第70回毎日映画コンクール表彰式レポート
2月16日(火)に行われた
第70回毎日映画コンクール表彰式に
行って来ましたので遅くなりましたが
レポートを書きますね。
会場は私の住んでいる川崎の
川崎駅西口すぐそばにある
ミューザ川崎シンフォニーホール
とても立派な施設です。
表彰式の様子は
tvk(テレビ神奈川)で、
2月21日(日)20:55~
放送されるそうで、
13日(土)に行ったキネマ旬報の表彰式とは違い、
ショーアップされていて楽しかったです。
司会は生島ヒロシ、田村あゆちアナウンサー
2015年第89回キネマ旬報ベスト・テン 第1位映画鑑賞会と
表彰式に行って来た話。←クリック
まず、
「国府弘子 川崎キネマ ジャズ・クインテット」
によるオープニング演奏で始まりました。
音響がとても良いホールだったので、
コンサートに来てみたくなりました。
浜松時代に
国府弘子さんの楽しいジャズ・ピアノ・ソロコンサート、
ジャズ・ピアノ6連弾コンサート
(国府弘子、佐山雅弘、小原孝、
塩谷哲、島健、山下洋輔)
に行ったことがあります。
ジャズには全然詳しくありませんが、
娘がピアノをやっていたこともあり
ジャズ・ピアノコンサートによく行きました。
表彰式のエンディングで、
アカデミー賞のように
亡くなった映画人を偲ぶコーナーがあり、
そこではスクリーンに亡くなった方々が映され、
国府弘子 川崎キネマ ジャズ・クインテットが
「エブリタイム・ウィ・セイ・グッドバイ」を
演奏しました。
第70回毎日映画コンクールで表彰されたのは
次の方たちです。
日本映画大賞
「恋人たち」(橋口亮輔監督)
日本映画優秀賞
「岸辺の旅」(黒沢清監督)
外国映画ベストワン賞
「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」
(アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督)
監督賞
塚本晋也「野火」
脚本賞
原田眞人「駆込み女と駆出し男」
男優主演賞
塚本晋也「野火」
女優主演賞
綾瀬はるか「海街diary」
男優助演賞
加藤健一「母と暮せば」
女優助演賞
長澤まさみ「海街diary」
スポニチグランプリ新人賞
野田洋次郎「トイレのピエタ」
藤野涼子「ソロモンの偽証 前篇・事件」「ソロモンの偽証 後篇・裁判」
田中絹代賞
桃井かおり
撮影賞
藤澤順一「ソロモンの偽証 前篇・事件」「ソロモンの偽証 後篇・裁判」
美術賞
原田哲男「日本のいちばん長い日」
音楽賞
坂本龍一「母と暮せば」
録音賞
小川武「恋人たち」
ドキュメンタリー映画賞
「沖縄 うりずんの雨」
(ジャン・ユンカーマン監督)
アニメーション映画賞
「百日紅~Miss HOKUSAI~」
(原恵一監督)
大藤信郎賞
(実験的なアニメーションが表彰される)
「水準原点」(折笠良監督)
TSUTAYA映画ファン賞 日本映画部門
「幕が上がる」
TSUTAYA映画ファン賞 外国映画部門
「ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション」
特別賞
櫛桁一則(「シネマリーン」支配人)
橋本忍(脚本家)
かわさきシネマアワード
「小川町セレナーデ」(原桂之介監督)
川崎市が
川崎市内を主な舞台にした
「最も川崎らしい映画」への投票を実施。
先にスタッフ部門、
特別賞、TSUTAYA映画ファン賞などから表彰され、
主要部門が後半にありました。
表彰式で一番感動したのは
特別賞の岩手県宮古市「シネマリーン」支配人
櫛桁(くしげた)一則さんのスピーチです。
三陸沿岸を中心に仮設住宅などで
映画無料上映会を続けています。
「自分はボランティアスタッフや、
募金をしてくれた人、
「シネマエール東北」で応援してくれた人や、
他にも上映活動をしている人たち、
映画の配給会社の人たちなど
大勢の人を代表してここに立たせてもらっている。
自分が上映会に出かけると
「シネマリーン」はスタッフ1人の
切り盛りになり大変で感謝している、
休みもないが支えてくれる妻にも感謝」と、
とつとつと語られました。
胸が熱くなりました。
もう一人の特別賞は脚本家の橋本忍(97歳)さん。
孫の雄大さんが代理出席。
忍さんは生涯最後の作品を執筆中だとのことです。
毎日映画賞はスタッフに対する賞もあるので、
受賞者のみなさんは
励みになると語られていました。
撮影賞「ソロモンの偽証」の
藤澤順一さんは、
「この作品はフィルム撮影して、
子どもたちのいきいきとした顔を
フィルムに焼き付けることができた。
撮影は照明なくしては成立しない仕事で、
照明の金沢正夫に素晴らしい仕事を
してもらった。
受賞を一緒に祝いたかったのに、
彼は昨年12月に亡くなってしまい
それがかなわなかった...
