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ニーゼと光のアトリエ 感想 芸術療法を導入したブラジルの実在の精神科医ニーゼの勇気ある人生を描く

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『ニーゼと光のアトリエ』

原題:Nise - O Coração da Loucura
英題:Nise - The Heart of Madness

2015年製作 ブラジル映画
2015年10月第28回東京国際映画祭
TOHOシネマズ六本木で鑑賞で鑑賞

11月17日(土)より
ユーロスペースなどで公開される
『ニーゼと光のアトリエ』
昨年2015年第28回東京国際映画祭で
グランプリと最優秀女優賞を受賞しました。
私は東京国際映画祭で鑑賞して記事を書きました。
読み返したら、
我ながら結構しっかり書いていました。(^_^)v
一般公開にあたり昨年 UPした記事を
加筆・再編集してUPします。



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↓『ニーゼと光のアトリエ』予告動画


↓『ニーゼと光のアトリエ』動画


監督・脚本:ホベルト・ベリネール
編集:ペドロ・ブロンズ
製作:ホドリーゴ・レチエル
脚本:ホベルト・ベリネール
撮影:アンドレー・オルタ
美術:ダニエル・フラックスマン
音楽:ジャック・モレレンバウム

出演:グロリア・ピレス
シモーネ・マゼール
ジュリオ・アドリアォン
クラウジオ・ジャボランジー
ファブリシオ・ボリベイラ
ホネイ・ビレラ
アウグスト・マデイラ
フェリッペ・ホッシャ

ショック療法が正しいものとされ、
暴れる患者を人間扱いしない精神病院に、
女医のニーゼが着任する。
芸術療法を含む画期的な改革案を導入するが、
彼女の前に男性社会の厚い壁が立ちはだかる。
ユングの理論を実践し、
常識に挑む勇気を持った精神科医の
苦闘をストレートに描く感動の実話。

ベルリネール監督は、
過去にブラジルのストリートを生き抜く盲目の3姉妹や、
飛行機事故で体の自由を失ったロックスターなど、
苦境を跳ね返す人物に焦点を当てた
ドキュメンタリー作品を監督している。
実在した不屈の女性精神科医は、
監督が2本目の劇映画に取り上げるには格好の人物であり、
無意識の領域を重視したユング理論をブラジルに導入し、
芸術療法の分野に功績を残した
ヒロインの姿が見事に再現されている。
保守的な業界の常識に正面から立ち向かうタフネスが、
現代人へのメッセージとして突き刺さる。
ニーゼを演じたグロリア・ペレスは、
5歳でテレビドラマに出演して以来、
40年以上のキャリアを誇る
ブラジルを代表する女優のひとりである。
(東京国際映画祭作品解説より)

男社会でショック療法が主流だった1940年代の精神医療に、
絵画や彫刻で意思疎通を図る
芸術療法を持ち込んだ女性医師ニーゼの奮闘を描く、
実話がベースの物語。
今月初旬の地元リオデジャネイロ国際映画祭で
ワールドプレミアを行ったばかりで、
ベリネール監督は海外での初披露に
「いろいろな国の人に見てもらい、
大切なことを伝えるために睡眠時間を削り、
家族と過ごす時間も減らして映画を作っている。
東京に呼んでいただいてありがたい」と感慨深げに話した。

ニーゼに関する書籍をベースに企画をスタートさせたのが13年前。
当初はドキュメンタリーにする予定で、
撮影のアンドレ・ホルタが監督もするはずだったが、
劇映画としてプロジェクトの規模が拡大していくにつれて
「自分には荷が重い」と降板。
プロデューサーの予定だったベリネール監督が
自らメガホンをとることになった。

クランクイン前の約2カ月は全スタッフ、キャストが
撮影に使用した病棟で寝泊まりし、
精神疾患で入院している実際の患者とも寝食を共にしたという。
主要な患者を演じたのはプロの俳優だったが、
「病室の中には実際の患者もいるし、
スタッフとしても参加してもらった。
順撮りだったけれど、
役者たちがどんどん変わっていってリアルになった。
とてもエモーショナルな瞬間だったよ」
と手応え十分の様子で振り返った。

映画では描かれていないが、
「現実はもっとひどかった」とベリネール監督が言うように、
ニーゼはいわれなき誹謗(ひぼう)中傷を受け、
殺害をほのめかす脅迫状も届いたこともあった。
結果、患者たちによる美術展を開くことで世論を動かしたが、
「メディアに訴えることが唯一の道だったが、
彼女は決してあきらめず全くぶれることがなかった。
すべてを描くことはできないが、
世の中を変えた1人であることは間違いない」
と母国の女傑を称えていた。
(映画.com速報より)

