『ナンバーテンブルース さらばサイゴン』
1975年製作 日本映画
2012年修復・編集により完成
キネカ大森で鑑賞
↓予告動画
本作は、1974 年12 月から1975 年4月までのベトナム戦争最末期に、
南ベトナム(当時)全土に亘って
全編ロケーションを敢行した他に類をみない映画です。
様々な事情により未完成となっていたこの作品が、
幾つもの経緯を経て、2012年秋、遂に完成を見るに至りました。
その後、内外9都市の国際映画祭から公式招待を受け、
各地で絶賛を博しました。
主演は数々の映画や「ガードマン」などのTV ドラマ、
更には幅広い創作活動で知られる川津祐介。
3か月に亘る過酷なロケで、戦火のベトナムを縦横無尽に駆け巡り、
渾身の演技を見せています。ヒ
ロイン役を務めたのは、ベトナムの№1女優として知られ、
歌手でもあるタン・ラン。
自己犠牲を貫く女の凛々しさを美しく演じます。
戦争終結後、ボートピープルとして幾度となくベトナム脱出を図った彼女は、
その後アメリカに亡命し、
ベトナム人たちの間に今も絶大な人気を誇っています。
更に、異色の新人磯村健治が
日本への愛憎に葛藤する混血児を熱く演じています。
奇しくも40年の時を経て、
彼がプロデューサーとして本作を世に送り出すこととなりました。
監督・脚本は、『日本暴力団・組長』『恐喝こそわが人生』
『軍旗はためく下に』『修羅雪姫』『犬神家の一族』『夜汽車』等、
骨太作品の脚本家として知られる長田紀生。
第一回監督作品です。
一つの国の崩壊という歴史的な瞬間に立ち会った
稀有の映画である本作は、
愛と暴力を鮮烈なタッチで描き上げた
極上のエンタテイメントでもあります。
スタッフ、キャストの熱い情熱が、戦火のベトナムで、
時代と正面から向かい合ったこの作品は、
2014年の今こそ、我々に問いかけます。
「日本人よ、お前は一体何だ!?」
公式HPより←クリック
監督・脚本:長田紀生
撮影:椎塚彰
出演:
川津祐介 杉本俊夫
ファン・タイ・タン・ラン ラン
磯村健治 タロー
ドァン・チャウ・マオ 陳
きくち英一 太田
カウ・ウィン フン
トウ・チィン ハン
物語はベトナム戦争末期の1975年の正月に始まります。
主人公の杉本俊夫(川津祐介)は、
高度経済成長で躍進している日本の商社の
ベトナム・サイゴン(現在のホーチミン)
のただ1人の駐在員として、
エビの買い付けなどの仕事をしているが、
上司に命令されるでもなく、
ベトナム戦争もわれ関せずで
「ジャパン・アズ・ナンバーワン」
(アメリカの社会学者エズラ・ヴォーゲルによる1979年の著書)
と、いわれた当時の日本の高度経済成長を傘に、
きままな暮らしを送っています。
ある日、経費を使い込んだのでクビにした
助手だったベトナム人青年フンが彼の家に盗みに入り、
見つけた杉本と格闘になり、
杉本はフンを殺してしまいます。
現地警察を信用できない彼は、
愛人のランが歌手をしているクラブのオーナーで、
裏社会とも繋がりのある陳に、
偽造パスポートの手配を依頼します。
フンのフィアンセが、
杉本にフンの行方を執拗に訪ねてきます。
ついには仲間が徒党を組んで迫ってきたため、
彼はフンが持っていた拳銃で、
仲間の1人を撃って殺して逃げます。
杉本を一途に愛するランは、
事情を知った上で杉本と一緒に逃げる決意をします。
陳の手下の旧日本人兵とベトナム人女性の間に生まれた青年タローは、
日本で父親捜しをするのが夢で2人と一緒に逃亡することに。
3人は海外脱出のボートが出る南ベトナム北端の町フエを目指します。
商社は現地で裏金を作っており、
その裏金を大量に引き出した杉本の金を目当てに
陳は手下と3人を追ってきます。
北ベトナムの解放戦線の攻勢による、
戦火の中を、フエに向かう3人を待つ運命は...
