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ある過去の行方 感想 シネフィルは必見の本年度洋画ベストテン入り濃厚な作品。ベレニス・ベジョ主演

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『ある過去の行方』
4月19日(土)公開
浜松シネマイーラでは5月17日(土)~6月6日(金)上映

Le passé
2013年制作 フランス・イタリア合作映画
試写会で鑑賞(新宿 明治安田生命ビル)







↓予告動画


イラン映画で初めてアカデミー外国語映画賞を受賞、ベルリン国際映画祭でも金熊賞を含む3冠を達成した「別離」(2011)のアスガー・ファルハディ監督が、初めて国外を舞台に撮り上げた長編作。子連れのカップルが再婚を考えるが、娘の告白がきっかけで、それぞれの過去や本心が次々と明らかになり、見えなかった真実が浮き彫りになっていく様子をサスペンスタッチに描いた。夫と別れて4年がたつシングルマザーのマリーは、子持ちの男性サミールとの再婚を予定し、新たな生活を始めていた。しかし、正式な離婚手続きをしていないため、イランにいる夫のアーマドをパリに呼び寄せる。アーマドはマリーの新しい家庭と生活を目の当たりするが、そこにはどこか不穏な空気が流れていた。長女リュシーとの関係がうまくいっていないというマリーから、娘の本音を探ってほしいと頼まれたアーマドは、リュシーの話を聞くことになるが……。主演のマリー役は「アーティスト」のベレニス・ベジョで、カンヌ映画祭女優賞を受賞。


監督・脚本:アスガー・ファルハディ

撮影:マームード・カラリ
編集:ジュリエット・ウェルフラン
美術:クロード・ルノワール
衣装:ジャン=ダニエル・ビレルモズ
音楽:ダナ・ファルザネプール
    トマ・デジョンケール
    ブリュノ・タリエール

キャスト:
ベレニス・ベジョ    マリー=アンヌ
タハール・ラヒム    サミール
アリ・モッサファ    アーマド
ポリーヌ・ビュルレ   リュシー
ジャンヌ・ジェスタン  フアッド
エリエス・アギス    レア
サブリナ・ウアザニ   ナイマ
ババク・カリミ     シャーリヤル
バレリア・カバッリ   ヴァレリア


この映画を紹介したのは昨年のカンヌ映画祭のレポートで。
もう、そろそろ1年経ちます。
今年のカンヌ映画祭は5月14~25日に開催。
コンペティション部門審査委員長はジェーン・カンピオン監督。



↑これが今年のカンヌ映画祭のポスター
フェデリコ・フェリーニ監督の『8 1/2』の1コマを使ってデザインされています。
マルチェロ・マストロヤンニが魅力的なカッコイイポスターです。
昨年はブログでカンヌ映画祭のレポートをしましたが、
今年はやらない予定です。
時間かかって大変なんで。
情報は追いかけて受賞予想はしようかと思うけど。
予想は趣味だからf^_^;


はい、昨年のカンヌ映画祭でベレニス・ベジョが女優賞を受賞した、
『ある過去の行方』を試写会で観てきました。
これ、浜松にいる時にネットで応募しておいて、
忙しかったのですっかり忘れていましたが、
川崎の住所で応募しておいたので、
ハガキ届いてそういえば応募しておいたっけと思いだしました。

見応え充分な人間ドラマ目
キネ旬洋画ベストテン入りは間違いないでしょう。


イランのアスガー・ファルハディ監督が、
イランを離れて撮った作品です。
監督はフランス語はできないそうです。
しっかりした通訳があれば自分で話すより正確ですからね。
マリー=アンヌ役ベレニス・ベジョの
別れるイラン人の夫アーマド役アリ・モッサファは、
撮影の2か月前からフランス語の勉強始めたそうです。
う~んさすがベテラン名優は言語のマスターも早くて的確なんですな。

この映画はトップの写真にいる、
ベレニス、アリ、
マリー=アンヌの今の愛人サミール役タハール・ラヒムの
3人の関係を巡る家族や周囲の人間を巻き込んだドラマです。
男女の愛、夫婦の愛、親子の愛、
それぞれの思いとすれ違いが重層的に描かれています。

ベレニスが女優賞とりましたが、
視点人物はアーマドとサミールです。
マリー=アンヌは客観描写されて
彼女が視点人物になっての、
彼女の心情の吐露はなかったかと思います。
マリー=アンヌは難しい女です。
一人ではいられない性格なのに、
相手を神経攻撃する言動を取ってしまうタイプ。
ヒステリーも強烈で、周りを傷つけてしまう。
映画に「共感」を求める人向けの映画ではないです。
会話は多いのですが、
物語の背景などの説明は少ないので
自分で考えて想像しなければならない部分が
多い作品です。
それ楽しむのが好きな人にはおススメです。

アスガー監督の映画は、浜松シネマイーラで
『彼女が消えた浜辺』
『別離』
と観てきましたが、
どちらもミステリー的要素が入っていました。
今回もあります。
しかし、正直なところ
ちょっとストーリーライン凝りすぎ捻りすぎかなァ感が
無きにしも非ずです...
話は同じ調子で流れないです。
音楽だったら転調していく感じです。
視点人物も変わりますから。
それは今迄の作品と共通するアスガー監督の特徴でもありますね。

