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軍旗はためく下に 感想 傑作!!深作欣二監督・脚本、脚本:新藤兼人、長田紀生。左幸子、丹波哲郎

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『軍旗はためく下に』
Under the Flag of the Rising Sun
1972年製作 日本映画 東宝
「8・15 終戦の日によせて 反戦・社会派映画特集」
新文芸坐



監督    深作欣二
脚本    新藤兼人、長田紀生、深作欣二
原作    結城昌治
製作    松丸青史 、 時実象平
撮影    瀬川浩
美術    入野達弥
音楽    林光
録音    大橋鉄矢
照明    平田光治
編集    浦岡敬一
助監督    片桐康夫
スチール 石月美徳

富樫勝男      丹波哲郎
妻サキエ      左幸子
娘トモ子      藤田弓子
トモ子の夫        小林稔侍
寺田継夫      三谷昇
秋葉友幸      関武志
ポール・槙      ポール牧
超智信行      市川祥之助
超智信行女房      中原早苗
大橋忠彦      内藤武敏
千田武雄      中村翫右衛門
後藤少尉      江原真二郎
堺上等兵      夏八木勲
堺上等兵女房      藤里まゆみ
等兵女房の弟      夏八木勲
小針一等兵      寺田誠(麦人)
厚生省課長      山本耕一

傑作です
\(゜□゜)/
打ちのめされました!


原作を読んで感銘した深作監督は、
自腹を切って映画化権を買いました。
これ、△の東映マークじゃありません。
企画は山本薩夫、今井正、亀井文夫たちが設立した独立プロダクション、
新星映画社に持ち込まれて、
新星映画社・東宝提携作品として製作され、
東宝が配給しました。
現在は東宝が権利を持っています。
以前ビデオ化はされましたが、
DVDは海外で発売されているだけで、
日本では発売されていません。
日本映画専門チャンネルで7月に放送されたそうです。
東宝は菊タブーを怖がっているのでしょうか。
ぜひ日本国内版を発売して欲しいです。
現在の日本映画界ではこのような映画は製作不可能でしょう。
東宝が『軍旗はためく下に』のDVDを出す勇気もないことは、
分かるんですけどね...



Under the Flag of the Rising Sun /軍旗はためく下に [Imp.../Tetsurô Tanba,Sachiko Hidari


軍旗はためく下に (中央文庫BIBLIO)/結城 昌治


この映画は以前から観たかったのですが、
今回やっと観ることができました。
いまごろ何を言ってるんだ、
こんな名作を観ていなかったのか?
と思われる方もいらっしゃるでしょうね。
私は今回やっとこの作品を観る機会に巡り会いました。
映画を観終わって、
すぐに席を立てない程、
完全に打ちのめされました。
映画をたくさん観ていても、
こんな経験は滅多にありません。
新文芸坐の大きなスクリーンで、
2014年8月15日にこの作品を観たことは、
自分の記憶に刻み込まれるでしょう。


この映画はDVDも出ていないということもあり、
あらすじを書いておきます。
核心部分を全部明確には記しませんが、
これからご覧になる予定で、
あらすじを知りたくない方は、
スルーして下さい。




冒頭全国戦没者追悼式で、
菊の花をささげる昭和天皇と香淳皇后の映像が流れます。
ここで追悼されるのは、
第二次世界大戦で戦死した軍人、軍属、
空襲や原爆で亡くなった一般市民ですが、
ここで戦死者に入っていない軍人もいることが、
字幕で流れます。

戦後26年経った1971年。
夫(富樫勝男:丹波哲郎)
とは、出征前に半年しか暮らすことができなかった
妻サキエ(左幸子)は、
夫の出征後に生まれた娘
(トモ子:成人後は藤田弓子)を、
女手一つで育てながら懸命に生きてきました。