この映画は本物の迫力に満ちていました。
川津祐介さんはダーティーな役を熱演しています。
きままな生活をしていた軽薄な駐在員が、
人を殺してしまったところから、
転落が始まります。
ダーティーになるけれども軽薄、無責任な部分も持ち続ける、
微妙なバランスを体現しています。
日本からベトナムへ撮影に出かける時には遺言を書かれたそうです。
戦前・戦中・戦後を生きてみえた川津さんは、
当時のベトナムは1945年の日本と重なって見えたとのこと。
この映画を観て、
戦争ができる国になろうとしている今の日本の方向性に、
尾尻を振ってついていくのか、
それとも平和を求めて進んでいくのか、
そんなことを特に若い人に感じて欲しいと
パンフのインタビューで語ってみえます。
スター俳優の川津さんがよくこのダーティーな役を、
演じられたなあと思い、監督に聞いてみたら、
昔は今ほど事務所の縛りがきつくなく、
俳優が脚本を読んでこれはぜひやりたいと思ったら、
できたのだとのことでした。
監督は大島渚監督の『青春残酷物語』で
怒れる若者を演じた川津さんに、
その後15年経って牙を抜かれ、
エコノミック・アニマルになってしまった、
でもその中に抱え込んでいるジレンマも体現してほしくて、
この役を依頼したそうです。
私はキネカ大森のイベントで、
長田紀生監督、
タロー役の磯村健治さん(甦った2012年版のプロデューサー)
太田役での出演とアクション監督を担当されたきくち英一さんの
お話を聞きました。
まさに命懸けの撮影、
現地の当時の様子を伺い、
この映画から感じたリアルな重みの理解を
深めることができました。
監督は当時経済成長に浮かれていた日本に、
冷や水をぶっかけるような作品にしたかったそうです。
当時公開されなかったことは残念だったが、
今こうして公開されることに意味があると。
東日本大震災の時は、生き方、暮らしのあり方を考え直そう
という雰囲気になったのに、
あっという間に忘れられ、
経済効率優先、アベノミクス万歳になっている。
高度経済成長で浮足立っていたあの時代と変わらない。
この映画が現在の日本に投げかけるメッセージを、
ぜひ感じて欲しいと言われました。
この映画のテーマは重いけれども、
当時のベトナムの様子を写した貴重な映像も含め、
ハラハラ、ドキドキ感を味わってもらえる、
エンタメ映画であることを強く意識した作品だと。
磯村健治さんはこの作品が映画デビュー作になる予定でした。
トークの時司会をされました。
始めに誰だかわかりますか?と言われ、
映画の中でぎゃーぎゃーわめいていたタローです。と。
この甦った作品のプロデューサーをされてみえます。
公式HPにTAROのベトナム回顧録を貴重な写真と共に綴ってみえますので、
ぜひご覧ください。
きくち英一さんは、
撮影当時に現地にたくさん落ちていたという、
薬莢の残骸を見せてくれました。
硝煙は初め日本から持って行った、
龍角散を使っていたそうですが、
終盤のフエの王宮での派手なガンアクションシーンの硝煙は、
ベビーパウダーを使ったそうです。
このフエの王宮でのアクションシーンは見所の1つです。
今では世界遺産になっています↓
当時南ベトナムはとても混乱していて、
許可を取るところもないような状態で、
勝手にロケしたそうです。
最後のシーンの撮影時も、
地雷が埋まっているから危ないとベトナム人スタッフはついてこず、
テストをして地雷が爆発したら本番が撮れなくなるからと、
一発撮りしたそうです。
クランクアップは1975年の3月末で、
サイゴンに解放勢力のロケット砲が撃ち込まれる中、
銃声や砲声の合間を縫ってアフレコ作業が行われ、
日本のロケ隊が帰国するのに乗った飛行機が、
最後の民間航空としての1便だったそうです。
その1週間後にサイゴンは陥落しました。
この映画にはサイゴンや、
逃亡して行く道々の街や風景、
人々の姿などが映されますが、
とてもリアルなんです。
兵士の様子や銃器、戦闘車両なども
見ていて、どうやって撮ったのかと思いました。
