『ソ満国境 15歳の夏』
2015年製作
日本映画
新宿K's cinema(ケイズシネマ)で鑑賞
↓『ソ満国境 15歳の夏』予告動画
監督・製作・脚本:松島哲也
編集:宮澤誠一
清水和貴
製作:松島哲也
野田慶人
宮澤誠一
原作:田原和夫
脚本:松島哲也
友松直之
撮影:奥原一男
美術:庄島穀
小林久之
音楽:上野耕路
出演:柴田龍一郎
六車勇登
三村和敬
金澤美穂
金子昇
大谷英子
田中律子
香山美子
田中泯
夏八木勲
300キロの道のりを必死に生き抜いた120人の中学生たち
日中戦争時下、ソ連と満州の国境近くに
勤労動員として送られた新京第一中学校の生徒たち。
昭和20年8月、ソ連軍の爆撃が降り注ぐ中、
ソ満国境に取り残され、
過酷を極める必死の逃避行が始まった…。
原作は田原和夫「ソ満国境 15歳の夏」。
中国で3000km以上に渡る調査活動の末、
中国ロケを敢行。
反日デモで国外退去に遭うなど、
様々な苦難を乗り越えながらも
10年の構想と製作期間を経て
ついに完成。
あらすじは...
未會有の打撃を受けた
東日本大震災から1年後の福島浪江町。
15歳の敬介は仮設住宅への非難を余儀なくされていた。
中学最後の夏。
津波で機材が流されてしまい
放送部の作品づくりができないことを
残念に思う敬介と部員たちだったが、
突然の招待状が舞い込んでくる。
見知らぬ中国北東部黒竜江省の
小さな村石岩鎮から、
ぜひ取材をしてほしいというのだ。
期待と不安を胸に果てしない平原が広がる
中国へと旅立つ敬介たち。
招待主は村の長老・金成義(ジンツンイ)。
彼の口から語られたのは、67年前、
15歳だった少年たちの壮絶な体験だった…。
(公式HP、パンフより)
戦後70年に公開された
日本映画の新作フィクション戦争映画で
この作品が一番素直に感動しましたよ。
ちなみに観たのは、
『おかあさんの木』
『野火』
『この国の空』
『日本のいちばん長い日』
と、本作『ソ満国境 15歳の夏』です。
原作の「ソ満国境 15歳の夏」の著者
田原和夫さんは、
新京第一中学校の三年生の時
級友120名と
終戦間近い1945年5月、
ソ満国境の東寧報告農場に勤労動員で
派遣されました。
実は彼らの派遣は、
関東軍の国境守備部隊の
撤退を隠ぺいするためのものでした。
敗戦直後、生徒たちは国境に置き去りにされ
ソ連軍の侵攻から300㎞あまりも
徒歩で逃げ回った後、
ソ連軍の捕虜となり
捕虜収容所に入れられました。
約50日後に解放され
歩けなくなっていた4人を残して
(4人は結局生還できませんでした)
また徒歩で牡丹江市を目指しました。
途中、石頭村(現在の石岩鎮)で、
貧しい中国農民たちが、
少年たちを各家に一晩分宿させ
食べ物を分けてくれました。
元気を取り戻した彼らは
翌日、牡丹江市まで歩き、
牡丹江駅から難民列車に乗り
ハルビン経由で新京に帰還しました。
田原和夫さんがこの体験を書き、
1998年に出版されたのが
「ソ満国境 15歳の夏」です。
ソ満国境15歳の夏/
田原和夫
映画は福島浪江町の仮設住宅に住む
中学三年生の放送部員たちが、
石岩鎮村に招待され
ドキュメンタリーの映像作品を作るという
設定のフィクション映画です。
ドキュメンタリー映画ではありません。
彼らの取材の様子にあわせて、
勤労動員された新京第一中学校三年生の
苛酷な体験の再現ドラマが挿入されます。
狭い仮設住宅での不便な生活をしている、
主人公啓介や放送部の仲間たちの家族。
編入された中学校では
除染作業が行われていて、
夏の暑い日でも窓も開けられない。
福島の子どもたちが置かれている
辛い日常生活が描かれます。
目の前に困っている人がいたら
救いの手を差し伸べる。
という、国も民族も越えた
人間同士の助け合いの心。
日本人、中国人、朝鮮人という
枠組みを超えて助け合う人々、
交流する人々が描かれています。
何かといざこざが絶えない
現在の東アジア情勢の中で、
この映画が持つ共生へのメッセージは
とても貴重です。
