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コングレス未来学会議 感想 レムの原作をアリ・フォルマン監督が実写とアニメの融合世界で大胆に翻案

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『コングレス未来学会議』
原題:THE CONGRESS
2013年製作
イスラエル、ドイツ、ポーランド、
ルクセンブルク、フランス、ベルギー合作映画
新宿シネマカリテで鑑賞

松山シネマルナティック 7月25日(土)~



















↓『コングレス未来学会議』予告動画


↓The Congress 公式トレーラー


↓The Congress 公式トレーラーUK版


監督・脚本:アリ・フォルマン
原作:スタニスワフ・レム
撮影:ミハウ・アングレール
音楽:マックス・リヒター
出演:ロビン・ライト
ポール・ジアマッティ
ハーヴェイ・カイテル
ジョン・ハム
フランシス・フィッシャー
ダニー・ヒューストン
コディ・スミット=マクフィー
サミ・ゲイル
マイケル・スタール=デヴィッド
マイケル・ランデス
サラ・シャヒ

あらすじは...
若い頃売っ子スターだったロビン・ライトは、
40代になった今では新作に恵まれない。
シングル・マザーで娘サラ(サミ・ゲイル)と、
聴力と視力が失われていく難病アッシャー病を患った
息子アーロン(コディ・スミット=マクフィー)を
育てている。
(ロビンが離婚したショーン・ペンとの間に生まれた
娘と息子を育てたのは現実)
ある日エージェントのアル(ハーヴェイ・カイテル)が
大手映画製作スタジオのミラマウントから、
(ミラマックス+パラマウント!?)
オファーが入ったと言う。
そのオファーは俳優の肉体、表情、感情を完全にスキャンし、
CGで作ったキャラクターが映画に出演するという契約。
CG俳優は設定した年齢から年を取らずに、
スタジオが製作する映画に出演し、
プロモーションなどもCG俳優が行う。
スキャンした俳優はスタジオに肖像権を売り、
多額の報酬を得るが、
契約後は俳優としての演技や活動は20年間一切禁じられる。
キアヌ・リーヴスは既に契約しているそうだ。
ミラマウント社のCEOジェフ(ダニー・ヒューストン)は、
ロビンに俳優としての限界を説き、
CG俳優のロビンは34歳の設定にして
活躍させるからと契約を奨めるが、
自分が演じる自由がなくなるのでロビンは断る。
しかし、息子アーロンの難聴の症状が悪化していて、
失明もすると主治医バーカー(ポール・ジアマッティ)から、
告げられる。
ロビンはアーロンの治療や介護の事を考えて、
出演ジャンルなどの条件をつけて
ミラマウントと契約し、スキャンすることにした。

スキャンの担当者はかつて有能な撮影監督だったクリスだった。
撮影監督としての仕事がなくなり今はスキャン担当なのだ。
スキャンに臨むロビンにアルがグッとくる告白をするが、
久々にカッコよくダンディーな
ハーヴェイ・カイテルの出番はここまで。

シーンは20年後に移る。
砂漠の道を64歳になったロビンが車で走っている。
アブラハマシティで行われる
ミラマウント社の未来学会議に招かれたのだ。
アブラハマシティに入るゲートの守衛に、
ここからはアニメ専用地域になるから、
この薬を嗅ぐようにとアンプルを渡される。
それを嗅いでゲートをくぐって走っていると、
周りの砂漠の景色がアニメ化し始め、
巨大なクジラやタコが泳いでいたりする、
ポップでカラフル、サイケデリックなアニメ世界に変わる。
バックミラーをのぞくと自分もアニメ化していた。
巨大な飛行船が飛んでいて船体に映画の予告が流れている。
34歳のままのCGロビンが演じる
アクション・SFのヒット映画、
「エージェント・R」の新作の予告編だ。
未来学会議の会場は巨大なミラマウント・ホテル。
ロビーではアニメ化した人々が、
薬を嗅いではいろいろなキャラクターや、
スターに変身している。
ベティ・ブープのようなマリリン・モンロー、
ジョン・ウェイン、
画家のピカソやフリーダ・カーロなどもいる。
受付では「あなたは今日6人目のロビン・ライトです。」
と言われるが、
誰も年を取ったロビンには気付かない。