戦後何年経っても、
夫を思い真実の追求のため行動する妻サキエを、
左幸子さんがグッとくる熱演です。



丹波哲郎さんもリスクのある役を好演。
サキエが訪ねる証言者が、
「羅生門」のようにそれぞれの立場から語る
富樫軍曹像をそれぞれ演じ分けます。



戦後彼女の元に届いた夫の死を知らせるハガキには、
「戦死」の字が消され、「死亡」と書かれていました。
どういうことかと役場の職員に問いただすと、
富樫さんは死刑にされたと言います。
1952年(昭和27年)「戦没者遺族援護法」が施行されましたが、
厚生省援護局は、サキエの遺族年金請求を却下しました。
以来毎年8月15日にサキエは、
死亡日時も分からない夫の
死の真相を知りたい一心で、
「不服申立書」を提出してきましたが
毎年却下されていました。
敵前逃亡により処刑されたと言っても、
軍法会議にかけられた証拠もなく、
「死亡者連名簿」が根拠にされていました。
サキエはその名簿が復員の数合わせで適当に作られたという
中隊長の証言の手紙を持っていましたが、
厚生省の役人は証拠にならないと言います。
ただ厚生省としても何もしていなかったわけではなく、
富樫軍曹と同じ部隊にいた元帰還兵の人たちに、
ハガキで照会をしたが、
証拠になるような返事はなかった。
しかし、返事のはがきが来なかった人もいるので、
遺族のあなたが聞きに行けば、
話をしてくれるかもしれません。
と、サキエに名簿を渡します。
サキエはその返事のなかった4人に会いに行きます。



ごみ捨て場の朝鮮人部落のバラックで
豚を飼いながら世捨て人の生活をしている
元陸軍上等兵寺島継夫(三谷昇)。
彼は富樫軍曹は命の恩人だと語ります。



今は漫才師をしている
元陸軍伍長秋葉友幸(関武志)。

コント・ラッキー7(関武志、ポール牧)の
コントの舞台が映されます。

関武志が長年経ってから帰還して、
日本の敗戦を信じない兵隊を演じて笑いを取っています。
映画は横井庄一さんや‎小野田寛郎さんの帰還の前に
撮られているので、
彼らの事ではないですが、
2人の帰還は私も子ども心に良く覚えています。


元陸軍憲兵軍曹越智信行(市川祥之助)
彼は戦争中の嫌な記憶から逃れるために、
アルコールに頼りバクダン
(工業用アルコールが横流しされたもの)
で、目を潰してしまい按摩になっていました。
(彼の妻は深作監督夫人の中原早苗)


それぞれの証言では夫の死の確証は
得られなかったものの、
(何か隠している風な人もいました)
終戦が近いパプアニューギニアでの日本兵の
悲惨、残酷な実態が語られます。
兵隊が食糧難から芋を盗んで銃殺されたり、
日本兵同士の殺し合い、
人肉食もあったことなど...


復員後高校教師になり、
アメリカの軍機が爆音を立てて発着する側の高校で
教壇に立っている元陸軍少尉大橋忠彦。(内藤武敏)
彼からは、謎が解かれるきっかけになる話を聞かされます。


富樫軍曹らの処刑を命じた
師団参謀の千田少佐(中村翫右衛門)は、
戦後は戦犯を免れて帰還し、
東南アジア開発公団の役員を務めた後、
悠々自適な引退生活をしていました。
このことを教えてくれた大橋が、
「もっともA級戦犯が総理大臣に
なってしまうくらいですからね」と言います。
(そして、その人の苦労知らずのぼんぼんである孫が、
日本を、なんとなく緩い耳触りの良い言葉を使い、
真綿で首を絞めるようにファシズムを浸透させ、
アメリカと一緒に戦争もしちゃう国、
にしようとする勢力に担がれていい気になっていますよ。
安倍総理は『軍旗はためく下に』必見!)

千田は、米兵捕虜の処刑を
後藤少尉(江原真二郎)に命じたことは隠し、
あれは後藤少尉の責任で自分は知らなかったと言います。
富樫軍曹と2隊員を軍法会議にもかけず処刑したことは、
実は米兵殺害を後藤少尉に命令した事実を、
自分の保身のためにもみ消す意味もあったのですが、
やむをえなかったことだともっともらしい理由をつけ、
サキエに慇懃無礼に話します。