ありがとう、金沢!」
と、声を詰まらせながら語りました。
藤澤順一さんは、照明技師の金沢正夫さんと
組んだ作品が何本もあり、
万感の思いだったでしょう。
若尾文子さんが「若尾文子映画祭」のトークで、
撮影では「照明が一番大事ね」と強調されてたことを
思い出しました。
藤澤順一さんの涙で声が詰まったスピーチにも
とても感動しました。
実験的なアニメーションが表彰される
大藤信郎賞の折笠良監督「水準原点」は
[粘土の波が次々と押し寄せてくる。
時に渦を巻き、大きくうねる。
後半、カメラの位置が変わると、
平面の中心に石原吉郎の詩「水準原点」が1文字ずつ刻まれ、
波はその波紋だとわかる。
アニメーションの原点である
“動き”を粘土で表現した作品。
シベリア抑留体験を持つ石原の詩については
監督は「内容は重くて暗い。
でもリズミカルな反復や平仮名の使い方など、明るさもある。
激しいと同時に静か。その風景を表現したかった」と話す。]
(第70回毎日映コンの顔より)
監督が1人で1年かけて制作したクレイアニメ。
作品を観てみたいです。
折笠監督は現在文化庁新進芸術家海外研修員として、
カナダ・モントリオールに滞在中で、
授賞式のために帰国しました。
アニメーション映画賞
「百日紅~Miss HOKUSAI~」の原恵一監督は
「原作者の杉浦日向子さんは、
この世界と異界を行ったり来たりできるような
人だったので、
今も客席のどこかで見ていてくれるかもしれない。
きっと喜んでくれていると思います。」と語りました。
かわさきシネマアワードの
「小川町セレナーデ」原桂之介監督は、
お客さんに選んでもらったのが
とても嬉しい。
2位が「喜劇 駅前団地」(1961年
森繁久彌主演、久松静児監督)で、
みんなの心に残っている50年以上の前の作品に
勝ったので驚いた。
「小川町セレナーデ」も長く心に残る作品になれたら
と語りました。
「沖縄 うりずんの雨」ジャン・ユンカーマン監督は
命どぅ宝(ぬちどぅたから)の沖縄を
戦争の道具として扱っている70年は長すぎる。
4月から英語版をアメリカで上映して訴えたい。
と流暢な日本語で語りました。
TSUTAYA映画ファン賞 日本映画部門
「幕が上がる」には、
ももいろクローバーZが登場
顔のペインティングは受賞の喜びを表現したそうです。
生島ヒロシさんに早起きなので
「おはよう一直線」に出させてくださいとアピールしてました。
脚本賞「駆込み女と駆出し男」
原田眞人監督は、
「初めて脚本を全部読んだのは
中学生の時で橋本忍さんの「切腹」(小林正樹監督)だった。
「駆込み女と駆出し男」の脚本は
樹木希林さんが「こんなに長いセリフはいや」と言って
周りに分け与えたのが映画として良い形になった。
樹木希林さんと橋本忍さんに感謝します。」と述べました。
塚本晋也監督は
「監督賞」と「男優主演賞」の
毎日映画コンクール史上初のW受賞。
「野火」は20~30年前から立派な監督になったら
作りたいと思っていたが、
戦争へ行った人、
戦争体験をした人がどんどん亡くなっている。
戦争が近づいて来ていると危機感があり
作るなら今しかないとお金もないけど始めた。
昨年は戦争体験を発言していた
水木しげるさん、
野坂昭如さんも、
映画制作のためにインタビューしていた
寺島さんも亡くなった。
戦後70年の年に公開したのはたまたまだが、
戦争に行った人がいなくなる前に完成できた。
最初は緑の中へ自分一人でカメラ抱えて入って行って、
カメラのボタンを押して一人で演じても良いかと思った。