これ、全部ゲリラ撮影した本物でした(ノ゚ο゚)ノ
監督と友人のカメラマン椎塚彰さんが、
2人で機敏に撮り集めた映像がたくさん使われています。
ロケもその場所でライブに撮られていて、
仕掛けはなしだそうです。
あの時期ベトナムでロケされた映画は他になさそうで、
ドキュメンタリー映像としてもとても価値のあるものです。
なまなましい銃弾の痕がたくさん残る街や戦場の様子から、
人々がその中でも日常生活を営んでいることが分かる市場の様子、
戦争が起こっていることを感じさせないような、
美しい自然の風景などが、
とても素晴らしいアングルで映されています。
監督と椎塚彰さんはこれが初の劇場用長編映画でした。
椎塚彰さんはその後『黄金の犬』『南極物語』『敦煌』などを
撮ってみえます。
長田紀生監督は元東映の専属脚本家ですですから、
昭和の東映映画ファンにはおなじみの方ではないでしょうか。
深作欣二監督『博徒解散式』
降旗康男監督『任侠興亡史 組長と代貸』
山下耕作監督『昭和残侠伝 人斬り唐獅子』
など、東映時代の作品以外にも、
藤田敏八監督『修羅雪姫』
市川昆監督『犬神家の一族』などが有名ですよね。
「ナンバーワン」で始まり「ナンバーテン」で終わる、
ストーリーの回収が見事です。
監督の「日本人よお前は一体どこへ行こうとしているのか!?」
というメッセージが込められていますが、
アクション、お色気、ベトナムの街、戦場、美しい自然の風景と、
見所がたっぷり、
ハラハラする展開でエンタメ作品の王道をしっかり押さえています。
監督が今ヒットする映画は毒にも薬にもならないものが多いが、
エンタメ作品であっても毒を仕込むことが
昔はできたのだと言われてました。
2012年に国立フィルムセンターの貯蔵庫で発見された
フィルムの状態は悪かったそうですが、
ネガフィルムが残っていたことも分かり、
何とか1本フィルムを焼いて、
それをデジタル化したそうです。
映像の修復はイマジカの先端技術でなされており、
きれいな映像で観ることができます。
まさにこれは命懸けで撮られた、
骨太、本物の映画です。
社会性のある重いテーマを描きながら、
ロードムービー、エンタメ作品としても出色です。
見応えのある面白い映画を撮りたいという、
スタッフ・俳優陣の熱気が画面から伝わってきます。
懐かし昭和の映画ファンにはもちろんのこと、
見応えある映画を求める映画ファン、
若い映画ファンにもぜひおススメしたいです。
私はよく、
これから先の世代の事を考えず、
自分が生きている間の利益、経済効率だけを追って、
逃げ切ってしまえばいいと考えている大人は信用できない。
といったことをブログに書いていますが、
そんな無責任な大人ではない、
長田紀生監督、磯村さんはじめ、
この映画を世に送り出すことに尽力された皆さんに感謝します。
そして一人でも多くの人にこの映画を観て戴きたいです。
長田紀生監督は映画は、
観る側、観客が育てるものであることも
伝えたいと言ってみえました。
映画を観る目、丹田を鍛えなければと改めて思いました。
自分が伝えなければと強く思える映画に、
出会えることがあります。
映画の神様の啓示だ~って。
たかが映画、何を熱くなっていると思われようと、
そんな映画に出会いたくて、
何十年も映画を見続けています。
テアトル新宿では今週16日金曜日までの上映。
キネカ大森では今週は18:40分の回の上映後に
ゲストトークがあります。
パンフレットには撮影当時の様子などが
詳しく書かれていますので、
御覧になったら読んでみてください。
大阪シアターセブンでの上映は終了してしまいましたが、
今後、名古屋シネマスコーレ、
広島サロンシネマなど、
全国のミニシアターで公開予定です。
行きつけの単館系の映画館やミニシアターに、
ぜひリクエストしてみてください。
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1975年製作 日本映画
2012年修復・編集により完成
