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殺されたミンジュ 感想 キム・ギドク監督日本で撮影の新作「STOP(原題:ストップ)」が観たい!

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『殺されたミンジュ』

原題:일대일 / Il-dae-il
英題:One on One

2014年製作 韓国映画

ヒューマントラストシネマ有楽町で鑑賞















↓『殺されたミンジュ』予告動画


監督・製作総指揮・脚本・編集・撮影:キム・ギドク
製作:キム・スンモ

出演:マ・ドンソク
キム・ヨンミン
イ・イギョン
チョ・ドンイン
テオ
アン・ジヘ
チョ・ジェリョン
キム・ジュンギ


あらすじは
女子高生ミンジュが男たちに追われて殺される。
闇に葬られる事件。
1年過ぎたころ謎のグループが
少女の殺害に関わった者たちを誘拐し
誰の命令でどうしてミンジュが殺されたのかを
問いただす。
どうやら国家的な組織が関わっているらしい。
追及するグループ内の結束が崩れていく...









主演のマ・ドンソク。
謎のグループは誘拐をするたびに
軍服や警察の制服など
違う制服に着替えます。


キム・ヨンミンは
1人8役演じます。







この作品はスリラーではあるけど、
謎解きミステリーとは言えません。

監督は
「私たちは、誰もが自分の中に
“失われたミンジュ(民主主義)”を
抱えているのではないかと考えている。
この映画を、
ひとりの女子高生の死の物語と捉えるのではなく、
民主主義の死や喪失を
象徴的に描いた物語だと捉えてほしい」

「現在、韓国に住んでいる多くの人たちが、
自分も含めて、消化不良の状態にある。
数え切れないほどの事件が立て続けに起き、
私たちに衝撃を与えている中で、
『自分は何者なのか? 自分の役割は何なのか?』
という問いかけが自分自身の中に浮かび上がってきた。
そうした問いかけに自分なりに答えたのがこの映画だ」
(シネマトゥデイより)
と、語っています。

邦題は『殺されたミンジュ』とつきましたが、
原題は「一対一」で英題も「One on One」です。

どういう意味で「一対一」なのか、
鑑賞後も考えてしまいます。

この作品は
キム・ギドクの映画としては分かり易いです。
謎は残るし、
グループが着る服が変わるのはなぜ?
1人8役は人間の多面性のメタファーか、
それとも?
他にも、あれはどういう意味だったのだろう?
と、いろいろ反芻したくなるので後を引きます。
だけどメッセージはストレートに伝わってきます。

『メビウス』からは撮影も自分でして
映画作りの殆どを自分でやっているキム・ギドク。
洗練された上手い映画を作ろう、
成熟した作品作りをしようという意志は感じられないです。
それができる能力も技術も持っていて、
過去の作品で証明もしているのに。
この映画がキム・ギドク作品初めてだという人は
ヘタな映画だと受け止めるかもしれません。

ビデオ撮影の映像は妙になまなましく、
ミンジュの殺害、
グループが行う拷問、
DV男の暴言、暴力など、
作品世界に引き込まれて
正直その場では不快でした。
それが狙いでもあるのでしょう。
上手く見せるということ度外視で
ドカンとぶつけてくる
強引に引き込むパワーがあります。
(でも、ここは上手いなと思わせる
ところだって多々あるのですが。)

「ミンジュ」は民主主義の意味でもあり、
韓国で民主主義が危機に陥っていることを描いているし、
社会の中の不平等、不条理への怒りも。
「悪の凡庸さ」で思考停止し
残酷な命令にもその通りに動く人間の愚かさ。
そして誰もが独裁者になりかねない恐ろしさ。
DVも一種の独裁。
身近な独善的支配から
国家の独裁的な暴力までが
繋がっていることを見せつけられる。
心が弱っている時には観ない方がよいかも。
ディスるのも簡単だと思いますよ。
私は時々こういう映画を観てガツンと
ぶん殴られたいのです。


全部自分でやりだして我が道を行くキム・ギドク。
完成度なんて度外視で伝えたいことがある。
そんな彼がこの作品の次に撮ったのは
「ストップ」原題:스톱/STOP
です。
また、製作、脚本、監督、撮影、編集、美術など
映画制作にかかわる殆どすべてを自分でやっています。
しかもこれは日本で日本人の俳優を使って
短期間で(ゲリラ的な撮影も含めて)撮ったそうです。
韓国映画の現場で助監督、通訳の仕事をしていた経験のある
安藤大佑監督(ヤン・イクチュン主演『けつわり』など)が
助監督についています。
昨年の第5回サハリン国際映画祭、
第20回釜山国際映画祭に出品されました。
映画ニュースをチェックされてる方は
ご存知でしょうね。
出演者は全員日本人です。
台湾でも活動する中江翼、
劇団「青年団」所属で映画『3泊4日、5時の鐘』
などに出演の堀夏子の2人が主演。
他に合アレン、武田裕光など。

映画の内容をザラッと書きますね。
知りたくない人は読まないで下さい。



福島原発事故の時、
近くに住んでいたため
東京に移住した若い夫婦。
妊娠中の子供を出産するかどうか、
政府やインターネットの情報に振り回されるが、
故郷に帰って産む決断をする。
7年後、育ったその男の子は
聴覚が異常に敏感になっていた。

これは
「国が住民の声を聞いていないというメタファーです。
国が人々の声を聞かないというのは、
社会がとても不健全ということだと思います」
と、監督。
日本公開が決まらず、
「日本で公開されない理由は分かりません。
韓国の監督が福島を題材に扱ったことに対する
懸念もあったのかもしれない。
でもわたしはこれを単なる日本だけに限った問題ではなく、
全世界的な、地球上の大きな問題として
アプローチしたかったということを理解していただきたい」
「こういう状況なので、
出演してくれた日本人俳優の皆さんに
申し訳ないと思っているんです。
彼らは本当に献身的に映画に尽くしてくれた。
だからこの作品を通じて彼らの才能を
知ってほしいと願っている。
もし公開が難しいなら、
せめてDVDでもいいから発売してもらいたい」
(シネマトゥデイより)







食料や電力の供給を
地方に任せている都会の暮らしにも
メスを入れている内容で、
夫が福島第一原発周辺で目撃する
衝撃的なシーンも。

かなり詳しい解説も読みました。
興味がある方はここ←クリックです。
「ストップ」はぜひ観たいです。
キム・ギドク監督の問題提起を
実際に作品を観て確認したいです。


キム・ギドク監督と「ストップ」キャスト


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