『幸せのバランス』
Gli equilibristi(綱渡り)
イタリア・フランス合作映画
2012年製作
新宿K’s cinemaで鑑賞。
↓予告動画
監督:イヴァーノ・デ・マッテオ
脚本:イヴァーノ・デ・マッテオ
ヴァレンティナ・フェルラン
撮影:ヴィットリオ・オモデイ・ゾリニ
出演
ヴァレリオ・マスタンドレア
バルボラ・ボブローヴァ
ロザベル・ラウレンティ・セラーズ
ルポ・デ・マッテオ
ローマ市の職員で福祉課に勤め、
妻(エレナ)と二人の子供(カミラ、ルカ)と
穏やかな生活を送っていたジュリオ(40歳)。
ふとしたはずみで、同僚の女性に送ったメールから、
彼女との浮気がエレナの知るところとなり、夫婦仲は険悪に…。
話し合いをして、子供のために、
仲の良い夫婦を装うと努力することにしたが、
ある日、注文を間違った50代のピザ配達員に同情したジュリオが、
エレナの嫌いなアンチョビ・ピザを受け取ってしまったことで、
ついにエレナが爆発!子供たちの前で大げんかをしてしまう。
「もう繕うことはできない」と言うエレナ。
それに対してジュリオは、「君が正しい。私が家を出る」と宣言する。
思春期の娘カミラは、不器用な父親が心配でならず、
部屋探しを手伝い、頻繁に連絡して、つながりを保とうとする。
だが、限度を超えた借金をし、
夜のバイトをしても支払いが追いつかない、
ギリギリの二重生活の中で、ジュリオは疲弊し、
次第に無口になっていく。
それは、安定した職つき平穏に暮らして来たジュリオ本人にとっても、
初めて直面する厳しい現実だった…。
(公式HP)より
この映画は予告を見て、
見たいなあと思いました。
6月14日から公開されているこの作品、
14日と15日は、父の日記念家族割キャンペーンで、
家族で鑑賞、あるいは家族の写真提示でも料金が千円になるという、
とても嬉しいサービスがあって、娘と観てきました。
ん?その質問にはお答えしませんよ(^_^;)
マルコ・トゥリオ・ジョルダーナ監督の
『フォンターナ広場 イタリアの陰謀』は、
とても見応えがありました。
この中で主人公のルイージ・カラブレージ警視を
演じていたのがヴァレリオ・マスタンドレア。
ちょっとマイケル・ファスベンダー似のルックスで、
実在したカラブレージ警視を渋く演じていました。
そのヴァレリオ・マスタンドレアが、
イタリアのアカデミー賞である、
2013年度ダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞の主演男優賞を、
この『幸せのバランス』で受賞しています。
しかも彼は「自由に乾杯」で助演男優賞を受賞し、
主演男優賞、助演男優賞のダブル受賞でした。
2010年にも「はじめての大切なもの」で主演男優賞を受賞。
イタリア映画界の重要な役者です。
フランス映画(『スズメバチ』)イギリス映画、
などにも出演し、
国際的にも活躍しています。
その彼がうらぶれたオジサンをリアルに演じている、
ということで、とても気になり公開を待っていました。
主人公のジュリオはローマ市の福祉課の職員で公務員です。
そんな彼が浮気がきっかけで家族と別居し、
ワーキングプアのどん底生活へ転落して行くのです。
イヴァーノ・デ・マッテオ監督は俳優でもあり、
ドキュメンタリー、劇映画の監督もしています。
2007年に、両親の離婚による子供の貧困や、
養子に出さないと暮らしていけない状況が書かれた記事、
離婚で車上生活を送る男性のルポを
読んだことがこの作品を作るきっかけに。
ジュリオは月給1200ユーロ(約16.6万円)
(イタリアの物価は日本と同じくらいだそうです)
妻も病院の受付の仕事をしているので、
家のローンを払いながら何とかやっていましたが、
家を出てみるとローンや子どもの養育費を払うのは大変で、
夜は青果倉庫でアルバイトを始めます。
しかし、このアルバイトの仕事もなくなり、
ついには古い安宿の家賃さえ払えなくなり、
寒さが厳しい冬に自動車で寝る生活へ...
クリスマスの夜は、
困窮した人たちが無料で食事ができる食堂を
運営している教会で食事をすることに...
妻とは歩み寄りの機会が何度かあったのですが、
これが微妙にすれ違ってケンカになってしまう所など、
とてもリアリティーがありました。
いや~この上手さには唸ったというか、
あるある感ありすぎでね~(;^_^A
このジュリオは元々子煩悩で、
子どもたちの面倒をよく見ていました。
娘は父の事をとても心配します。
経済的に追い詰められ、
精神的にもどんどん余裕がなくなり、
落ち込んでいきます。
大事にしていたはずの娘が、
心配してかけてきた言葉にも、
酷い対応をしてしまいます。
うらぶれ落ち込んでいくジュリオを、
ヴァレリオ・マスタンドレアがとてもリアルに演じていました。
妻エレナのバルボラ・ボブローヴァ、
娘カミラのロザベル・ラウレンティ・セラーズも好演でした。
息子のルカは監督の息子が自然に
可愛らしく演じています。
こんなことになるとは、
思いもしなかったであろう過ちからの、
転落人生。そこがリアルで怖いですよ。
自業自得な理由だし、仕事もあるので、
リストラや病気など不慮の原因とは違い、
生活保護などの福祉の対象にはならない。
そもそも自分が福祉課の職員という皮肉...
