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満島ひかり熱演『夏の終り』感想 綾野剛 小林薫も素晴らしい、品格ある美しい日本映画をぜひ劇場で!

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『夏の終り』
浜松シネマイーラで鑑賞
日本映画
9月27日(金)まで

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『夏の終り』注目の予告動画はこちら↓



原作:瀬戸内寂聴(新潮社文庫)
夏の終り (新潮文庫)/瀬戸内 寂聴


監督:熊切和嘉
原作:瀬戸内寂聴
脚本:宇治田隆史
撮影:近藤龍人
音楽:ジム・オルーク
出演:満島ひかり
   綾野剛
   小林薫
   赤沼夢羅
   安部聡子
   小市慢太郎

作家の瀬戸内寂聴が出家前の瀬戸内晴美時代に発表した小説で、  
自身の経験をもとに
年上の男と年下の男との 
三角関係に苦悩する女性の姿を描いた「夏の終り」を、
鬼才・熊切和嘉監督が映画化。
妻子ある年上の作家・慎吾と長年一緒に暮らしている知子。
慎吾は妻と知子との間を行き来していたが、
知子自身はその生活に満足していた。
しかし、そんなある日、かつて知子が夫や子どもを捨てて
駆け落ちした青年・涼太が姿を現したことから、
知子の生活は微妙に狂い始める。
知子は慎吾との生活を続けながらも、
再び涼太と関係をもってしまい……。
主人公・知子役に満島ひかり。
慎吾役はベテランの小林薫、
涼太役に注目の若手・綾野剛が扮する。
(映画.comより)

この映画は今の日本映画の一つの到達点として、
評価、評判を気にしないで、
ぜひ劇場でご覧いただきたい作品です。
ご自分の目で見て欲しいのです。

今年の日本映画の劇映画の中では、
私は今の所ベスト1です。
満島ひかりに主演女優賞をあげたいです。

日本映画の文芸作品の映画化で、
最近ここまで品格のある作品は思い当たりません。
ちょっと思い出してみるのですが、
『ヴィヨンの妻 ~桜桃とタンポポ~』(2009年根岸吉太郎監督)
ヴィヨンの妻 ~桜桃とタンポポ~ [DVD]/松たか子,浅野忠信,室井滋

くらいしか思い当たりません。
時代劇以外はあまり作られないという事もありますが。

『夏の終り』は、
満島ひかりのセリフのないシーンでの演技が
特に見所です。
大女優への風格が出てきました。
座って染色の型の切り抜き作業をしている彼女を
背中へ回って映すシーンなど見惚れました。
先日観た木下惠介監督の『父』の中で、
太地喜和子さんを同じようなショットで撮っている場面があり、
その背中の佇まいに息をのみました。
そのショットで表現されている彼女の姿、心情に、
圧倒的な迫力がありました。
満島ひかりは今回染色家の作業を、
「体に沁みついた芝居にしたい」と、
クランクインまで時間がない中、
専門家の所に通って指導を受け、
集中して取組み、驚異的なスピードで習得して周りを驚かせたそうです。
そんな彼女のプロ根性が、
他の染色作業をしている場面での美しい所作に表現されています。

この原作小説の主人公は38歳なので、
満島ひかりには早すぎる役ともいえます。
でも昔の女優さんたちは20代でも大人の女性を
しっかり演じていました。
満島ひかりはこの役を演じたことで同世代の女優たちから
一歩抜き出たと思います。
満島ひかりと宮崎あおいは、
2人とも1985年11月30日生まれです。
仕事し過ぎでない!?な宮崎あおいに比べ、
満島ひかりは地味に見えるかもしれませんが、
石井裕也監督と結婚し、
これから、音羽信子、岡田茉莉子、小山明子、岩下志麻、宮本信子
といった映画監督をパートナーに持った大先輩女優たちのように、
成長して行って欲しいです。
満島ひかりファンは間違いなくご覧になるでしょうけど、
ちょっと気になる女優と思ってみえる方にも、
この機会にぜひ彼女の魅力を堪能して下さい。
彼女はTVドラマよりもやはり映画女優としての仕事が合っていますビックリマーク
川の底からこんにちは [DVD]/
満島ひかり,遠藤雅,相原綺羅

愛のむきだし [DVD]/
西島隆弘,満島ひかり,安藤サクラ

カケラ [DVD]/
満島 ひかり,中村 映里子



映画を共感できる登場人物がいるかいないかで
判断される方には正直ちょっと困る作品かとは思います。
主人公はエキセントリックでありながら、
知性と理性と独立心も兼ね備えたスゴイ女性ですし、
男性陣は言ってしまえばダメンズで困った人たちです。
簡単に共感できるようなキャラクターではありません。
でもこの男性陣2人ともかなり難しい役柄に、
私は綾野剛と小林薫が素晴らしい演技で
命を吹き込んでいると感じました。
彼らの素晴らしい演技にも注目して戴きたいです。

特筆すべき要素は他にもあります。
美術、衣装が素晴らしいです。
(美術:安宅紀史 衣装:宮本まさ江)
昭和30年代の雰囲気を大変よく出していて、
制作現場のスタッフの皆さんが本当に素晴らしい仕事をされています。
音響のベテラン菊池信之さんの録音も素晴らしいです。