「男優主演賞」
については、
僕が主演なら俳優さんに
交通費を払わなくていいから自分でやった。
「リリーさん、中村達也さんや、
ボランティアの俳優さんたちの演技に返していただけ。」
「本当にすみません、
歴代受賞者には佐分利信さん、三國連太郎さん、
緒方拳さんなど凄い人たちがいて実感が遠のいた。」
「僕なんかが、ごめんなさい、
すみません、申し訳ないです。」
と、恥ずかしそうに何度も謝っていました。
スポニチグランプリ新人賞
「トイレのピエタ」
野田洋次郎さんの表彰には
松永大司監督も登壇。
野田洋次郎さんがライブで歌っている姿が
とても色っぽくて出て欲しいと思った。
野田さんとはとことん語り合い、
「才能のある人は面倒くさいな」と思ったけど
映画では予想以上の物を出してくれたと語りました。
野田洋次郎さんは
「2年前に監督と出会い
1年かけて準備した。
演技なんてできないと言ったが
それでも出てくれと監督に言われたので
できなくても自分のせいじゃないと思った。
監督とのセッションはケンカもしたけど楽しかった。」
と語りました。
スポニチグランプリ新人賞
「ソロモンの偽証 前篇・事件」
「ソロモンの偽証 後篇・裁判」
藤野涼子さんの表彰には
成島出監督も登壇しました。
藤野さんは
「世の中からいじめが減ったらなと思いながら演じました。」
「映画の中で刑事を演じた田畑智子さんは
毎日映コンクールの新人賞、助演賞、主演賞と
3冠を獲得していることを知りました。
私も助演賞、主演賞を受賞できる女優さんになりたいと思います。」
と、高校1年生とは思えない落ち着いた語りでした。
日本映画優秀賞受賞の黒沢清監督の新作『クリーピー』に出演です。
顔は蒼井優、黒木華路線だし、
しっかりしているし、
山田洋次監督の映画にきっと出ますね。
田中絹代賞
桃井かおりさんは
監督第2作「火 Hee」などが出品された
ベルリン国際映画祭に参加していたが、
表彰式のためにこの日の朝に日本へ帰国。
桃井さんは若い頃テレビドラマの仕事で
最初に田中絹代さんと仕事をしたとき、
田中さんが(テレビの仕事に進出された頃だったため)
「田中は新人ですからよろしくね」と言われたので
内心「このおばあさん今からデビューで大変ね」と思った。
あの日が今となっては恐ろしい。
大人になるということは
恐ろしさを知ることです。
と、桃井調で語りました。
女優助演賞「海街diary」
長澤まさみは
監督に映画の要素のタナトスと
生きるというエロスの部分の
「エロス」を担当して欲しいと言われました。
と話しました。
男優助演賞「母と暮せば」
加藤健一
27年ぶりの映画出演は、
山田洋次監督が舞台公演中の楽屋にみえて
「出なさい」と言われたので
「出ます」と答えましたと。
長回しが多かったので舞台感覚で演じられた。
二宮君はとても礼儀正しくて
ジャニーズは教育がすごいみたいですね。
監督に僕だけ本当の長崎の人のように
話して欲しいと言われたので、
方言を頑張って練習した。
と語りました。
女優主演賞「海街diary」
綾瀬はるか
私が演じたのは四姉妹の長女でしたけど、
チャキチャキしていてすごく明快。
普段のろまで優柔不断な私とは真逆の役で
すごく難しいなと思っていたんですけど、
撮影が始まっていく中で
自分が気づかなかった新しい自分に気づいたり、
いろいろ発見するころができて、とても挑戦的な役でした。
と話しました。
日本映画大賞
「恋人たち」は
橋口亮輔監督と主演の篠原篤、成嶋瞳子、池田良、
深田プロデューサー、録音賞受賞の小川武さんら