福祉課の廊下の掲示板で見つけた、
「パパの家」というNGOに行った時に出会った、
同じ境遇の男性に、
「離婚は金持ちがするものだ。俺たちには分不相応だった。」
と言われます。
原題は「綱渡り」の意味ですが、
この綱渡りがギリギリのところでどうなるか...
ジュリオの運命は書かずにおきますが、
後味悪い結末ではありません。
ドキュメンタリー映画も撮る、
イヴァーノ・デ・マッテオ監督監督は、
今イタリアで貧困生活に落ちて行く中間層が多いこと、
それが社会的認知がされていない所で
進んでいることを調査しました。
セリフに頼ったり説明的な映像で語ったりせず、
現実の風景、役者の表情や動きで見せます。
味わいのある作品でおススメなのですが、
東京ではK’s cinemaだけで公開しています。
7月18日(金)まで上映。
今後、大阪、名古屋、京都、神戸の
ミニシアターで上映があります。
詳しくは公式HPでどうぞ↓
『幸せのバランス』公式HP←クリック
『幸せのバランス』は、
4月にユーロスペースで観たブラジル映画、
『聖者の午後』も配給している、
Action Inc.の配給。
代表の比嘉セツさんは、
キューバやメキシコなど主にラテンアメリカの映画を買い付け、
邦題を考え、日本語字幕をつけ、上映を交渉し、
チラシやパンフレットを作り、
営業・広報・DVD化も手がけてみえます。
私は観た映画のブログを書くのがが追い付かず、
5月から観た作品の短評をツィッターとなうに投稿しています。
ツィッターは反応が良くて、
この作品のツィートは特にリツィートやお気に入りを
いつもより多くもらいました。
こんななんです↓
『幸せのバランス』ケイズシネマ。
浮気がばれ家を出たことから
悲惨なワーキングプア生活に転落して行く父親を、
マイケル・ファスベンダー似『フォンターナ広場』の
ヴァレリオ・マスタンドレアが好演。
夫婦の歩み寄りが行き違う描写が上手くて唸った。
中間層の隠れた貧困をリアルに描いたおススメ作!
ブログもこれくらい短くしようかなァ!?
このバイトもやがて失い、増々困窮。
「パパの家」というNGOのチラシを見つけて行ってみます。
2人で観て歩み寄りもあったのですが、
結局ケンカになってしまう...
似てませんか?この二人。
2012年第69回ベネチア映画祭で↓
イヴァーノ・デ・マッテオ監督と息子のルポ・デ・マッテオ
ヴァレリオ・マスタンドレア
エレナ(バルボラ・ボブローヴァ)
カミラ(ロザベル・ラウレンティ・セラーズ)
母娘を演じたこの2人、
シャーリー・マクレーン主演の『ココ・シャネル』で、
ココ・シャネルの子ども時代をロザベル・ラウレンティ・セラーズが、
若い頃をバルボラ・ボブローヴァが演じていました。
バルボラ・ボブローヴァはスロバキア出身。
美人ですが、
今回は夫の裏切りや生活に疲れた主婦になり切っています。
彼女も2005年にダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞の
主演女優賞を受賞している演技派の女優です。
日本では劇場公開され、公開時に観ました。
ココ・シャネル [DVD]/
シャーリー・マクレーン,バルボラ・ボブローヴァ,マルコム・マクダウェル
ココ・アヴァン・シャネル 特別版 [DVD]/
オドレイ・トトゥ,ブノワ・ポールブールド,アレッサンドロ・ニボラ
シャネル&ストラヴィンスキー [DVD]/
マッツ・ミケルセン,アナ・ムグラリス,エレーナ・モロゾヴァ
余談ですが2008年がココ・シャネルの生誕125周年
2009年~10年に上記のシャネルの映画が3本公開されましたね。
私は全部劇場鑑賞してしまいました。
マッツ&アナはなんとR18だったんです。
なぜかって?マッツの全裸が危険すぎたからデス(〃∇〃)
てか、シャネルの全面協力で、
衣装や装飾品の提供、
シャネルが実際に住んだ家でも撮影され、
カンヌ映画祭のクロージング作品でもあったこの作品に、
R18のレイティングつける映倫のセンスはご立派┐( ̄ヘ ̄)┌
オーディトリウム渋谷で、
7月3日(木)4日(金)21:00~上映します
どちらかで主演のmimpi*β(ミンピ)のミニライブ予定。
渡部亮平監督日プロ大賞新人監督賞受賞記念
まだ、ご覧になってみえない方はこの機会をお見逃しなく
何回でも観たい方もぜひご覧くださいね
渡部亮平監督応援しています
ぜひ、お近くの映画館にリクエストして下さい
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