キネカ大森で鑑賞
川津さんの後ろの写真は、
当時戦場カメラマンが撮った作品。
これは川津さん演じる杉本の友人戦場カメラマンの
太田(きくち英一さん)の部屋でのシーンです。
当時戦場カメラマンが撮った作品。
これは川津さん演じる杉本の友人戦場カメラマンの
太田(きくち英一さん)の部屋でのシーンです。
↓予告動画
本作は、1974 年12 月から1975 年4月までのベトナム戦争最末期に、
南ベトナム(当時)全土に亘って
全編ロケーションを敢行した他に類をみない映画です。
様々な事情により未完成となっていたこの作品が、
幾つもの経緯を経て、2012年秋、遂に完成を見るに至りました。
その後、内外9都市の国際映画祭から公式招待を受け、
各地で絶賛を博しました。
主演は数々の映画や「ガードマン」などのTV ドラマ、
更には幅広い創作活動で知られる川津祐介。
3か月に亘る過酷なロケで、戦火のベトナムを縦横無尽に駆け巡り、
渾身の演技を見せています。ヒ
ロイン役を務めたのは、ベトナムの№1女優として知られ、
歌手でもあるタン・ラン。
自己犠牲を貫く女の凛々しさを美しく演じます。
戦争終結後、ボートピープルとして幾度となくベトナム脱出を図った彼女は、
その後アメリカに亡命し、
ベトナム人たちの間に今も絶大な人気を誇っています。
更に、異色の新人磯村健治が
日本への愛憎に葛藤する混血児を熱く演じています。
奇しくも40年の時を経て、
彼がプロデューサーとして本作を世に送り出すこととなりました。
監督・脚本は、『日本暴力団・組長』『恐喝こそわが人生』
『軍旗はためく下に』『修羅雪姫』『犬神家の一族』『夜汽車』等、
骨太作品の脚本家として知られる長田紀生。
第一回監督作品です。
一つの国の崩壊という歴史的な瞬間に立ち会った
稀有の映画である本作は、
愛と暴力を鮮烈なタッチで描き上げた
極上のエンタテイメントでもあります。
スタッフ、キャストの熱い情熱が、戦火のベトナムで、
時代と正面から向かい合ったこの作品は、
2014年の今こそ、我々に問いかけます。
「日本人よ、お前は一体何だ!?」
公式HPより←クリック
監督・脚本:長田紀生
撮影:椎塚彰
出演:
川津祐介 杉本俊夫
ファン・タイ・タン・ラン ラン
磯村健治 タロー
ドァン・チャウ・マオ 陳
きくち英一 太田
カウ・ウィン フン
トウ・チィン ハン
物語はベトナム戦争末期の1975年の正月に始まります。
主人公の杉本俊夫(川津祐介)は、
高度経済成長で躍進している日本の商社の
ベトナム・サイゴン(現在のホーチミン)
のただ1人の駐在員として、
エビの買い付けなどの仕事をしているが、
上司に命令されるでもなく、
ベトナム戦争もわれ関せずで
「ジャパン・アズ・ナンバーワン」
(アメリカの社会学者エズラ・ヴォーゲルによる1979年の著書)
と、いわれた当時の日本の高度経済成長を傘に、
きままな暮らしを送っています。
ある日、経費を使い込んだのでクビにした
助手だったベトナム人青年フンが彼の家に盗みに入り、
見つけた杉本と格闘になり、
杉本はフンを殺してしまいます。
現地警察を信用できない彼は、
愛人のランが歌手をしているクラブのオーナーで、
裏社会とも繋がりのある陳に、
偽造パスポートの手配を依頼します。
フンのフィアンセが、
杉本にフンの行方を執拗に訪ねてきます。
ついには仲間が徒党を組んで迫ってきたため、
彼はフンが持っていた拳銃で、
仲間の1人を撃って殺して逃げます。
杉本を一途に愛するランは、
事情を知った上で杉本と一緒に逃げる決意をします。
陳の手下の旧日本人兵とベトナム人女性の間に生まれた青年タローは、
日本で父親捜しをするのが夢で2人と一緒に逃亡することに。
3人は海外脱出のボートが出る南ベトナム北端の町フエを目指します。
商社は現地で裏金を作っており、
その裏金を大量に引き出した杉本の金を目当てに
陳は手下と3人を追ってきます。
北ベトナムの解放戦線の攻勢による、
戦火の中を、フエに向かう3人を待つ運命は...