スタッフも登壇。
橋口監督は今日入り口で
表彰式に来ましたと言ったら
整理券を持って並んで下さいと言われたので
受賞者ですと言ったら
「受賞者ですか?」と2回も聞かれました。
7年前に『ぐるりのこと。』で優秀作品賞を頂きました。
その時の大賞は滝田洋二郎監督の『おくりびと』でした。
舞台袖で滝田監督に「橋口さんすいません、大賞獲っちゃって」と言われて、
「いいですよ、いいですよ」とその時は返したのですが、
内心はとても悔しかったです。
この賞は、映画人なら誰もが憧れる賞だと思います。
まず、深田誠剛プロデューサーにお礼を言いたい。
どん底にいる時にもずっと声をかけてくれた。
そしてワークショップで出会った俳優たちも今ここに立てている。
低予算で無名の俳優が8割方を占めている映画が
こうして賞をいただくとは夢にも思っていなかった。
クランクイン前に深田さんにも
「この作品は作品賞を獲るようなものでもないし、
ヒットもしませんよ」と言いましたから。
日本映画が厳しい中で、
こういった賞をいただくと明日の励みになります。
と語りました。
海外で仕事中の黒沢清監督は欠席で
「この映画は30本目の長編作品で
ヘンな映画ばかり作って来ましたが
30本の区切りで受賞で来て感慨もひとしおです。
次回もまた40本目か45本目くらいの作品で
賞をいただけることを夢見ています。」
というメッセージが
代理受賞の松田広子プロデューサー
より紹介されました。
音楽賞の坂本龍一さんも欠席で代理受賞でした。
なんだかムラのある紹介になってすみません。
今年のキネ旬表彰式はニノファンが詰めかけたので、
映画ファンが集まっている雰囲気ではなかったです。
ゲストも多く感動的なスピーチも聞け、
ショーアップされてて見やすい
毎日映画コンクール表彰式の方が楽しかったです。
私は毎日新聞を購読していて昨年も応募しましたが
外れたのでグレて(苦笑)
今年はキネ旬表彰式に応募してみました。
でも、応募だけでもしてみたらと
交流しているブロガーさんに勧められて締切日ギリギリに
TSUTAYAのサイトからネット応募して当たりました。
勧めて戴いて感謝です。
3階席でしたが舞台が近くに見える構造だったし、
上の方の写真のように大きなスクリーンに
舞台の様子が映されるので良かったです。
最近観た映画
『ドリーム ホーム 99%を操る男たち』
本作監督ラミン・バーラニと
アミール・ナデリ監督の共同脚本が秀逸で
見応えのある力作でした。
『写真家ソール・ライター
急がない人生で見つけた13のこと』
ソール・ライターが語る詩的な言葉を
柴田元幸さんが的確な翻訳で字幕にしてくれました。
のんびりしていてほっとする映画なので
闘うフォトジャーナリストのドキュメンタリー
『広河隆一 人間の戦場』と
セットでおススメしたいです。
『わたしはマララ』
ダメな自分が情けなくなってしまいましたが、
まっすぐなマララさんの生き様に背筋が伸びました。
書きそびれていて
なんとか1本の記事に書きたいのが
『禁じられた歌声』
『広河隆一 人間の戦場』
『Live!Love!Sing!生きて愛して歌うこと 劇場版』
『ドリーム ホーム 99%を操る男たち』
です。
鑑賞した映画の短評は↓
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に鑑賞後随時投稿しています。
ぜひ読んで下さい。
Captain Fantastic
カール・ラガーフェルドと愛猫シュペット(^・ω・^)