戦争中の専横的な千田少佐が、
戦後いかにも良識人ぶった人間になっているのを、
中村翫右衛門が憎々しいまでに
説得力のある演技で見せてくれます。



学徒動員であるため部下になめられまいと
必死であった小隊長後藤少尉(江原真二郎)は
隊員を暴力で虐待して威厳を保とうとしていました。
そして終戦の知らせを聞くと気が狂ってしまい、
師団本部からは集合命令が出ているのに、
隊員に無謀な突撃命令を出します。
富樫軍曹たち隊員の訴えも全く聞こうとしません。
困った富樫軍曹たちは究極の選択をします。
(江原さんの神経質演技、正気を失った姿も迫力ありました。)


富樫軍曹と行動を共にしていたのは5人で、
銃殺されたのは
富樫軍曹、
堺上等兵(夏八木勲)
小針一等兵(寺田誠(麦人))
の3人であること、
銃殺の現場責任者は、今は盲目の按摩師、
元憲兵の越智信行(市川祥之助)でした。
禁固刑だった中村伍長は現地で病死し、
帰還したのは寺島上等兵(三谷昇)だけでした。
実は寺島は全てを知っていたのでした。




富樫軍曹は「天皇陛下...」と言ったところで
撃たれたのですが、
「万歳と言いたかったのだろうか」
と言うサキエに、
寺島は「いえ、何か訴えたい感じでした。」
と、答えます。



映画の冒頭の方で厚生省の役人に、
「私だって天皇陛下と一緒に父ちゃんに菊の花あげたいですよ」
と涙ながらに語ったサキエでしたが、
夫の死の真相を知ったラストでは、
「父ちゃん、あんたやっぱり、
天皇陛下に花をあげて貰うわけにはいかねぇだね。
もっとも、何をされたところであんたはうかばれもしねぇだね」
と、もう涙もなく独白します。



焼け跡から急激に復興した日本の姿と、
寺島の住む取り残された朝鮮人部落。
戦場で負った精神的な傷から、
世間の変化に付いて行けなかった寺島。
自分の戦時中の行動を許せず、
自殺のように命を落とす超智。
大橋が教壇に立つ戦争を知らない世代の
高校生たちの躍動感と、
大橋の深い絶望感。
保身に成功し時流に乗ったのは
司令官であった千田だけ。
戦後日本の縮図が挿入され、
「敗戦」の上に成立した、
戦後の日本の急激な変化を
改めて深く考えさせられます。


はい、もう感動の涙とかいうレベルでなく、
胸が締め付けられて目頭が熱くなりました。
しばらく席を立てませんでした。
この作品上映時間96分でしたが、
濃密な内容で実感的にはこの尺とは思えなかったです。
新藤兼人監督の「人を突き刺し、
突き刺されて死ぬ、という兵隊の視点」が、
描きこまれているし、
『仁義なき戦い』に繋がっている、
リアルなヴァイオレンス描写もあります。
とても人気の高い『仁義なき戦い』シリーズに比べ、
この傑作『軍旗はためく下に』が、
簡単には観られないというのは、
とても残念です。

チバちゃん(千葉真一)が出演しなかったのはなぜでしょうか。
東映が許さなかったのか、
スケジュールがあかなかったのか?


↓『軍旗はためく下に』の予告動画。
 クライマックスシーンが入っているため、
 これから全く白紙の状態で鑑賞したいと考えてみえる方は、
 見ない方が良いかもしれません。



前回『また逢う日まで』の記事で、
次の記事は2本立てで観た
『私は貝になりたい』にする、
と書きましたが、
昨日8月15日に観た、
『軍旗はためく下に』が余りに衝撃的で、
素晴らしい作品であったため、
こちらを先に書きました。
ちなみに今回の2本立てのもう1本は、
市川崑監督の力作『野火』
(1959年、大岡昇平原作、船越英二主演)でした。
塚本晋也監督の新作である再映画化の『野火』が、
8月27日から始まるヴェネチア国際映画祭のコンペ部門、
9月のトロント映画祭への出品が決まっています。


ゆきゆきて、神軍 [DVD]/
奥崎謙三


蟻の兵隊 [DVD]/
奥村和一


日本鬼子(リーベンクイズ) 日中15年戦争・元皇軍兵士の告白 [DVD]/
久野綾希子




『かしこい狗は、吠えずに笑う』



『かしこい狗は、吠えずに笑う』
北海道フィルム・アートフェスティバル
会場:札幌シアターキノで上映
8月31日(日)
9月1日(月)


400表



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渡部亮平監督応援していますビックリマーク
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