はじまりのみち
TOHOシネマズ浜松
加瀬亮、原恵一監督舞台挨拶付先行上映で鑑賞
↓予告動画はこちら
『二十四の瞳』、『喜びも悲しみも幾歳月』、『楢山節考』など
数々のヒット作を生み出し、盟友・黒澤明監督と共に、
国民の人気と評価を二分した監督・木下惠介。
松竹では、木下惠介監督が生誕100年を迎える記念すべき今年、
木下生誕100年プロジェクトを立ち上げ、
多種多様な取り組みを展開し、そのプロジェクトの中核をなすのが、
映画『はじまりのみち』。
監督には、日本アニメ界の第一人者、原恵一が初の実写映画作品として、
監督・脚本を手がけます。
(You Tubeの説明より)
戦時中、木下惠介監督が病気の母を疎開させるため
リヤカーに乗せて山越えしたという実話を軸に、
戦争という時代の荒波に巻き込まれながらも
互いを思いやる母と子の情愛を描く。
『河童のクゥと夏休み』『カラフル』
などで知られる日本アニメ界で著名な原恵一が監督を務め、
初の実写映画に挑む。若き木下恵介役には加瀬亮、
母たまを田中裕子、
恵介の兄・敏三をユースケ・サンタマリアが演じる。
戦時中、監督作『陸軍』が戦意高揚映画でないと
軍部からマークされてしまった木下恵介(加瀬亮)は、
次回作の製作が中止となってしまう。
そんな状況にうんざりした彼は松竹に辞表を出し、
脳溢血で倒れた母たま(田中裕子)が
治療を行っている浜松へと向かう。
戦況はますます悪化し山間地へと疎開すると決めた恵介は、
体の不自由な母をリヤカーに乗せ17時間に及ぶ山越えをする。
(シネマトゥデイより)
出演:加瀬亮
田中裕子
濱田岳
ユースケ・サンタマリア
斉木しげる
光石研
濱田マリ
山下リオ
藤村聖子
松岡茉優
相楽樹
大杉漣
ナレーター:宮崎あおい
昨年のはままつ映画祭で、
木下惠介監督作品『陸軍』と『楢山節考』を観ました。
『陸軍』1949年/木下惠介監督/伝説のラストシーンは圧巻!はままつ映画祭で観た映画その4←記事リンクあり。
『楢山節考』田中絹代の壮絶演技!木下惠介監督/1958年/はままつ映画祭で観た映画その1←記事リンクあり。
『陸軍』を観ていたことで、今回感動が深まったと思います。
↓これが伝説のラストシーン
出演:笠智衆
田中絹代
東野英治郎
上原謙
杉村春子
三津田健
星野和正
長濱藤夫
信 千代
細川俊夫
佐分利信
佐野周二
原 美保 他
『陸軍』解説
西南戦争から日清・日露の両戦争、
さらに日中戦争に至る富国強兵政策にダブらせて描く、
福岡のある一家の3代にわたる大河ドラマ。
田中絹代が出征する息子を捜し、
行進する部隊を追っていくラストシーンは感動的である。
ただし本作で木下惠介は軍部からにらまれる結果となった。
(ぴあ映画生活より)
『陸軍』を上映した日に大林宣彦監督の『この空の花~長岡花火物語』の
上映と講演がありました。
『シネマ・ゲルニカ小論。―芸術的ジャーナリズムとしての映画。』
映画祭のパンフに大林監督が寄稿された文章から、
少し長くなりますが、
木下監督の事を書かれた部分をご紹介します。
木下恵介監督は、日本の大平洋戦争敗戦後を、
やがて米軍による占領下からの独立、
更には高度経済成長期の到来によるテレヴィの時代に至る
我が国の映画の黄金期を、僚友黒澤明監督と共に支えた代表的映画作家であり、
その人気は正に“国民的"であったが、
それ故に“文部省推薦のセンチメンタルな作家"と椰楡される事も、ままあった。
抒情的に過ぎるという錯覚を生んだのは、
木下さんの類希な映画センスの洗練故にであり、
文部省的と感じられたのは、
木下さんに信じるものと伝うるべきものとが、
確固としてあったからである。
黒澤さんが「木下君はリアリストだよ。
僕の方が余程おセンチな人間だよ」とよく仰っていたが、
