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聖者の午後 感想ラテン!ラテン!ラテン!in横浜シネマジャック&ベティで他7本と上映中!

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『聖者の午後』
2012年製作 ブラジル映画
Cores 
ユーロスペースで鑑賞(4月)

ラテン!ラテン!ラテン!in横浜
横浜シネマジャック&ベティで8月1日(金)まで上映中!
大阪:第七藝術劇場、京都:京都シネマでも、
8月1日(金)まで上映中!












↓『聖者の午後』予告動画 音楽聞いてみてね音譜


監督 フランシスコ・ガルシア
脚本 フランシスコ・ガルシア 、
ガブリエウ・カンポス
撮影 アルジロ・バルボサ
製作     アンドレ・ジェヴァエルチ
       サラ・シルベイラ
音楽 ウィルソン・スコルスキ
編集     フランシスコ・ガルシア
       アンドレ・ジェヴァエルチ
美術     モニカ・パラッゾ
録音     アリエル・エンリキ

出演:
ペドロ・ジ・ピエトロ     ルカ(31歳)
アカウア・ソル     ルイス(29歳)
シモーネ・イリエスク      ルアラ(30歳)
マリア・セリア・カマルゴ     ルカの祖母マルレーネ
ギジェルメ・レメ     ホジェル(ルアラの勤める熱帯魚店の客)
トニコ・ペレイラ     ニコウラ(ルイスの上司)
グラーサ・ジョ・アンドラージ     レナ(ルイスの下宿の管理人)

『聖者の午後』です「聖者の行進」じゃないですョ。
この映画は4月にユーロスペースで観ました。
感想を書きそびれていました。
同じAction Inc.(代表比嘉セツさん)配給の
『幸せのバランス』の感想書いたときに、
幸せのバランス 感想
マイケル・ファスベンダー似ヴァレリオ・マスタンドレアが
転落生活公務員を好演
←クリックで記事読めます!

続けて書こうと思いつつ時が経ってしまい、
ワールドカップの時にと思ったのにまた...
で、今、シネマジャック&ベティで公開中ですので、
書いておきます。
ラテン!ラテン!ラテン!in横浜で観た作品の感想も、
一緒に書こうと思っていましたが、
今、3作観たところで、
それぞれとても面白く、
長くなりそうなので、とりあえず
新作で今、大阪と京都でも上映されている
『聖者の午後』をご紹介します。

私はラテン映画が大好きです。
ブラジル映画祭でも毎年映画を観ていますが、
この映画は、今まで観たことがないタイプでした。
社会派のドキュメンタリー映画を別にすると、
私が観てきたブラジル映画は、
ハリウッドを意識したエンタメ性のある、
ドラマ、アクション映画や、サッカー映画、
音楽伝記映画、音楽、サッカードキュメンタリーが多かったです。
中には地味なドラマで面白い作品もありましたが、
(完全犯罪映画『ジューサーの考察』って大好きなんです。)
色々観てきましたが『聖者の午後』ほど
オフ・ビートな作品はなかったです。
サンバもボサノバもMPBも使われず、
ウィルソン・スコルスキの
インダストリアルなロックが使われています。
フランシスコ・ガルシア監督がメッセージで、
今回インディーズのブラジル映画を日本で観られるまたとない機会です。
日本のインディーズ映画がブラジルで公開される機会もないので、
私はもっと見てみたい。と語っていました。
ユーロスペースでの封切時に監督が来日して、
観客とのQ&Aの企画もありました。
私はまだ川崎に越したばかりで、
参加できず残念でした。
ここ←クリックで、
フランシスコ・ガルシア監督と
三宅唱監督(『Playback』)の対談が読めます。
『Playback』←クリックで私の記事です。

フランシスコ・ガルシア監督は、
ジム・ジャームッシュがとても好きだそうでが、
私の一番好きなジョン・カサヴェテスや、
アキ・カウリスマキも好きだそうです。


今年のワールドカップ、
2016年のオリンピック開催地として、
大きな発展をしているブラジルなのですが、
この映画の主な登場人物は、
そんな表舞台のブラジルでなく、
発展の恩恵など何も受けていない
大都市サンパウロに住むアラサーの3人です。
この映画は、
労働党で、貧困層への支援を積極的に行いつつ、
現実的な経済政策を行ったルーラ前大統領の
「私たちは低迷期を脱しました。
経済成長により失業率も減りました。」
という、誇らしげな演説の様子がTVで流れる所から始まります。
ルーラ大統領の登場で、
ブラジル経済は急成長し中産階級が増大。
その中産階級がリーマン・ショック以降没落し始め、
社会保障よりもW杯やオリンピックのための投資に
多くの予算が使われることに不満を持つ人々が、
ツィッターなどのSNSでの呼びかけを利用し、
大きな政府批判デモも起きるようになりました。
この映画の3人は、
貧困層ではありません。
中の下にいる若者です。
ルアラ以外の男2人は定職がありませんので、
携帯もPCも持っておらず、                         
デモの呼びかけすら届きません。
ルイスは薬局で横流しがばれてバイトの職を失い、
下宿代を払えなくなります。