ジェフがロビンに、
この未来学会で発表される新薬のために
契約を延長して欲しいと言う。
その薬はミラマウントが
日本の製薬会社と提携して開発し、
ミラマウント・ナガサキ社として売り出す化学薬品。
新しい娯楽は映画を観るのでなく、
この新薬を飲んだ人がロビンを自由に想像して操作するのだ。
新薬の発表をする社長のボブスが、
特別ゲストとロビンを紹介するが、
壇上に上がったロビンは聴衆に「目を覚まして」と訴える。
この訴えは受け入れられずに
ロビンは壇上から引きずりおろされ、
ボブスは明日からはアブラハマシティの外も、
アニメの世界になると発表する。
そこへ革命軍が襲撃し、
その中にロビンは娘サラの姿を見つける。
幻覚誘発剤を吸い込んでいたロビンは、
ミラマウントでCGのロビン担当だったディランに助けられるが、
幻覚に襲われ意識がなくなる。

ロビンは治療できない幻覚病だと診断され、
治療技術ができるまで凍結されてしまう。
20年後に目覚めたロビンの所にディランがやってくる。
ディランはアーロンを探し続けたが見つからないと言い、
2人は再びアーロンを探しにニューヨークに出かける...

つい長くなってしまいましたが、
この後、また実写に戻り、
またアニメになり...
物語もどこから現実なのか夢なのか、幻覚なのか...
そして視点人物も変わるという不思議な世界。
ミラマウント・ナガサキ社が開発した新薬を飲まなくても、
なんだか自分の実存が怪しい感覚になる、
ナチュラル・ハイな摩訶不思議世界に飲み込まれました。
この映画はとても楽しみにしていました。
(と、言いながら水曜サービスデーに行ってますが(^o^;))
近年観たSF映画ではダントツに面白かったです!

原作はポーランドのSF作家スタニスワフ・レムの
『泰平ヨンの未来学会議』
泰平ヨンの未来学会議〔改訳版〕 (ハヤカワ文庫SF)/
スタニスワフ・レム


これをアリ・フォルマン監督が
ハリウッドを舞台にして大胆に翻案しました。

アニメーションは1920年代から30年代にかけて
『ポパイ』『ベティ・ブープ』『スーパーマン』
などの人気アニメを送り出し、
宮崎駿監督などに影響を与えている、
フライシャー兄弟のフライシャー・スタジオの
アニメーションへのオマージュ。





他にもフォルマン監督は、
バンクシーのアート、


Wall and Piece/Banksy(バンクシー)


ビートルズのアニメ映画『イエロー・サブマリン』
イエロー・サブマリン [Blu-ray]/
ザ・ビートルズ


今敏監督『パプリカ』
パプリカ [Blu-ray]/林原めぐみ,古谷徹


70年代の深作欣二監督作品などの日本映画
などの影響を受けていると語っています。
詳しくは「映画秘宝」7月号
『コングレス未来学会議』の字幕監修もした、
柳下毅一郎氏とアリ・フォルマン監督の対談を読むと
いいですよ。

映画秘宝 2015年 07 月号 [雑誌]/洋泉社


レムは2006年に亡くなりましたが、
生前、自分の作品の映画化作品に対しては酷評で、
「惑星ソラリス」は、
タルコフスキー版もソダーバーグ版も
ボロクソだったそうです。
「コングレス未来学会議」は、
過去にアンジェイ・ワイダ監督も映画化しようとした
こともあったそうですが
資金面などで断念。
レムはキューブリック級の才能でなければ
映画化は無理と言っていたそうです。
でも、今回のアリ・フォルマン監督の作品は、
レムの遺族もとても気に入っており、
アニメと実写の融合作品でレムの複雑難解世界を、
見事に表現したとヨーロッパ映画祭など、
多くの映画祭でも評価されました。