木下恵介という作家は、正しく反骨精神に富み、
実験精神の横溢した、国民の側に常に立って物申そうと、
映画の力を最大限に使って試み続けた、
未来に繋る映画道を極めようとの強い意志をお持ちの、
“映画ジャーナリスト"でこそあった、と僕などは考えているのです。
今回上映される「陸軍』(44)も、
戦時下の軍部指導による“戦意昂揚映画"であったにも関わらず、
いま見直せば、
戦争による国民の悲しみを描いた“反戦映画"である。
この戦争で日本と日本国民が例え滅亡し果てても、
いつか未来の世に誰かが何処かでこの映画を発見し、
我が思いを受け止めてくれるだろうとの、
芸術家の覚悟が此処にはあり、
故にあの戦争の悲劇を永遠に風化させぬ、
「芸術のジャーナリズム」として、
この映画はいま、此処にあるのです。
(中略)
芸術とは、少年の心が描くもの。
木下先輩も、永遠に、「ヴェテランの少年」
として、映画の冒険を試みていらっしゃいましたねえ。…
○●○●○●○●○●
『はじまりのみち』は、木下監督贔屓を公言していた
原監督自身が好きな作品の中から厳選した13本の木下作品から、
引用したシーンがあります。
どこを使うかもすべて原監督が決めています。
それが映画の3分の1くらいあった印象です。
これは、ある意味ずるい!?と言えるかもしれません。
でも、木下生誕100年プロジェクト作品ですから、
私はこの引用シーンが、木下作品の素晴らしさを伝えて、
映画を観た人が木下作品を観たくなる、
ひとつの素敵な表現だと感じました。
私も、観ていない作品が殆どでしたから、
猛烈に観たくなりましたよ(笑)
上原謙、佐田啓二、坂東妻三郎、森雅之、仲代達矢、加藤剛...
高峰秀子、田中絹代、原節子、岡田茉莉子、乙羽信子、小林トシ子...
最後は、大原麗子で泣かせてくれます。
素晴らしいシーンばかりで、涙、涙でした。
木下作品の偉大さも、過激さも堪能できます。
ドラマ部分では加瀬亮が木下監督を熱演
顔は木下監督と似ていませんが、
母役の田中裕子とは似ていて、親子に見えます。
↑このシーンは本当に感動的で素晴らしいシーンです
母の顔についた泥を拭いて、髪も綺麗に整えてあげるのですが、
そのときの周りの人たちの表情にも注目して下さいね。
一緒に山越えする便利屋の濱田岳が、
本当に味のあるいい演技をしています
本年度の映画賞の助演男優賞候補に必ず上がってくると思います。
(私は『戦争と一人の女』の村上淳と両方にあげたい)
そして、田中裕子も素晴らしいです
助演ですが主演女優賞候補ではないでしょうか。
殆どセリフがなく、表情で語る演技が絶品です。
ここまでの素晴らしい田中裕子は、『火火』以来です。
木下正吉を、再び木下惠介監督にさせる、母の愛が胸を打ちます。
セリフのあるそのシーンはもうボロ泣きでしたョ。゚(T^T)゚。
(同じ2005年の『いつか読書する日』も良かったデス。)
『火火』 監督: 高橋伴明
火火 [DVD]/
田中裕子,窪塚俊介,黒沢あすか, 池脇千鶴, 遠山景織子
『いつか読書する日』 監督: 緒方明
いつか読書する日 [DVD]/
田中裕子,岸部一徳,仁科亜季子
私は今、浜松に住んでいますが、
実は遠州弁は話せません(笑)
出身地の三河弁は得意なのですが。
浜松市天竜区出身の斉木しげるは、
やはり北遠が舞台の映画『果てぬ村のミナ』にも出演していて、
当然ながら言葉に違和感がありませんでした。
他のキャストは多少違和感を感じる部分もありましたが、
我慢!?できる範囲内でした。
今も実在する澤田屋旅館の夫婦役の光石研と濱田マリの、
夫婦喧嘩のシーンでは、
私は夫が北遠出身であるのにもかかわらず、
何を言っているのかさっぱり分かりませんでした。(´д`lll)
過酷な山越えの、どしゃぶりの雨のシーンの撮影は、