除染ボランティアの1人を演じる
夏八木勲さんは、
責任を取らない大人社会で生きてきた悔恨を語り、
中学生たちに希望を託します。
亡くなってからも出演作の公開が続きましたが、
本作が夏八木勲さんの最後の遺作になると思います。
夏八木さんの出演シーンが福島の中学校で
撮影されたのは2012年の11月。
台本を読み、二つ返事で出たいと言われたそうです。
痩せられて立っているのもきつそうな状態だったのに、
差し出す椅子に座ろうともせず、
撮影中最後まで立ってみえたそうです。
夏八木さんの出演シーンは短いですが、
まさに遺言のような重みのある
台詞と演技です。
そして、
石岩鎮村の長老、金成義(ジンツンイ)役の
田中泯さんが、
落ち着いた味わい深い演技で、
ずっしりと作品を締めてみえます。
現在の中学三年生役、
新京第一中学校三年生役、
それぞれの俳優たちの子が好演です。
特に勤労動員の中学生役の子たちは、
昔の中学生のリアリティーを
しっかり出していました。
予算が続かず撮影が中断したこともあったそうですが、
安手な作りにはなっていません。
熊井啓監督作品なども手掛けている
ベテランカメラマン奥原一男氏の
現代と過去のシーンの光の捉え方の的確な使い分けで、
過去のシーンは陰影の深い重みのあるルックになっていて、
予想以上に素晴らしい映像でした。
日本と中国の制作スタッフ、出演者による
大変な努力が実った迫力のある
作品になっています。
現在の福島の中学生の生活と、
中国での取材の様子、
東日本大震災と原発事故、
勤労動員の中学生の道行、
など要素がいっぱいで、
壮大なドラマ性がありますが、
94分の尺に収めているのもさすがです。
正直な所ここまで見応えある作品とは
思っていなかったので、
嬉しい予想ハズレです。
上映が終わって拍手が起こっていました。
上映会でなく、
普通に映画館で上映されての作品で、
拍手があることは滅多にありません。
前売り券が買ってあったので、
いつでも行けると思い、
つい行くのが遅くなって27日になりました。
ケイズシネマでの上映が1日1回で
28日までということでなのか、
席は殆ど埋まっていました。
東京では29日(土)からは
渋谷のユーロスペースで上映されます。
ケイズシネマの前売り券も利用できるそうです。
その他の上映情報はこちらの公式HPを観て下さい↓
『ソ満国境 15歳の夏』公式HP←クリック
直球勝負のまじめな映画で、
人気の若手俳優が出ているわけではないし、
今風の作品でもありませんが、
見応えのある映画です。
インディー映画で上映館数も少ないですが、
上映会などでも広がってくれたらいいなあと思います。
ちなみに、
日本映画の新作フィクション戦争映画を、
私が良かった順(応援したい順)に並べると、
『ソ満国境 15歳の夏』
『野火』
『この国の空』←クリックで私の記事です。
『日本のいちばん長い日』
『おかあさんの木』←クリックで私の記事です。
2015年製作
日本映画
新宿K's cinema(ケイズシネマ)で鑑賞
↓『ソ満国境 15歳の夏』予告動画
監督・製作・脚本:松島哲也
編集:宮澤誠一
清水和貴
製作:松島哲也
野田慶人
宮澤誠一
原作:田原和夫
脚本:松島哲也
友松直之
撮影:奥原一男
美術:庄島穀
小林久之
音楽:上野耕路
出演:柴田龍一郎
六車勇登
三村和敬
金澤美穂
金子昇
大谷英子
田中律子
香山美子
田中泯
夏八木勲
300キロの道のりを必死に生き抜いた120人の中学生たち
日中戦争時下、ソ連と満州の国境近くに
勤労動員として送られた新京第一中学校の生徒たち。
昭和20年8月、ソ連軍の爆撃が降り注ぐ中、
ソ満国境に取り残され、
過酷を極める必死の逃避行が始まった…。
原作は田原和夫「ソ満国境 15歳の夏」。
中国で3000km以上に渡る調査活動の末、
中国ロケを敢行。
反日デモで国外退去に遭うなど、
様々な苦難を乗り越えながらも
10年の構想と製作期間を経て
ついに完成。
あらすじは...
