『朽ちた手押し車』
日本映画
1984年製作
(一般劇場公開2014年)
丸の内TOEIで鑑賞
↓予告動画
監督:島宏
製作総指揮:増山茂
製作:遠藤俊男
脚本:島宏
スーザン・リー
撮影:松下時男
音楽:林輝
出演:
三國連太郎
田村高廣
長山藍子
初井言榮
誠直也
志和慶子
岸ユキ
谷村昌彦
伊沢一郎
秋山直美
星ルイス
たこ八郎
江戸家猫八
下條アトム
高橋悦史
認知症の父親と末期患者の母親を抱えた一家の苦悩を通し、
高齢化社会や認知症、尊厳死などの問題を描いた社会派ドラマ。
撮影当時61歳だった主演の三國連太郎は、
2時間以上かけた特殊メイクで80歳の認知症老人に成り切り、
失禁して汚れた着物のままうつろな表情で海岸をはいかいするなど、
鬼気迫る演技を披露。
きれいごとでは済まされない介護の現実に迫る重い内容から、
1984年に製作されるも
劇場未公開となっていた幻の傑作が30年を経てよみがえる。
あらすじ:
1984年(昭和59年)新潟県。元漁師の安田源吾(三國連太郎)は、
老人特有の認知症で毎晩はいかいを繰り返していた。
さらに妻のトミ(初井言榮)に、
余命半年という重病が発覚する。
不治の病で死を待つばかりの老母の「殺してくれ」
という訴えに悩まされる息子夫婦(田村高廣・長山藍子)たち。
長男の忠雄(田村高廣)が、
医者(下條アトム)に対して安楽死の提案をし……。
(シネマトゥデイより)
この映画は5月3日から丸の内TOEIで公開されていました。
一般料金1100円だったので、
いつでも観られるなと、
後回しにしているうちに見そびれていて、
結局最終日の6月20日に観ました。
まず、『朽ちた手押し車』
って、タイトルからしてへヴィーな雰囲気ですよね。
はい、その名の通り内容重いです。
三國連太郎さん演じるじいちゃんは、
元やり手の漁師の頭領。
今は認知症が進んで徘徊したり、
やたらと食べます。
ごはん5杯おかわりしてもまだ足りず、
あげないと怒るので、
ばあちゃんがおにぎり握ってあげればそれも平らげ、
1時間後にはまた食事を要求...
じいちゃんの世話は、
ばあちゃん、息子夫婦やその高校生の娘、
家族みんなで頑張っています。
次男の弘(誠直也)が東京から7年ぶりに帰って来ます。
町を出たのは、
奥さんと息子がじいちゃんの船で釣りに出て、
突然の突風による事故で亡くなったからでした...
ある日元気だったばあちゃんが急に倒れ、
筋萎縮性側索硬化症で余命半年と診断されます。
長男忠雄(田村高廣)は家族に本当の病名を知らせず、
軽い肝臓病だと言って、家で介護生活に入ります。
ばあちゃんの病気の進行は早く、とても苦しみ出します。
じいちゃんを残して行けないと、
果物ナイフで無理心中を図るも弱った体で力が入らず失敗。
やがて入院しますが痛みに苦しむばかりで、
忠雄に早く楽にしてくれと頼みます。
そして彼は悩み、担当医師(下條アトム)に、
早く楽にしてやってほしいと頼みますが、
断られます...