ハリウッド映画では、
モーションキャプチャーを使って
CG化されたキャラクターが出演する作品も増えていますが、
今はコスト面で人間よりCG俳優の方が高くつくから、
人間を使っているけど、
コスト面が改善されれば、
ハリウッドの大作映画では、
人間俳優はあまり仕事がなくなるかもしれません。

哲学的で難解なんでしょ~!?
と、構えて観ることはないです。
監督も気軽に楽しんで欲しいと語っています。
このサイケでキッチュなドラッグ映画の中の
パラレルワールドに浸っていると、
自分自身の実存感覚もおかしくなってきて、
とても不思議な世界観を味わえます。
先にも書きましたが、
SF映画としてとても面白いし、
今年のマイベスト映画の上位に来る作品です。
金曜日に鈴木清順監督の、
『陽炎座』『夢二』『ツィゴイネルワイゼン』の
ロマン三部作の3本立てを早稲田松竹で観ましたが、
通ずる幻想世界を感じました。

この手の映画は詳しく分析したり、
解説したりするのが得意で好きな方がみえるから、
そういうこと書くのはお任せして、
私は「エンタメSF映画」としてご覧になることを
おススメしたいと思います。

ハリウッドネタの
ブラックユーモアが満載で面白いです。
アメリカ資本は入っておらず、
イスラエル、ドイツ、ポーランド、
ルクセンブルク、フランス、ベルギー合作映画で、
アニメの制作も各国の参加で行われました。
アリ・フォルマン監督の
前作『戦場でワルツを』は、
私の2010年マイベスト1作品です。
(封切は2009年11月ですが、
私は浜松シネマイーラで2010年3月に観たので。)
『戦場でワルツを』のアニメは、
暗いルックで荒々しい作品でしたが、
『コングレス未来学会議』は、
1分あたり1200枚、合計60000枚以上の線画が描かれた、
ポップでサイケで美しいアニメです。
手塚アニメのSFものも想起されました。



戦場でワルツを 完全版 [DVD]/


↓『戦場でワルツを』予告動画








劇中の映画「エージェント・R」はこんなキャラ


ロビン・ライトは既に
『ベオウルフ 呪われし勇者』2007年
ロバート・ゼメキス監督で、
CGアニメキャラクターになっています。
この作品は結構好きですよ。
レイ・ウィンストンがムキムキの
ベオウルフになってましたね。

『コングレス未来学会議』のロビンの役は、
初めケイト・ブランシェットが予定されていましたが、
アリ・フォルマン監督がロビンと出会ったとき、
彼女がぴったりと思ったそうです。
ロビンの方がこの映画のキャラクターには
リアリティーと説得力があります。
複雑なキャラクターである自分自身を好演しています。

ベオウルフ/呪われし勇者 劇場版(2枚組) [DVD]/
ジョン・マルコビッチ,アンジェリーナ・ジョリー,
ブレンダン・グリーソン


『ベオウルフ 呪われし勇者』ウィールソー役のロビン・ライト



その他の出演者も演技派を集めていて、
私的には嬉しいメンツ。



ハーヴェイ・カイテルは残念ながら前半だけ。






バーカー医師役のポール・ジアマッティは
前半(上)も後半(下)も出ています。




ミラマウントCEO役ダニー・ヒューストンは実写とアニメで。
彼の台詞にはハリウッドの
ブラックジョークがたくさん。


聡明な娘サラは、
革命運動家になります。
「サラ」はターミネーターからかな?


サラ役サミ・ゲイル、
アリ・フォルマン監督、ダニー・ヒューストン




後半の重要人物、
ミラマウントでロビン担当のアニメーターだったディランは
アニメキャラだけで声の出演はジョン・ハム
















とらやん(byヤノベケンジ)を探せ!?








未来のNYでは、
人々はみすぼらしい服を着て、
薬で幻覚を見ながら、
ぼんやり歩いている。







上のアニメのキャラは
未来学会議に来ていたトム・クルーズ。
彼もスキャンして肖像権を売り、
ユニセフでアフリカで食料を配っていたとロビンに話す。
トム・クルーズの声にそっくり。
声はトム本人ではなく、
トム・クルーズのモノマネで売っている、
エヴァン・ファランテ。
本人の素顔は似てないけど、
サングラスをかけてモノマネするとそっくり!