未會有の打撃を受けた
東日本大震災から1年後の福島浪江町。
15歳の敬介は仮設住宅への非難を余儀なくされていた。
中学最後の夏。
津波で機材が流されてしまい
放送部の作品づくりができないことを
残念に思う敬介と部員たちだったが、
突然の招待状が舞い込んでくる。
見知らぬ中国北東部黒竜江省の
小さな村石岩鎮から、
ぜひ取材をしてほしいというのだ。
期待と不安を胸に果てしない平原が広がる
中国へと旅立つ敬介たち。
招待主は村の長老・金成義(ジンツンイ)。
彼の口から語られたのは、67年前、
15歳だった少年たちの壮絶な体験だった…。
(公式HP、パンフより)
戦後70年に公開された
日本映画の新作フィクション戦争映画で
この作品が一番素直に感動しましたよ。
ちなみに観たのは、
『おかあさんの木』
『野火』
『この国の空』
『日本のいちばん長い日』
と、本作『ソ満国境 15歳の夏』です。
原作の「ソ満国境 15歳の夏」の著者
田原和夫さんは、
新京第一中学校の三年生の時
級友120名と
終戦間近い1945年5月、
ソ満国境の東寧報告農場に勤労動員で
派遣されました。
実は彼らの派遣は、
関東軍の国境守備部隊の
撤退を隠ぺいするためのものでした。
敗戦直後、生徒たちは国境に置き去りにされ
ソ連軍の侵攻から300㎞あまりも
徒歩で逃げ回った後、
ソ連軍の捕虜となり
捕虜収容所に入れられました。
約50日後に解放され
歩けなくなっていた4人を残して
(4人は結局生還できませんでした)
また徒歩で牡丹江市を目指しました。
途中、石頭村(現在の石岩鎮)で、
貧しい中国農民たちが、
少年たちを各家に一晩分宿させ
食べ物を分けてくれました。
元気を取り戻した彼らは
翌日、牡丹江市まで歩き、
牡丹江駅から難民列車に乗り
ハルビン経由で新京に帰還しました。
田原和夫さんがこの体験を書き、
1998年に出版されたのが
「ソ満国境 15歳の夏」です。
ソ満国境15歳の夏/
田原和夫
映画は福島浪江町の仮設住宅に住む
中学三年生の放送部員たちが、
石岩鎮村に招待され
ドキュメンタリーの映像作品を作るという
設定のフィクション映画です。
ドキュメンタリー映画ではありません。
彼らの取材の様子にあわせて、
勤労動員された新京第一中学校三年生の
苛酷な体験の再現ドラマが挿入されます。
狭い仮設住宅での不便な生活をしている、
主人公啓介や放送部の仲間たちの家族。
編入された中学校では
除染作業が行われていて、
夏の暑い日でも窓も開けられない。
福島の子どもたちが置かれている
辛い日常生活が描かれます。
目の前に困っている人がいたら
救いの手を差し伸べる。
という、国も民族も越えた
人間同士の助け合いの心。
日本人、中国人、朝鮮人という
枠組みを超えて助け合う人々、
交流する人々が描かれています。
何かといざこざが絶えない
現在の東アジア情勢の中で、
この映画が持つ共生へのメッセージは
とても貴重です。
除染ボランティアの1人を演じる
夏八木勲さんは、
責任を取らない大人社会で生きてきた悔恨を語り、
中学生たちに希望を託します。
亡くなってからも出演作の公開が続きましたが、
本作が夏八木勲さんの最後の遺作になると思います。
夏八木さんの出演シーンが福島の中学校で
撮影されたのは2012年の11月。
台本を読み、二つ返事で出たいと言われたそうです。
痩せられて立っているのもきつそうな状態だったのに、
差し出す椅子に座ろうともせず、
撮影中最後まで立ってみえたそうです。
夏八木さんの出演シーンは短いですが、
まさに遺言のような重みのある
台詞と演技です。
そして、
石岩鎮村の長老、金成義(ジンツンイ)役の
田中泯さんが、
落ち着いた味わい深い演技で、
ずっしりと作品を締めてみえます。
現在の中学三年生役、
新京第一中学校三年生役、
それぞれの俳優たちの子が好演です。
特に勤労動員の中学生役の子たちは、
昔の中学生のリアリティーを
しっかり出していました。
予算が続かず撮影が中断したこともあったそうですが、
安手な作りにはなっていません。
熊井啓監督作品なども手掛けている
ベテランカメラマン奥原一男氏の
現代と過去のシーンの光の捉え方の的確な使い分けで、
過去のシーンは陰影の深い重みのあるルックになっていて、
予想以上に素晴らしい映像でした。
日本と中国の制作スタッフ、出演者による
大変な努力が実った迫力のある
作品になっています。
現在の福島の中学生の生活と、
中国での取材の様子、
東日本大震災と原発事故、
勤労動員の中学生の道行、
など要素がいっぱいで、
壮大なドラマ性がありますが、
94分の尺に収めているのもさすがです。
正直な所ここまで見応えある作品とは
思っていなかったので、
嬉しい予想ハズレです。
上映が終わって拍手が起こっていました。
上映会でなく、
普通に映画館で上映されての作品で、
拍手があることは滅多にありません。
前売り券が買ってあったので、
いつでも行けると思い、
つい行くのが遅くなって27日になりました。
ケイズシネマでの上映が1日1回で
28日までということでなのか、
席は殆ど埋まっていました。
東京では29日(土)からは
渋谷のユーロスペースで上映されます。
ケイズシネマの前売り券も利用できるそうです。
その他の上映情報はこちらの公式HPを観て下さい↓
『ソ満国境 15歳の夏』公式HP←クリック
直球勝負のまじめな映画で、
人気の若手俳優が出ているわけではないし、
今風の作品でもありませんが、
見応えのある映画です。
インディー映画で上映館数も少ないですが、
上映会などでも広がってくれたらいいなあと思います。
左から松島監督、原作者田原さん
中学生役を演じた俳優たち。
公開までに時間がかかったため成長しています。
中学生役を演じた俳優たち。
公開までに時間がかかったため成長しています。
ちなみに、
日本映画の新作フィクション戦争映画を、
私が良かった順(応援したい順)に並べると、
『ソ満国境 15歳の夏』
『野火』
『この国の空』←クリックで私の記事です。
『日本のいちばん長い日』
『おかあさんの木』←クリックで私の記事です。
モーガン・フリーマンとネコ。^・ェ・^。