実在した女性精神科医
ニーゼ・ダ・シルベイラ医師(1905年~1999年)
の奮闘が描かれています。
1940年代のブラジルの精神病院では、
患者を大人しくさせようと、
ロボトミー手術や電気ショック療法を行っていた。
ニーゼ・ダ・シルベイラ医師は、
患者をクライアントと呼び、
ひとりひとりに寄り添った人間的な治療を行うため
看護師だけで適当に行われていた作業療法を
彼女が専任になり本格的に行うことにした。
絵画や彫刻の制作に取り組んだり、
音楽や犬と触れ合うことで
クライアントは人間性を取り戻し、
退院できるまで回復した人もいた。
しかし、病院の主流派は彼女の作業療法を認めず、
嫌がらせや、犬を殺害するなどの妨害をしてきた。
病院内では潰されそうなので
美術評論家の勧めもあり、
病院の外でクライアントの作品の美術展を開き、
クライアント制作の美術品を広く観てもらう事にした。

映画はとてもリアリティーがありました。
ニーゼ医師の毅然とした態度には心を打たれました。
実際にニーゼ医師の働いていた病院に
スタッフと俳優が滞在してリハーサルを行ったそうで、
特に入院しているクライアント役の俳優たちの演技は、
芝居とは思えないようなリアルな存在感を出していました。
ドキュメンタリー作品を撮ってきた監督らしい、
抑制の効いた演出とカメラワークでした。


ニーゼ・ダ・シルベイラ医師は、
様々な妨害にあっても、
クライアントに寄り添った活動を続けました。
94歳で亡くなるぎりぎりまで
現役で働いてみえたそうです。
彼女の側で仕事に影響を受けた人たちが
ブラジル各地にちらばり、
隔離病棟に入れない
入院しないという方向で
ブラジルの精神医療のシステムが
変わって行ったそうです。

ニーゼ医師はユングとも交流があり、
スイスで美術展も行ったそうです。
映画のラストに美術展が映されますが、
実際の作業療法によるオリジナルの
絵画や彫刻だそうです。
ニーゼ医師の働いていた病院の美術館に
35万点もの作品が収蔵されているそうです。

ニーゼ医師は人間の無意識に興味があり、
(作業療法のアートで表現されるのは
その一部)
精神医療の変革への挑戦は続き
退院した人たちがデイサービスのように利用できる
施設も作ったそうです。
監督はニーゼ医師の人間の深い所を見ている
姿勢に惹かれたそうです。
ドキュメンタリー作家としての
自分の人間の見方と共鳴したそうです。
劇中権威主義的な男性医師たちが
彼女を見下したり、
彼女の診療を妨害する態度が描かれていますが、
実際には命を脅かすような
もっと苛酷な状況もあったそうです。

私が調べてみたところ、
ニーゼ医師が1926年に卒業した
バイーア大学の医学部のクラス157人中
彼女が唯一の女性だったとのこと。
女性医師がとても少ない時代に、
当時権威があったロボトミー手術や
電気ショック治療に異を唱えて、
人間性のある治療法を希求した
彼女の人生は本当に立派です。
ラストに生前の彼女の映像が流れますが、
楽天的な雰囲気で明るくてチャーミングな方でした。



上映後のトークと質問タイムでは、
監督、プロデューサーが、
この作品を多くの人に見てもらいたいと訴えていました。
完成までに13年もかかった作品で、
その思いは切実でしょう。
監督が「人間の良心は普遍的です。」
と語っていましたが、
この映画が描く人間の良心の普遍性は、
世界中のどの国の人が見ても伝わると思います。
作り手の真摯な熱意を強く感じる作品でした。
上映後会場からは大きな拍手が起こりました。

昨年書いた記事では
一般公開されるかどうかわかりません。
と書きました。
今回1年後に公開となりました。
真面目で誠実な伝記映画です。
興味を持たれたらぜひご覧ください。

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実際のニーゼ医師の作業療法の様子↓






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『ニーゼ』ホベルト・ベリネール監督



『ニーゼと光のアトリエ』には、
ニーゼ医師が自宅で
とてもカワイイ子猫を3匹飼っているシーンがあります。
実際にとてもネコがお好きだったようで、
ネットに猫とご一緒に写った写真がいろいろありました。







この記事をもし覚えていてくださった方がみえましたら
感謝いたします。

今年東京国際映画祭で観た
ブラジル・フランス合作映画
「アクエリアス」(原題:Aquarius)
今年のカンヌ映画祭コンペ作品
クレベール・メンドンサ・フィリオ監督(ブラジル)
主人公の作家クララ(ソニア・ブラガ)の
毅然とした生き方が
この『ニーゼと光のアトリエ』の記事を編集していて
同じブラジル人女性ニーゼの人生とリンクしました。
「アクエリアス」
記事を書いて紹介したい作品の1本です。
来年一般公開されるかも。

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今日は横浜美術館に
「BODY/ PLAY/POLITICS」観に行きました。
目当てはアピチャッポン・ウィーラセタクンの
新作ビデオインスタレーション
《炎(扇風機)》でしたが、
他の5人の作家の作品も良かったです。
また紹介したいです。

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