派手。
阿南陸軍大臣の切腹は旧作の大きな見所で
三船敏郎は壮絶に演じて重い場面。
役所広司の場面は切腹の必然性が
あまり伝わって来ずさらっと終わっていました。
新作は、俳優陣は有名俳優以外も
ちゃんと演技のできる人を集めていますが、
スミマセンが画面に引き付けられる
オーラが足りません。
原田監督のアメリカ仕込みの
見やすい流れの演出と、
息子の原田遊人のスムーズな編集で
終始テンポよくさらさら~っと
進んでいくので眠くなってしまいました。(^o^;)
それから、画面に「Imperial decision(聖断)」
などと英語で入れるのは個人的に好きではありません。
昭和天皇を人間として造形した本木雅弘は好演です。
しかし、こういった描写が
天皇の戦争責任を曖昧にする
イメージに利用されないか不安が残ります。
私は「昭和天皇はイイ人だったんネ説」
のようなものは
警戒してしまいます。
戦後生まれの世代が、
戦争映画を作ることに意義はあります。
戦争を語り継ぐことは大切です。
旧作と新作の大きな違いは、
平和な日本を築こうという
メッセージの強さにもあります。
今作られている新作映画も、
戦争を体験した人たちが、
真剣に取り組んでいる
昔の戦争映画も、
両方観ることをおすすめしたいです。
(今上天皇の意志もないがしろにしている
安倍総理は特にです。)
新作を観て勉強になった、感動したという方、
そうでもなかった方、
どちらにしても、
新作と旧作の両方を見る価値はとてもあります。
新作・旧作の違いの詳しい解説などは
オーソリティーがしてみえるから、
そういう記事を読んで下さいな。
1967年版
監督岡本喜八
脚色橋本忍
原作大宅壮一
製作藤本真澄 、 田中友幸
撮影村井博
美術阿久根巖
音楽佐藤勝
録音渡会伸
照明西川鶴三
編集黒岩義民
スチル吉崎松雄
2015年版
監督原田眞人
脚本原田眞人
原作半藤一利
製作総指揮迫本淳一
エグゼクティブプロデューサー関根真吾 、 豊島雅郎
プロデューサー榎望 、 新垣弘隆
制作松竹
撮影柴主高秀
音楽富貴晴美 、 富貴晴美
録音照井康政
整音矢野正人
音響効果柴崎憲治
照明宮西孝明
編集原田遊人
衣装デザイナー宮本まさ江
ヘアメイク吉野節子
キャスティング石垣光代
ライン・プロデューサー芳川透
助監督落合俊一
スクリプター山内薫
SFX/VFXスーパーバイザー小田一生
企画協力プロデューサー城戸史朗
出演:左が1967年、右が2015年
東郷外務大臣:宮口精二 近童弐吉
松本外務次官:戸浦六宏 長澤壮太郎
鈴木総理:笠智衆 山崎努
米内海相:山村聡 中村育二
阿南陸相:三船敏郎 役所広司
岡田厚生大臣:小杉義男
下村情報局総裁:志村喬 久保酎吉
井田中佐:高橋悦史 大場泰正
竹下中佐:井上孝雄 関口晴雄
椎崎中佐:中丸忠雄 田島俊弥
畑中少佐:黒沢年雄 松坂桃李
梅津参謀総長:吉頂寺晃 井之上隆志
豊田軍令部総長:山田晴生 井上肇
石黒農相:香川良介
平沼枢密院議長:明石潮 金内喜久夫
荒尾大佐:玉川伊佐男 田中美央
大西軍令部次長:二本柳寛 嵐芳三郎
小林海軍軍医:武内亨
迫水書記官長:加藤武 堤真一
木原通庸:川辺久造
川本秘書官:江原達怡
老政治部記者:三井弘次