この映画は本物の迫力に満ちていました。
川津祐介さんはダーティーな役を熱演しています。
きままな生活をしていた軽薄な駐在員が、
人を殺してしまったところから、
転落が始まります。
ダーティーになるけれども軽薄、無責任な部分も持ち続ける、
微妙なバランスを体現しています。
日本からベトナムへ撮影に出かける時には遺言を書かれたそうです。
戦前・戦中・戦後を生きてみえた川津さんは、
当時のベトナムは1945年の日本と重なって見えたとのこと。
この映画を観て、
戦争ができる国になろうとしている今の日本の方向性に、
尾尻を振ってついていくのか、
それとも平和を求めて進んでいくのか、
そんなことを特に若い人に感じて欲しいと
パンフのインタビューで語ってみえます。
スター俳優の川津さんがよくこのダーティーな役を、
演じられたなあと思い、監督に聞いてみたら、
昔は今ほど事務所の縛りがきつくなく、
俳優が脚本を読んでこれはぜひやりたいと思ったら、
できたのだとのことでした。
監督は大島渚監督の『青春残酷物語』で
怒れる若者を演じた川津さんに、
その後15年経って牙を抜かれ、
エコノミック・アニマルになってしまった、
でもその中に抱え込んでいるジレンマも体現してほしくて、
この役を依頼したそうです。
私はキネカ大森のイベントで、
長田紀生監督、
タロー役の磯村健治さん(甦った2012年版のプロデューサー)
太田役での出演とアクション監督を担当されたきくち英一さんの
お話を聞きました。
まさに命懸けの撮影、
現地の当時の様子を伺い、
この映画から感じたリアルな重みの理解を
深めることができました。
監督は当時経済成長に浮かれていた日本に、
冷や水をぶっかけるような作品にしたかったそうです。
当時公開されなかったことは残念だったが、
今こうして公開されることに意味があると。
東日本大震災の時は、生き方、暮らしのあり方を考え直そう
という雰囲気になったのに、
あっという間に忘れられ、
経済効率優先、アベノミクス万歳になっている。
高度経済成長で浮足立っていたあの時代と変わらない。
この映画が現在の日本に投げかけるメッセージを、
ぜひ感じて欲しいと言われました。
この映画のテーマは重いけれども、
当時のベトナムの様子を写した貴重な映像も含め、
ハラハラ、ドキドキ感を味わってもらえる、
エンタメ映画であることを強く意識した作品だと。
磯村健治さんはこの作品が映画デビュー作になる予定でした。
トークの時司会をされました。
始めに誰だかわかりますか?と言われ、
映画の中でぎゃーぎゃーわめいていたタローです。と。
この甦った作品のプロデューサーをされてみえます。
公式HPにTAROのベトナム回顧録を貴重な写真と共に綴ってみえますので、
ぜひご覧ください。
きくち英一さんは、
撮影当時に現地にたくさん落ちていたという、
薬莢の残骸を見せてくれました。
硝煙は初め日本から持って行った、
龍角散を使っていたそうですが、
終盤のフエの王宮での派手なガンアクションシーンの硝煙は、
ベビーパウダーを使ったそうです。
このフエの王宮でのアクションシーンは見所の1つです。
今では世界遺産になっています↓
当時南ベトナムはとても混乱していて、
許可を取るところもないような状態で、
勝手にロケしたそうです。
最後のシーンの撮影時も、
地雷が埋まっているから危ないとベトナム人スタッフはついてこず、
テストをして地雷が爆発したら本番が撮れなくなるからと、
一発撮りしたそうです。
クランクアップは1975年の3月末で、
サイゴンに解放勢力のロケット砲が撃ち込まれる中、
銃声や砲声の合間を縫ってアフレコ作業が行われ、
日本のロケ隊が帰国するのに乗った飛行機が、
最後の民間航空としての1便だったそうです。
その1週間後にサイゴンは陥落しました。
この映画にはサイゴンや、
逃亡して行く道々の街や風景、
人々の姿などが映されますが、
とてもリアルなんです。
兵士の様子や銃器、戦闘車両なども
見ていて、どうやって撮ったのかと思いました。
これ、全部ゲリラ撮影した本物でした(ノ゚ο゚)ノ
監督と友人のカメラマン椎塚彰さんが、
