東京フィルメックスで鑑賞した映画
『マンダレーへの道』
コンペティション作品
日系移民でハリウッドで活躍する
有名ポスターデザイナー、
イラストレーターの
Akiko Stehrenbergerさんが
本来ならこのような
インディーズ映画では
払えるギャラではないのですが
移民としての立場からも
この映画を気に入ってデザインしてくれた
(監督談)
という素敵なポスター。
「マンダレーへの道」予告動画
(The Road to Mandalay/再見瓦城)
2016年製作
台湾=ミャンマー=フランス=ドイツ合作
監督・脚本:ミディー・ジー
出演:クー・チェンドン
ウー・クーシー
ミャンマーからタイへ出稼ぎに密入国したリャンチン(ウー・クーシー)とグォ(クー・チェンドン)
台湾で仕事する夢に邁進するリャンチンと
彼女と結婚してミャンマーに帰りたいグォの思いのすれ違いの先の衝撃。
リアリティに拘った演出に応えた主演2人が熱演。
監督はミャンマー出身で16歳で台湾に渡り
台湾をベースに活躍している。
監督の兄、姉が昔実際にタイへ密入国出稼ぎした経験や
出稼ぎ労働者の細かい所作などを詳しく聞き、
しかも映画の役で演じてもらった。
経験からディテールがしっかりしている。
監督の出身の村で出稼ぎから帰った若者の事件がベースになっている。
20〜30年前に遡る話しでもあるし、
今日も続いている問題を描いている。
主演の2人以外は監督の兄、姉、
友人や親戚だそうです。
主演の2人には8〜9ヶ月かけて
出稼ぎ労働者を演じるために
ミャンマーでの農業従事、
劇中で彼、彼女がする仕事である
タイで工場の仕事や
皿洗いの仕事を
体験して準備させたそうです。
同時に言葉も行いました。
『あの頃、君を追いかけた』の台湾スタークー・チェンドンは
ジャッキー・チェンの息子ファン・ズーミンと大麻所持で逮捕されたスキャダルからの復帰作。
監督が実際に会って何度も話しをした中で
天才的な部分を持っていて、
ピュアなところがある人と感じた。
この映画のためには準備期間が1年半欲しいと言ったらやりたいとの返事だった。
アイドル・スターからの脱皮にもなっていると感じる熱演です。
まさにリャンチンを生きているような
素晴らしい演技を見せてくれる
ウー・クーシーは舞台で活躍している女優。
ミャンマーには300〜500万人くらいの
中国系の人々が住んでいるそうで、
劇中で話されている言葉はビルマ語ではなく
中国雲南省の方言にあたる中国語とのことです。
この映画では厳しい出稼ぎ労働者の生活や
過酷な仕事の現場が描かれています。
食堂の厨房での長時間の皿洗い、
郊外にある24時間稼働の製糸工場での仕事。
グォは徹夜仕事をする為麻薬にも手を出します。
正式な身分証明書、労働許可証がないと、
街では小さな会社や店でも雇ってもらえません。
リャンチンは何度も騙されながら
法的に通用する身分証を手に入れる(買う)ため大金を使います。
その為に売春もする。
グォのことは一応彼氏とは考えていても、
結婚の申し込みには今は結婚する気はないと答える。
台湾に行って仕事をする夢に
一歩一歩近づきます。
故郷を出て自分の夢を実現する野心に忠実、現実的なリャンチン。
タイで稼ぎ故郷に店を持ちリャンチンと結婚し幸せな暮らしをしたい保守的なグォ。
2人の生き方の違いが呼ぶものは...
価値観の相違が衝撃のラストに繋がって行きます。
出稼ぎ労働者の生活をリアルに描いて、
最後にこう来るのかと息を呑みました。
しかも監督の故郷で
実際にあったことだそうですから更に驚きました。
良く宣伝コピーに使われる
「衝撃のラスト」ですが、
これが?
と、いうことが結構多い。
でも、今回の東京フィルメックスで観た映画は
本当に衝撃なラストな作品が
すでに7本中4本です。
国外への出稼ぎ労働は
国際的に普遍性があるテーマ。
密度の濃い重さがありますが、
青春映画、恋愛映画の面も印象的。
胸に迫る切なさ、鮮烈なラスト。
忘れられない作品になりました。
日本公開は未定ですが、
ぜひ公開して欲しいです。
ミディー・ジー監督へのQ&Aを元に書きました。
11月26日に台北で授賞式がある、
第53回金馬奨では
作品賞、監督賞、
主演男優賞、主演女優賞、
オリジナル脚本賞、美術など計6部門にノミネート。
今年9月の第73回ベネチア国際映画祭で
ヨーロッパ映画批評家協会最優秀作品賞を受賞。
クー・チェンドン、ウー・クーシー、
ミディ・ジー監督
東京フィルメックスで観た映画
The NET 網に囚われた男
ぼくらの亡命
バーニング・バード
神水の中のナイフ
マンダレーへの道
オリーブの山
山のかなたに
とても充実したラインナップで
みな1本ずつ書きたいですが、
多分ムリなので方法を考えます。
なう、ツイッター、
インスタグラムには
1本ずつ投稿しています。