『箱入り息子の恋』
6月28日まで
予告動画はこちら↓
監督:市井昌秀
音楽:高田漣
出演:星野源
夏帆
平泉成
森山良子
大杉漣
黒木瞳
穂のか
栁俊太郎
竹内都子
古舘寛治
俳優でミュージシャンの星野源が映画初主演を飾り、
内気で恋愛経験のない35歳の独身男が、
目の不自由な女性に恋をしたことから急激に変化していく姿と、
彼らをとりまく家族の姿を描いたドラマ。
わずらわしい人付き合いを避け、
職場と自宅を往復するだけの日々を送る市役所勤務の天雫健太郎は、
彼女いない歴=年齢の35歳。
そんな息子を見かねた両親は、
本人たちにかわり親同士が見合いをする「代理見合い」をセッティングする。
健太郎はそこで出会った今井夫妻の娘で、
目にハンデを抱えた女性・奈緒子に生まれて初めて恋に落ちる。
しかし、2人の行く末には思いがけない障害が立ちはだかり……。
ヒロインの奈緒子を演じるのは、「天然コケッコー」の夏帆。
黒沢清監督作「トウキョウソナタ」脚本でも
日本の家族を題材にしたオーストラリア人の映画作家
マックス・マニックスが原案。
ぴあフィルムフェスティバルでグランプリを受賞した
『無防備』で注目を集める若手、市井昌秀監督。
(映画.comより)
この作品のテーマはズバリ「肉体」
身体性を取り戻し、自分で築いた殻をぶち破って、
恋せよ青年というエールが力強い
私は作り手の熱い思いが伝わって来る映画が大好きです。
映画魂を感じられる作品に出合えると嬉しいです。
この『箱入り息子の恋』もそうです。
市井監督の作品『無防備』
無防備 [DVD]/
森谷文子,今野早苗,柿沼菜穂子
↓『無防備』の予告動画
釜山国際映画祭でグランプリを獲得し、
実際の出産シーンを登場させたことでも注目された、
新進気鋭の日本人監督による感動的な人間ドラマ。
田舎のプラスチック工場で働く30代の主婦の前に
出産が迫る妊婦が現れたことから、
ヒロインのトラウマや夫婦間の悩みがえぐり出されていく様子を描く。
監督は前作『隼』でぴあフィルムフェスティバル準グランプリを受賞した市井昌秀。
息が詰まるほどのヒロインの日常と、
一転してすがすがしい再生が心にしみる。
ストーリー:プラスチック工場で働く律子(森谷文子)には親しい友人もいず、
夫とは寝食を別にする家庭内別居状態が続いていた。
そんな中、妊娠中の千夏(今野早苗)が工場に入社してくる。
千夏と親しくなった律子だが家では夫に冷たくされ、
幸せそうな千夏が憎らしくなってくる。
しかし、その背景には律子に起きた過去の不幸な出来事が関係していた。
(シネマトゥデイより)
出産をテーマとした作品であり、
映画の終盤では監督の妻で女優の今野早苗による本物の出産映像が使われる。
2008年7月のぴあフィルムフェスティバルでの上映時には
モザイク処理が行われた映像が使われたが、
その後配給側の強い要望により、無修正での全国公開が実現した。
映倫の審査の結果、「わいせつ性は認められないが、極めて刺激的」
であるためにR-18指定となっている。
(ウィキペディアより)
私はシネマイーラで、観ましたので無修正版です。
なんでこれがR-18かさっぱり分からないです。
生命誕生をこんなに素晴らしく描いた劇映画をこの時初めて観ましたね。
市井監督が実際に働いていた富山県のプラスチック工場が舞台で、
パワーのある泥臭いユーモアが、
昔のコーエン兄弟の映画に通ずるような感じがしました。
主人公が生きる力を取り戻すまでの過程は、
相当イタイのですが、それがラストの出産シーンの立ち合いで、
見事に昇華されます。グッときました。
DVDも出ています。パワーに溢れたおススメの作品です
監督と早苗さんと生まれた瞬間が映画デビューの息子さん
『箱入り息子の恋』も、
なんか、オサレな恋愛コメディーかな、
などと思って観ると、たまげるかもしれないです。
この作品も破壊的なパワーを持った熱い映画です。
星野源初主演だそうですが、素晴らしい演技です
実は彼の出演作品『69 sixty nine』(2004年)脚本:宮藤官九郎、監督:李相日
69 sixty nine [DVD]/
妻夫木聡,安藤政信,金井勇太
『ノン子36歳(家事手伝い)』(2008年)監督:熊切和嘉 脚本:宇治田隆史
ノン子36歳(家事手伝い) [DVD]/坂井真紀,星野源,津田寛治
『少年メリケンサック』(2009年)脚本・監督:宮藤官九郎
少年メリケンサック スタンダード・エディション[DVD]/
宮崎あおい,木村祐一,勝地涼
これは全部観ています。
星野源ファンには申し訳ないのですが、
彼の印象が強く残っているのはノン子だけでした。
今回の星野源はスゴイです。
走る、暴れる、叫ぶ、泣く、よじ登る...