上司のニコウラが恫喝まがいの
脅しをかけてきます。


ルカは一応タトゥーショップをしているのですが、
客は来ません。
まあ、こんなマジックでの
落書きみたいなセンスのないタトゥーですからねェ(´□`。)↓


ルカはおばあちゃんの年金を頼りに生活しています。
おばあちゃんには気を遣い、
3人とも頭が上がらない様子。
おばあちゃんはセリフは少ないけど、
とてもイイ味出してます。
若者たちにつかず離れず見守っている優しさがあります。



ルアラは熱帯魚店の店員ですが、
この店も繁盛している様子はなく、
お金の余裕はない。




この国際線のパイロットだという男が、
ルアラに説教したり粉をかけてくる。


彼女はこの生活から抜け出せないのは、
お金も学歴もないからと思っている。
確かにブラジルは学歴社会で、
どんな仕事に就くにも学歴がものをいう。
ブラジルから日本へ出稼ぎにきた両親と、
日本にいた日系ブラジル人の若者が、
日本では中学や高校をドロップアウトしてしまっても、
リーマンショックで両親が日本での職を失い、
ブラジルに帰国してから、
学校に通って学び直しをするのです。
そんな彼らが描かれたドキュメンタリー。
↓『孤独なツバメたち~デカセギの子どもに生まれて~』


孤独なツバメたち~デカセギの子供に生まれて~ [DVD]/
佐竹エドアルド,鈴木ユリ,佐藤アユミ・パウラ


で、『聖者の午後』の
3人は、この、
『孤独なツバメたち~デカセギの子どもに生まれて~』
に出てくる子たちのようにもう若くはない。
なんとかしたくてもどん詰まりなのです。
お金も、才覚も、チャンスもない。
非正規雇用の人口が多い日本の同年代の
若者たちの状況と似ています。
「夢に向かって努力しろ!ここから抜け出せ!
頑張れば何とかなる!チャンスをつかめ!」
と、説教を始める大人はブラジルにもいるのです。
チャンスなんてないのに。

この映画は大きな事件とか、
転換とかありません。
このどん詰まりなアラサー3人組の生活が、
淡々と描かれます。
真面目な方はダルい描写に
イライラしてしまう人もいるかもしれません。
でも、『幸せのバランス』もそうだったのですが、
「中流に属する層のなかなか見えにくい貧困」
が描かれています。

『シティ・オブ・ゴッド』は、
リオのスラム地域のストリートチルドレンの世界を描き、
評価の高い衝撃作です。
↓『シティ・オブ・ゴッド』予告動画


シティ・オブ・ゴッド [DVD]/
アレッシャンドレ・ロドリゲス,レオンドロ・フィルミノ・ダ・オラ


私は『シティ・オブ・ゴッド』も好きですが、
衝撃的なことなど何も起こらない、
対極にあるような『聖者の午後』も
都市に住む若者の新たな貧困を描き、
マスメディアの報道からは見えない、
ブラジルの現実を切り取っていて興味深いです。
フランシスコ・ガルシア監督は、
『シティ・オブ・ゴッド』の脚本家、
ブラウリオ・マントヴァーニの脚本の短編映画も撮っています。



今年はモノクロ映像の新作を結構観ています。
(旧作はたくさん)
『ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅』
『チスル』
『コーヒーをめぐる冒険』
『ブランカニエベス』
そしてこの『聖者の午後』。
この何も起こらない世界を、
モノクロの透明感のある繊細な映像で描いています。
映像はパキッとしていてダルくなく、
音楽とともにこの映画を、
とても印象深くしています。

浜松にはブラジル人が多いです。
コミュニティFM聴いていた時、
ブラジル人の若者が、
「仕事もお金もなくて、仲間と何しよう?となった時、
とりあえず海に行こうかって。
林みたいなところにフルーツがなっていたりするから、
それを食べればいいし。
悲観して絶望したりはしない。」と言っていました。
『聖者の午後』の3人もおばあちゃんも連れて海に行きます。
でも、途中で車がエンコしてしまい家に帰ってくる羽目に...
イイことなし...
とにかく都合よくイイことなんか何も起こってくれません。
終盤激しい嵐が続きサンパウロの都市のインフラが、
壊れていきます。
ゲリラ豪雨の被害で混乱する東京の、
都市の脆弱さに通ずるものがあります。
フランシスコ・ガルシア監督は
1980年サンパウロ生まれで、登場人物たちは同世代。
監督の言葉(パンフより)
いつの時代にも、若者は、
退屈からの脱却を求め、
独りになることに恐怖を覚えます。
楽しむことを強いられる社会の中では、
快楽の欠如にこだわる関係が作られます。
物事が、上手くいっているように見えても、
「形あるものは、全て無に帰す」
その時が来て、初めて何が大切かに気付くのです。