2人で機敏に撮り集めた映像がたくさん使われています。
ロケもその場所でライブに撮られていて、
仕掛けはなしだそうです。
あの時期ベトナムでロケされた映画は他になさそうで、
ドキュメンタリー映像としてもとても価値のあるものです。
なまなましい銃弾の痕がたくさん残る街や戦場の様子から、
人々がその中でも日常生活を営んでいることが分かる市場の様子、
戦争が起こっていることを感じさせないような、
美しい自然の風景などが、
とても素晴らしいアングルで映されています。
監督と椎塚彰さんはこれが初の劇場用長編映画でした。
椎塚彰さんはその後『黄金の犬』『南極物語』『敦煌』などを
撮ってみえます。
長田紀生監督は元東映の専属脚本家ですですから、
昭和の東映映画ファンにはおなじみの方ではないでしょうか。
深作欣二監督『博徒解散式』
降旗康男監督『任侠興亡史 組長と代貸』
山下耕作監督『昭和残侠伝 人斬り唐獅子』
など、東映時代の作品以外にも、
藤田敏八監督『修羅雪姫』
市川昆監督『犬神家の一族』などが有名ですよね。
「ナンバーワン」で始まり「ナンバーテン」で終わる、
ストーリーの回収が見事です。
監督の「日本人よお前は一体どこへ行こうとしているのか!?」
というメッセージが込められていますが、
アクション、お色気、ベトナムの街、戦場、美しい自然の風景と、
見所がたっぷり、
ハラハラする展開でエンタメ作品の王道をしっかり押さえています。
監督が今ヒットする映画は毒にも薬にもならないものが多いが、
エンタメ作品であっても毒を仕込むことが
昔はできたのだと言われてました。
2012年に国立フィルムセンターの貯蔵庫で発見された
フィルムの状態は悪かったそうですが、
ネガフィルムが残っていたことも分かり、
何とか1本フィルムを焼いて、
それをデジタル化したそうです。
映像の修復はイマジカの先端技術でなされており、
きれいな映像で観ることができます。
まさにこれは命懸けで撮られた、
骨太、本物の映画です。
社会性のある重いテーマを描きながら、
ロードムービー、エンタメ作品としても出色です。
見応えのある面白い映画を撮りたいという、
スタッフ・俳優陣の熱気が画面から伝わってきます。
懐かし昭和の映画ファンにはもちろんのこと、
見応えある映画を求める映画ファン、
若い映画ファンにもぜひおススメしたいです。
私はよく、
これから先の世代の事を考えず、
自分が生きている間の利益、経済効率だけを追って、
逃げ切ってしまえばいいと考えている大人は信用できない。
といったことをブログに書いていますが、
そんな無責任な大人ではない、
長田紀生監督、磯村さんはじめ、
この映画を世に送り出すことに尽力された皆さんに感謝します。
そして一人でも多くの人にこの映画を観て戴きたいです。
長田紀生監督は映画は、
観る側、観客が育てるものであることも
伝えたいと言ってみえました。
映画を観る目、丹田を鍛えなければと改めて思いました。
自分が伝えなければと強く思える映画に、
出会えることがあります。
映画の神様の啓示だ~って。
たかが映画、何を熱くなっていると思われようと、
そんな映画に出会いたくて、
何十年も映画を見続けています。
テアトル新宿では今週16日金曜日までの上映。
キネカ大森では今週は18:40分の回の上映後に
ゲストトークがあります。
パンフレットには撮影当時の様子などが
詳しく書かれていますので、
御覧になったら読んでみてください。
大阪シアターセブンでの上映は終了してしまいましたが、
今後、名古屋シネマスコーレ、
広島サロンシネマなど、
全国のミニシアターで公開予定です。
行きつけの単館系の映画館やミニシアターに、
ぜひリクエストしてみてください。
長田紀生監督
磯村建治さん
きくち英一さん
キネカ大森には撮影当時の貴重な写真が
たくさん展示されています。
たくさん展示されています。
『かしこい狗は、吠えずに笑う』
25歳衝撃の才能
渡部亮平監督応援しています
ぜひ、お近くの映画館にリクエストして下さい
渡部亮平監督応援しています
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