キャストもスタッフも大変だったそうです。
実際の木下監督たち一行の目的地が、
浜松の市街地からどれだけ遠い山の中なのか、
ご紹介しますね。
↓地図のカチンコ持った人の下にある、
勝坂小学校の所まで行ったのです約60kmですΣ(゚д゚;)
ひとつ残念に思ったのが、
宮﨑あおいのナレーションの声。
『二十四の瞳』を思わせる、
出演シーンもありますが、セリフはありません。
『舟を編む』でも険があるのが気になりましたが、
働きすぎじゃないですかね。
この作品のナレーションの声も、
落ち着き感を出そうとしたのでしょうけど、
なんだか、暗くて不機嫌ぽい声に聞こえて、
作品に合っていない感じがしました。
声フェチの私はナレーションの声もとても気になってしまいます。
TOHOシネマズ浜松での舞台挨拶では、
加瀬亮も原監督も仕上がりに自信があるとのことでした。
加瀬亮は華奢な人でした。
とても生真面目そうに感じました。
昨年11月にロケしたそうで、
浜松は気候も人も暖かかったと言われてましたが、
お世辞かな!?
東京での完成披露試写会には、
木下惠介監督の弟の作曲家木下忠司さん(97歳)が浜松から駆けつけ、
加瀬亮に花束を渡し、苦労をねぎらい、
観客には「この映画を愛して下さい」と語りかけたそうです。
(ツィッタ―で、これって逆じゃない!?とつぶやいていた人がいました)
木下忠司さんは木下映画の殆どの作品の音楽を担当し、
阪東妻三郎主演の『破れ太鼓』には出演もしています。
(この作品の試写に来た阪東妻三郎の息子田村高廣が、
木下監督と出会い、俳優になるきっかけとなったそうです)
木下忠司さんは私の娘の高校の大先輩です。
水戸黄門の歌が一番有名でしょうか。
木下作品以外の仕事も大変多いです。
木下監督の妹さんは脚本家の楠田 芳子さん。
木下作品のカメラマン故楠田浩之氏が夫です。
『破れ太鼓』で、阪東妻三郎がカレーを食べるシーンは
『はじまりのみち』でポイントになるシーンです。
この作品で映画デビュー。
木下監督が命名した役名三國連太郎を芸名としました。
木下惠介生誕100年記念映像
映画『楢山節考』オリジナル予告編(原恵一監督)
日本映画界をけん引する3人の監督がそれぞれ、
木下恵介作品のデジタルリマスター版オリジナル予告編を製作。
木下恵介生誕100周年記念事業の一環として、
木下作品を知らない若い映画ファンにも
今なお色あせることのない名作群を広めたいという思いから
今回の企画が実現した。
映画『カルメン故郷に帰る』オリジナル予告編(本木克英監督)
映画『二十四の瞳』オリジナル予告編(橋口亮輔監督)
完成披露試写会で
原監督は木下監督を
「叙情的なだけでなくロックでパンクなとんでもない人」と評し
「木下作品の過激な部分がこの映画にも入っていると思います。
ここにいる人たちもみんな、ロックな人たちで
『生ぬるいものを作ったら承知しないぞ』
というのに導かれて作りました」と胸を張る。
(YOMIURI ONLINEより)
浜松には『木下惠介記念館』があります。
また、レポートできたらいいなと思います。
サックとレビューを始めるつもりが、
また長くなってしまいました。
この作品は映画ファンは必見だと思いますョ
映画を観てあまり泣かない私ですが、
この作品はボロ泣きでした。
原恵一監督の木下惠介監督作品への愛が詰まった作品です
今日からもう6月ですね。
今月は1歳年をとってしまいます~σ(^_^;)
ブログはやりたいことたまりすぎで困ったナ。
読んで下さってありがとうございましたランキングに参加してます←これをクリックしてもらえたらうれしいです
木下惠介監督
阪東妻三郎と木下忠司さん
『陸軍』の田中絹代』
先日亡くなった『善魔』(1951)での三國連太郎さん