監督は地球の裏側にあるサンパウロと、
日本の都市の
似た所、違う所を観て欲しいとも語っています。

ラテンの明るさとは縁遠い作品ではあるけど、
独特の「間」がユーモラスな雰囲気も出していて、
決してへヴィーで暗い映画ではないです。
観てる時は、
ホントに変わったタイプの
淡々としたブラジル映画だなァ。
と感じましたが、
いつまでも頭の隅に残っていて、
妙に後を引くんですよ。
とてもユニークな作品なので、
「観たことがない新鮮な映画」
を、求めている方にはおススメですね。
ワールドカップの報道では見えない、
ブラジルの姿がここにあります。
ジム・ジャームッシュの
初期の作品好きな方にはおススメしたいです。

ルアラのシモーネ・イリエスクと、
ルイスのアカウア・ソルは、
無名の舞台俳優を劇団でスカウト。
ルカのペドロ・ジ・ピエトロは、
俳優ではなく、美術監督だそうです。








ルカの部屋にたむろする3人。
壁には、クラッシュの「ロンドン・コーリング」
ジム・ジャームッシュ監督の
『ストレンジャー・ザン・パラダイス』の
ポスターが貼ってありました。







ルアラの家は空港の滑走路のそばですが、
どこにも飛んでは行けません...





シモーネ・イリエスク、フランシスコ・ガルシア監督
ペドロ・ジ・ピエトロ


↓フランシスコ・ガルシア監督のメッセージ


ルアラ役のシモーネ・イリエスク主演の
「Riocorrente」(2013)は
第37回サンパウロ国際映画祭などで
評価され、
第43回ロッテルダム国際映画祭(2014年)
のタイガーアワードに出品されました。
(タイガーアワード受賞は、
日本の池田暁監督の『山守クリップ工場の辺り』でした。
「PFFアワード2013」で、審査員特別賞の作品)


↓Riocorrente トレーラー





パンフレットを読んだら、
比嘉セツさんはこの映画を観て、
北京オリンピックから取り残された地方の若者を描いた
ジャ・ジャンクーの『青の稲妻』(2002年)を
思い出されたそうです。
懐かしい作品です。
青の稲妻 [DVD]/
チャオ・タオ,チャオ・ウェイウェイ,ウー・チョン


私が思い出したのは、
もっと古い、
グレッグ・アラキ監督の
『途方に暮れる三人の夜』
(1987年に製作1992年日本公開)です。
ポスト・パンク時代の若者たちの
やるせない虚しさを描いた作品。
当時自分の心情にもフィットした作品でした。





ついでに前から書きたかったので、
少しご紹介します。
グレッグ・アラキ監督の新作
「White Bird in a Blizzard」
(原題:ホワイト・バード・イン・ア・ブリザード)
これ、
日本公開してくれないかなあ。
今年のサンダンス映画祭で
プレミア上映されました。




シャイリーン・ウッドリーと
グレッグ・アラキ監督。監督若いな~って、
まだ54歳です。途方に暮れる~は28歳の時の作品。


シャイリーン・ウッドリー、エヴァ・グリーン、
アンジェラ・バセット、クリストファー・メロニ、
ガボレイ・シディベ、シャイロ・フェルナンデス、
トーマス・ジェーン 他。

シャイリーン・ウッドリーは16歳の少女で、
ある日母のエヴァ・グリーンが
家族を残して失踪してしまうという
スリラーです。
グレッグ・アラキ監督の作品、
なかなか一般公開されないので、
今回は観たいナァ。
↓「White Bird in a Blizzard」公式トレーラー





ラテン!ラテン!ラテン!in横浜
シネマジャック&ベティで、
『ルイーサ』
『地中海式 人生のレシピ』
『ル・コルビュジエの家』
観ました。
それぞれ味があってとても面白かったです。
本当は全部観たいのだけど、
後2本は見る予定です。
比嘉セツさん(Action Inc.)のセレクト信頼してます。

今日の記事、興味持って下さる方がみえたら嬉しいのですが...
『GODZILLA ゴジラ』以外にも面白い映画、
たくさん上映してますョ。
「ラテン!ラテン!ラテン!in横浜」で観た映画、
なるべく早く紹介したいのですが、
今日は東京に映画を観に行くので、
明日になってしまうかな...
『革命の子どもたち』
『私の、息子』も良かったです。
ブログ書く時間がないデス...(TωT)


『かしこい狗は、吠えずに笑う』



『かしこい狗は、吠えずに笑う』
北海道フィルム・アートフェスティバル
会場:札幌シアターキノで上映
8月31日(日)
9月1日(月)


400表



25歳衝撃の才能ビックリマーク
渡部亮平監督応援していますビックリマーク
ぜひ、お近くの映画館にリクエストして下さいビックリマーク




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