音楽は若松孝二監督の作品でも、
映画音楽を担当しているジム・オルーク(元ソニック・ユース)が、
熊切作品『海炭市叙景』に続き担当していて、
サウンドトラックだけでなく劇中で鳴るすべての音を作曲しています。
ギター中心のシンプルだけど映像にマッチした印象的な音楽です。
これもまた美術と同じく作品を彩どる素晴らしい要素です。

撮影の近藤龍人は熊切監督、山下敦弘監督と、
大阪芸術大学時代からの付き合い。
熊切作品『海炭市叙景』で毎日映画コンクール撮影賞を受賞しました。
今回はコントラストを利かせたルックが時代性を絶妙に表現しています。
コントラストを利かせすぎているとの評も読みましたが、
デジタル撮影でこの深みのある陰影や、
時代性のある湿度感、肌ざわりを出すにはとても合っていると感じます。

脚本はやはり熊切監督と大阪芸大時代からの盟友宇治田隆史。
この作品はセリフが少ないのですが、
この濃密な心理描写を少ないセリフでよく表現したと思います。
時間軸が前後したりするのが分かりにくいという評も見受けました。
しっかり見ていれば問題ないと思いますし、
映画を良く見ている方には全く問題ないと思います。

この作品は成瀬巳喜男監督の作品などと比べられ、
遜色を言われそうですが、
比べられること自体が名誉だと思います。
そんなレベルに至っていない作品がごまんとありますから。
日本映画の名作には海外でも評価されているものがたくさんありますが、
それをしっかり勉強している映画人がどれだけいるでしょうか。
日本映画の品格ある美しさを伝えている作品としてもこの映画を評価したいです。
文芸映画ですが、堅苦しい作品ではありません。

ドロドロした人間関係の感情描写が伝わってこないとの評もありますが、
この作品は文芸作品ですから、
品性、品格のある演出が必要なのです。
昼ドラではないのですから、
作品性に合った抑制の利いた演出が必要です。
熊切監督はこの作品の演出で、
監督として新しい段階に入ったと思います。

こう書くとスカしたやつと思われてしまうかもしれませんが、
映画にもいろいろなジャンルがあるわけで、
それぞれの作品に合った楽しみ方があるはずです。

私はインディー映画の味方です(笑)
同じ料金払って観るのだから、
メジャーもインディーも関係ないという方もいらっしゃるでしょう。
しかし、映画会社が自社で映画人の育成をしなくなってしまったから、
新しい才能は自主製作やインディー映画から出てくるしかないです。
(あるいはTVやCMなどの映像制作の現場からもありますが)
インディー映画の味方である一番の理由は、
日本映画にこれからも新しい才能が出て来て活躍して欲しいからです。
この『夏の終り』もメジャー作品とは比べ物にならない
低予算と短期間で作られています。
よくぞここまで作り上げたと胸が熱くなりました。

この映画のプロデューサーのひとりで、
制作のスローラーナーの代表である越川道夫さんは、
熊切作品『海炭市叙景』、
昨年度の数々の映画賞を受賞したり、
アカデミー賞外国語映画部門の日本代表にも選ばれた
ヤン・ヨンヒ監督の『かぞくのくに』など、
素晴らしい作品を送り出している人です。
浜松出身で、この冬公開される、
鈴木卓爾監督『楽隊のうさぎ』も彼がプロデューサーです。
『楽隊のうさぎ』←紹介記事クリックビックリマーク

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熊切監督と小林薫、満島ひかり、綾野剛

熊切監督は『ノン子36歳(家事手伝い)』の
シネマイーラでの上映の時、舞台挨拶にみえました。
また来て下さるといいなあ。

この『夏の終り』は女性向けの映画ですが、
男性にも見て戴きたいです。
DVD鑑賞でなく、劇場鑑賞できる環境にある方には、
ぜひ映画館のスクリーンで味わって戴きたい作品です。
キネ旬ベストテンにも入ると思いますので、
そういう作品をチェックしておきたい方、
瀬戸内文学ファンはもちろん必見目
坂口安吾や太宰治が好きな方にもおススメしたいです。
私はネコ好きですが、とても可愛い子猫や猫が出てきたのも嬉しかったですにゃーネコ
影響力ほとんど?全く?ないブロガーなので、
あえて声高に『夏の終り』おススメしたいと思いますビックリマーク

海炭市叙景 [DVD]/
加瀬亮,谷村美月,竹原ピストル


莫逆家族 バクギャクファミーリア DVD 通常版[1枚組]/
徳井義実,林遣都,阿部サダヲ

↑熊切監督の前作でメジャーデビュー作ですが、
劇場鑑賞した人は少ないと思います。
私の感想記事はここ←クリック
特に村上淳のヒース・レジャーのジョーカーのような熱演がスゴイです。


熊切監督は来年公開の 桜庭一樹原作『私の男』も既に撮影済みです。
出演:浅野忠信、二階堂ふみ、高良健吾、藤竜也、
   モロ師岡、河井青葉、太賀、相楽樹、三浦誠己、
   安藤玉恵、三浦貴大

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キャストの浅野忠信、二階堂ふみ、高良健吾

   
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