エヴァン・ファランテ


トムになったエヴァン


↓エヴァン・ファランテのトム・クルーズのモノマネ動画
 面白いですよ!





ロビンの息子アーロン役は
コディ・スミット=マクフィー。
アーロンは自分がライト兄弟の後継者と信じ、
巨大な凧を作り続けている。


なぜ、コディ・スミット=マクフィーを最後にしたか(笑)
彼は『ザ・ロード』2009年
ジョン・ヒルコート監督
でヴィゴ・モーテンセンの息子役。
母親役はシャーリーズ・セロンで、
シャーリーズは今、
ロビン・ライトの元夫ショーン・ペンのパートナー。
これって何か因縁がある!?

コディは『ぼくのエリ 200歳の少女』の
ハリウッドリメイク『モールス』で
クロエちゃんと共演。



『猿の惑星:ジェネシス』にも出演。

新作はマイケル・ファスベンダー共演の
ジョン・マックリーン監督
「Slow West」(スロウ・ウエスト)2015年
イギリス・ニュージーランド合作の西部劇。

これ、観たいけど、公開されるかしらん。
↓「Slow West」(スロウ・ウエスト)公式トレーラー






そして、コディは来年2016年公開の
「X-MEN:アポカリプス(原題)」で、
ナイトクローラー役です。
ここでもマイケル・ファスベンダーと共演です。

私はもうアメコミ映画は卒業のつもりです。
30年以上観てきたしね。
好きなロキも出ないから
『アベンジャーズ エイジ・オブ・ウルトロン』
観ない予定。
(WOWOWで放送されたら観るかもですが。)

でも、X-MENだけは例外的に観る予定。
マカヴォイ、ファスベン、ニコラス・ホルトと、
お気に入り俳優が出てるし、
X-MENだけは付き合う予定(^_^;)
あと、もし大好きな『ウォッチメン』続編が作られたら
これは観ますよ。



で、コディ・スミット=マクフィーです。
彼は今19歳です。大きくなりました。



『ザ・ロード』
ザ・ロード スペシャル・プライス [Blu-ray]/
ヴィゴ・モーテンセン,コディ・スミット・マクフィー,
ロバート・デュヴァル











そう、↑これがやりたかったんですね(;^_^A





ロビン・ライトの出世作
『プリンセス・ブライド・ストーリー』も
パロディ的に使われています。

ロビンと息子ホッパーと娘ディラン





東京アニメアワードフェスティバル2015の
短編コンペティション部門の審査員として来日した
アリ・フォルマン監督と山村浩二監督の
『コングレス未来学会議』についての対談記事は、

ここ←クリック

『ホドロフスキーのDUNE』で最後に、
ホドロフスキーが「ホドロフスキーのDUNE」を
作れるのは唯一、クレイジーなアニメーション監督だろう。
と、語っていたのを見て、
アリ・フォルマン監督は、
「私に作れという事ですか?」と
ホドロフスキーにメールし、
パリに会いに行ったそうです。
ホドロフスキーに
ストーリーボードを見せてもらい、
アニメ版を作るのに資料も充分だった。
でも、デザインに版権上の問題があるらしい。
フォルマン監督が、
自分のチームでぜひ作りたいと頑張っているけど、
まだ作れるかどうか分からないそうです。
(映画秘宝の記事より)
これは絶対に観てみたい!
版権上の問題が解決して欲しいです。

ホドロフスキーのDUNE [DVD]/
アレハンドロ・ホドロフスキー,ミシェル・セドゥー,H.R.ギーガー



今週は新作2本、『グローリー 明日への行進』と、
『コングレス未来学会議』。
名画座で旧作7本観ました。
病院で検査・受診もあり、
美術展も2つ行きました。
今日、『雪の轍』と
シネマヴェーラで渋谷実監督作を2本観ます。
こういう長い記事は、
もう最後にしようかと思ってます。
新作の感想記事は短めに1作品ずつ、
名画座で観た作品はまとめて書こうかと
考え中です。










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