不破参謀:土屋嘉男
森近衛師団長:島田正吾 高橋耕次郎
野中俊雄少将:伊藤雄之助
藤田侍従長:青野平義 麿赤兒
戸田侍従:児玉清 松嶋亮太
三井侍従:浜田寅彦 植本潤
入江侍従:袋正 茂山茂
徳川侍従:小林桂樹 大藏基誠
黒田大尉:中谷一郎
水谷参謀長:若宮忠三郎
伍長:山本廉
高嶋少将:森幹太
板垣参謀:伊吹徹
大隊長:久野征四郎
巡査:小川安三
渡辺大佐:田島義文
大橋会長:森野五郎
矢部国内局長:加東大介
荒川技術局長:石田茂樹
小薗大佐:田崎潤
菅原中佐:平田昭彦
木戸内大臣:中村伸郎 矢島健一
石渡宮内大臣:竜岡晋
蓮沼侍従武官長:北竜二
中村少佐:野村明司
清家少佐:藤木悠
佐藤内閣官房総務課長:北村和夫
松阪法相:村上冬樹
広瀬蔵相:北沢彪
杉山元師:岩谷壮
畑元師:今福将雄
佐々木大尉:天本英世 松山ケンイチ
加藤総務局長:神山繁
筧庶務課長:浜村純
若松陸軍次官:小瀬格
古賀少佐:佐藤允
石原少佐:久保明
長友技師:草川直也
田中大将:石山健二郎
塚本少佐:滝恵一
芳賀大佐:藤田進
小林少佐:田中浩
佐野恵作:佐田豊
佐野小門太:上田忠好
白石中佐:勝部演之
館野守男:加山雄三 野間口徹
原百合子:新珠三千代
稲留東部軍参謀:宮部昭夫
岡部侍従:関口銀三 中村靖日
神野参謀:関田裕
憲兵中尉:井川比佐志
高橋武治:須田準之助
和田信賢:小泉博
陸軍軍務局長:大友伸
厚木基地飛行整備科長:堺左千夫
昭和天皇:松本幸四郎 本木雅弘
1967年版ナレーター:仲代達矢
2015年版
阿南の妻綾子:神野三鈴
阿南の娘:蓮佛美沙子
陸軍大臣官邸の女中絹子:キムラ緑子
東条英機:中嶋しゅう
(新旧・キャストつきあわせて書くのが
面倒になっちゃって途中でやめました。ゴメンナサイ。)
↓1967年版の俳優名鑑動画(88人+ノンクレジット俳優46人の全134人)
新旧の『日本のいちばん長い日』を見たら、
なぜ日本が「戦争をしない国」になったのか、
その歴史の重みを今こそ噛みしめたいですね。
戦後70年、戦争を遂行していた世代は
少なくなっていますが、
史実の研究も進み、
長い時も流れたので、
客観描写はしやすくなっているのではと思います。
「戦争がなぜ起こったのか」を
しっかり描いた映画の登場を待っています。
日本のいちばん長い日 [東宝DVD名作セレクション]/
三船敏郎,加山雄三,黒沢年男
8月は劇場鑑賞50本を越えてしまいました。
新作映画もそこそこ観ているのですが、
新作・旧作とも短評まとめ記事はおろか、
なう、ツィッターへの投稿もできてない始末。(x_x;)
美術鑑賞の記事も書けてないしなァ(´□`。)
もう9月になるから、
9月公開で見たい映画の紹介記事も書かなくては!(´Д`;)
なのだけど...
時間がないデス。(´д`lll)
1967年版の阿南陸相:三船敏郎と
昭和天皇:本木雅弘
鈴木総理:笠智衆
鈴木総理:山崎努
畑中少佐:黒沢年雄
畑中少佐:松坂桃李
館野守男(NHKラジオアナウンサー)加山雄三と畑中少佐の黒沢年雄
物凄い狂気の存在感だった佐々木大尉の天本英世
オマケな存在(><;)特別出演松ケンの佐々木大尉
役所広司の阿南陸相
三船敏郎の阿南陸相
ポール・ニューマンとネコ=^._.^= ∫;