2度の大アクシデント、ラブ・シーンもありの大活躍。
これは、昨年6月中旬~7月中旬に撮影されているので、
彼が作年12月22日に、くも膜下出血と診断されて活動を休止する前です。
今年2月から活動再開して、
今回の映画の宣伝イベントの様子を見ても元気そうで何よりです。
この舞台挨拶の中で、
病を経験したことで生を実感した思いを語っている下りは
ファンならずともグッときますので、ぜひご覧ください
果たして今の30代男性、
例えば非正規雇用の過酷な労働条件で働いている人たちに、
人を好きになるエネルギーが残っているだろうか。
欲望のない!?薄い!?草食系男子に、
恋愛パワーは出せるのだろうか。
考えると、ちょっと無理かしらと思えます。
しかし、市井監督は、
身体性を重視する人ですから、
フィジカル・エネルギーの発露をこれでもかと描いて見せます。
ゲームやネットなどの二次元的世界から、
出て来て現実世界の生身の身体性を取り戻そう
と、メッセージしています。
恋すれば傷つくこともある、
格好悪いこともある、
でもその経験が人生を豊かにする。
それを、従来の恋愛ドラマのパターンをあえて外した描写で
描こうとする意志に監督の才能を感じます。
市井監督は元お笑い芸人で、髭男爵の一員でした。
お笑いをやめたことは正解だったと自分でも考えてみえますが、
映画作家になるまでの道のりは大変だったようです。
笑いにも身体性を大切にしていたり、
人間の一所懸命さが滑稽に見えることへの愛があり、
人間臭いユーモアのセンスに私は好感が持てます。
星野源演じる、天雫(あまのしずく)健太郎の両親が、
平泉成と森山良子で、とてもイイ味出しています
盲目の女性今井奈穂子を演じた夏帆も熱演しています
ただ透明感のあるか弱いヒロインではなく、
芯は強く、自分のフィジカルな欲望にも率直になって行きます。
市井監督が『天然コケッコー』のイメージが強くて選んだそうです。
奈穂子の両親は大杉漣と黒木瞳が手堅く演じています
他の脇役の人たちもコメディー感をピンポイントで盛り上げてくれます。
石橋貴明の娘、穂のかは、『アンを探して』
アンを探して/
穂のか ダニエル・ピロン 吉行和子 ロザンナ 紺野まひる 高部あい,Daniel Pilon ...
でしか観たことがなかったのですが、
今回のコメディエンヌぶりは笑わせてくれました。
市井監督は『無防備』は私的で得意な作品だったので、
それ以前の観ている人が楽しんでくれることを重視していた
自分らしさを思い出してこの作品を作ったそうです。
『無防備』以降、もっとも変わったのは、
人間を決して一辺倒には描きたくないということだそうです。
あるシーンを観ていて自分は笑っているのに、
隣の人は泣いているということがあってもいいと。(パンフより)
確かに私は面白いなと笑っていたシーンで、
泣けた~と、後で話していた人がいました。
この映画の原案は
黒沢清監督の『トウキョウソナタ』の脚本家、
オーストラリア人のマックス・マニックスです。
(ゲイリー・オールドマンが出ているのに私が観なかった
珍しい映画『レイン・フォール/雨の牙』の脚本・監督)
彼の脚本を劇団ONEOR8の作・演出家田村孝裕が、
書き直し、
それをまた市井監督が大胆なアレンジをして書き直しました。
この作品のキャラクター設定は、
パラサイト・シングルで彼女いない歴=年齢の35歳の童貞男と、
盲目の美しい女性になっていますが、
これは、見た目で人間を判断しないで、
本当の心のふれあい、身体的なふれあいを求める恋愛の形を、
コメディー・ドラマにするための演出であって、
よくある、障碍のある人との恋愛ものの定石を使いながら、
パターンを破壊して行く高等戦術とみました。
描かれることに紆余曲折があり、
まっすぐでないぶん、
却って、恋する心の力のベクトルの方向はずれず、
自分も相手も周囲の人も変えていく、ということが、
俯瞰的にしっかり描かれていると分かります。
いろいろな観方のできる作品だけど、
ストレートに生きる力の発露を促している作品です。
最近なかなか巡り会えないパワーと破壊力のある日本映画として、
ぜひおススメしたい作品です
音楽は高田渡の息子の高田漣。
エンディングには細野晴臣が歌う「熱の中」が流れます。
音楽のセンスが良いです
少しだけ残念なのは、コメディーだし、
90分前後の尺にまとめられていたらもっと良かったと思います。
また、事務所が許さないだろうけど、
ラブ・シーンは夏帆もちゃんと脱げばいいのに。
星野源が舞台挨拶で「(自分の)裸が綺麗だよ(笑)ってことでもいいので、
ぜひ、この映画をススメて欲しいです」
と、言っていましたが、
彼の素っ裸の演技には拍手したいです(笑)
ホントに頑張っています。
箱入り息子の恋 オリジナル・サウンドトラック/ビクターエンタテインメント
『モテキ』で麻生久美子が吉野家で朝一人で
牛丼大盛りを食べるシーンが印象的でした。
『箱入り息子の恋』も初デートが吉野家、
終盤にまた、吉野家でグッとくるシーンがあります。
8日に初日のサービスで、吉野家の牛丼並盛無料券が配られました。
私は自分でも時々牛丼作りますが、
吉野家の牛丼もたまにはいいですね。
戴いた無料券で、娘と2人でお昼にしました。
これ、280円ってホントにコスパ高くないですか。
箱入り息子の恋 (ポプラ文庫 日本文学)/ポプラ社
↑監督と奥さんで女優の今野早苗さんが共著の小説
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