こういうへヴィーなドラマを、
演技派の俳優さんたちが、
その演技力を十二分に発揮して見せてくれます。
高齢化社会が抱える問題は、
30年前とあまり変わっていない、
あるいはもっと深刻とも言えます。
この映画は、
現実問題として直面している人は、
進んで観ようとは思えないかもしれませんし、
そうでなくても、いかにも重そうだから、
気が向かないなあと思われるかもしれません。
しかし、観る価値はある作品です。
三國さんの演技は迫真で圧倒されます。
この時三國さんは61歳です。
特殊メイクで80歳の老人に。
メイクだけでなく動きも言葉も、
認知症の80歳の老人になり切っています。
若い頃の場面ではそのまま若々しく、
船団束ねる頭領が似合っていました。
私は田村高廣さんが好きですが、
三國さんより実年齢は6歳年下なだけの田村高廣さんの、
表情一つで多くを語る演技に見入ってしまいました。
実はばあちゃんの初井言榮さんは息子役の田村さんより生年は1年下。
2人とも撮影時は55歳でした。
すっかりばあちゃんになっている演技力の素晴らしさ。
長山藍子さんは嫁の鏡のような役に説得力がある。
誠直也は複雑な心情を秘めた役が合っていました。
その他、下條アトム、高橋悦史、
岸ユキ、谷村昌彦、伊沢一郎といったみなさんが、
しっかり脇を締めているし、
懐かしい、たこ八郎、星ルイス、江戸家猫八(初代)
などの皆さんが、ユーモアのある役どころ。
製作から30年経って公開され、
今とは変わっていることも色々ありますが、
老いをめぐる本質的な問題は変わらず、
今でも考えさせられることが多い作品です。
演出はちょっとTVドラマっぽい感じですが、
島宏監督も出演俳優の多くの方もすでに亡くなっていて
貴重な作品だと思います。
名優たちの素晴らしい演技を見るだけでも価値はあります。
重いテーマの作品ですが、
救いのない結末ではありません。
興味を持たれたらご覧になってみてください。
6月は三國さんの出演作は3本観ました。
『怪談』(1965年小林正樹監督)
『二・二六事件 脱出』(1962年小林恒夫監督)
そしてこの『朽ちた手押し車』です。
三國さんは木下惠介監督『善魔』←クリック
でデビュー。この時の役名「三國連太郎」を芸名にしました。
(本名 佐藤 政雄)
田村高廣さんも木下監督に俳優業を勧められ、
木下監督の『女の園』でデビュー。
弟の田村正和も木下監督の傑作『永遠の人』でデビュー、
他にも佐田啓二、川津祐介、石濱朗、加藤剛、桂木洋子、
といった、名優が
木下監督の作品でデビューしています。
(坂東英二、野々村真も木下監督『父』で映画デビューです)
木下監督は作品について「自分の仕事はキャスティングを決めた時点で、
ほぼ終わっている」と語られたことがあって、
俳優を選ぶ、発掘する審美眼も素晴らしかった。
お蔵出し映画祭2013の各賞は、
他に、
審査員特別賞『果てぬ村のミナ』瀬木直貴監督←クリック
市民審査員賞『ナンバーテン・ブルース さらばサイゴン』長田紀生監督←クリック
『朽ちた手押し車』も『ナンバーテン・ブルース さらばサイゴン』も
独立プロダクションの制作で、
製作当時配給会社が決まらずお蔵入りになった作品です。
(『果てぬ村のミナ』は土屋太鳳主演浜松発のご当地映画です)
私はたまたまこの3本を全部観ることができました。
(クリックで私の記事が読めます)
『朽ちた手押し車』公式HP←クリック
『ナンバーテン・ブルース さらばサイゴン』公式HP←クリック
今公開中の劇場もありますので、
興味を持たれた方はぜひご覧くださいね。
日プロ大賞主催の映画ジャーナリスト大高宏雄が聞き手の
トークも行われたそうです。
オーディトリウム渋谷で、
7月3日(木)4日(金)21:00~上映します
どちらかで主演のmimpi*β(ミンピ)のミニライブ予定。
渡部亮平監督日プロ大賞新人監督賞受賞記念
まだ、ご覧になってみえない方はこの機会をお見逃しなく
何回でも観たい方もぜひご覧くださいね
渡部亮平監督応援しています
ぜひ、お近くの映画館にリクエストして下さい
読んで下さってありがとうございましたランキングに参加してます←これをクリックしてもらえたらうれしいです