アスガー作品の役者の演技はいつも素晴らしく、
見応え充分ですが、今回もそうです。
大人たちのそれぞれの演技、
主要3人のアンサンブル劇もとてもよかったですが、
それ以上に子どもたち3人ポリーヌ・ビュルレ、
ジャンヌ・ジェスタン、エリエス・アギスの演技が素晴らしかった。
本作でベルギー・アカデミー賞(Les Magritte du cinéma)で、
新人女優賞(Meilleur espoir feminine) を受賞したポリーヌ・ビュルレの
リアリティーのある繊細な演技はすごかった。
しかし、1番小さいエリエス・アギスのリアルな演技には
本当に舌を巻きました。
イラン映画伝統の子どもの演出の巧みな技術と監督の手法、
そのどれもが上手く融合してできた成果だと思いますが、
彼の表情や動きには釘付けでした。










ベルギー・アカデミー賞(Les Magritte du cinéma)で、
新人女優賞(Meilleur espoir feminine) を受賞したポリーヌ・ビュルレ




ポリーヌ・ビュルレは1996年生まれのベルギー人。
マリオン・コティヤールに似てる!と言われていますが、
『エディット・ピアフ~愛の讃歌~』で
10歳のエディットを演じたのがポリーヌ。
そりゃ似てる子選んでるよね。
美しく成長して増々似てきた感じ!?


『エディット・ピアフ~愛の讃歌~』で
10歳のエディットを演じるポリーヌ。


ポリーヌとマリオン


この『ある過去の行方』のマリー=アンヌ役は、
当初マリオン・コティヤールが予定されていました。
マリオンが、
『君と歩く世界』(ジャック・オーディアール監督)との関係で
出演できなくなったため、ベレニス・ベジョになりました。
マリオンは出演しなかったことを後悔していない、
べレニスの演技は素晴らしい。とコメントしています。
個人的にはマリオンのマリー=アンヌ見てみたかったですが、
マリオンだと存在感が強すぎてしまったかもとは思います。







生活に疲れた女感出していたベレニス
右のタハール・ラヒムは『預言者』の主役や、
『第九軍団のワシ』などでご存知の方も多いと思いますが、


アーマド役のアリ・モッサファも、
イランの俳優・脚本・監督もするベテランです。
奥さんは『別離』の主演女優レイラ・ハタミです。









あ、間違い探しとかしてはいけません...


この作品はとても見応えがあり、
自分の今年の洋画ベストテンにも入りそうな感じです。
私は昨年のカンヌ映画祭女優賞は、
『アデル、ブルーは熱い色』の、
アデル・エグザルホプロスと レア・セドゥかなと予想しました。
ベレニス・ベジョは繊細な表現をしていて素晴らしいと思うけど、
『アデル、ブルーは熱い色』は作品がパルムドールを取ったので、
女優賞は『ある過去の行方』にして、
作品の評価、監督の演出の評価の意味もあるのかなあ
という気もしています。
昨年のカンヌ映画祭では、
事前の評判で特にフランスでは『ある過去の行方』に期待が集まっていて、
上映後もフランスの新聞、雑誌のレビューでは、評価は高かったです。
ここまで人気だった作品が無冠ではフランスの評判に申し訳ない!?
から、主演のフランス人女優ベレニス・ベジョに女優賞が贈られたの!?
と、考えたりしました。
『アデル、ブルーは熱い色』のパルムドールは
レア・セドゥ、アデル・エグザルチョプーロスの
主演の2人に贈られたものでもあるといわれました。
『アデル、ブルーは熱い色』も、
カンヌ映画祭レポートしたときから早く観たかった。
でもまだ観ていないので、
この自分の考えに対する裏付けは取れていないので、
『アデル、ブルーは熱い色』を観たらまた書きたいと思います。

作品は前2作より洗練された印象を受けました。
カメラのマームード・カラリは、
『別離』に続いて。
彼はアッバス・キアロスタミ、モフセン・マフマルバフ、
マジッド・マジディなどイランの名監督たちと仕事をしてきた人です。
今回の陰影のあるルックも素晴らしいです。
この作品は世界的には評価されましたが、
イラン本国では今までの作品ほどヒットしなかったそうで、
イランの映画ファンには国外での仕事は複雑な思いもあるのでしょうか。


最後にラストについて少し書いておきます。
ネタバレではありません。

ラストに関してはアスガー監督の新しい方向性を感じました。
ちょっと驚きがあったというか、
意外性がありました。
驚いたというのはストーリー的にではなく、
「こうきたか」という意味で。
アスガー監督の作品は『彼女が消えた浜辺』『別離』と観て来て、
今回は、具体的な形で救いのあるラストにしてあったのが印象的だったからです。
ここまで捻りに捻って、
最後をどう収めるのかと興味津々でした。
分かりやすくはあるけれど、
撮り方が上手くとても印象的なラストになっていました。


『ある過去の行方』は、
観ることにしている方が多いと思います。
批評力のあるブロガーさんがこれから色々分析して、
解説して下さるでしょうから、
公開前の記事としてはこれくらいで、
って、また長すぎですね...σ(^_^;)

彼女が消えた浜辺 [DVD]/
ゴルシフテェ・ファラハニー,タラネ・アリシュスティ,シャハブ・ホセイニ

別離 [DVD]/
レイラ・ハタミ,ペイマン・モアディ,シャハブ・ホセイニ



『かしこい狗は、吠えずに笑う』

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★名古屋シネマテーク

4月19日(土)~25日(金)



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