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#タンジェリン感想 iPhone撮影のライブ感を堪能!徹底リサーチに基づく脚本、演出、演技が出色

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『タンジェリン』

原題:Tangerine

2015年製作 アメリカ映画

イメージフォーラムで鑑賞

 

 

 

 

 

『タンジェリン』日本版予告動画

 

子どもは見ちゃダメな

レッド・バンド・トレーラー

 

タンジェリン←クリックで公式サイトへ

 

監督・編集・共同脚本・共同撮影:ショーン・ベイカー
共同脚本:クリス・バーゴッチ
共同撮影:ラディウム・チャン
製作総指揮:マーク・デュプラス、ジェイ・デュプラス

プロデューサー:キャリー・コックス

マーカス・コックス

ダレン・ディーン

シーチン・ツォウ

クリス・バーゴッチ

ラディウム・チャン

フランチェスカ・シルヴェストリ

衣装:シーチン・ツォウ

音楽スーパーバイザー:マシュー・スミス

サウンド・ミキサー:アイリン・ストラウス

 

出演:キタナ・キキ・ロドリゲス

マイヤ・テイラー

カレン・カラグリアン

ミッキー・オハガン

アラ・トゥマニアン

ジェームズ・ランソン

 

太陽が照り付けるロサンゼルスのクリスマス・イブ。

街角のドーナツショップで一個のどドーナツを分け合う

トランスジェンダーの二人。

28日間の服役を終え出所間もない娼婦シンディは、

自分の留守中に恋人が浮気したと聞きブチ切れる。

歌手を夢見る同業のアレクサンドラは

そんな親友シンディをなだめつつも、

その夜に小さなクラブで歌う自分のライブのことで頭がいっぱい。

さらに、アルメニア移民のタクシー運転手ラズミックも巻き込んで、

それぞれのカオティックは一日がけたたましく幕を開ける!

主人公たちの日常や友情と恋愛を、

アナモレンズを装着したスマートフォンによる

斬新な撮影方法でリアルかつユーモラスに描いた本作。

監督、脚本、撮影、編集、プロデュースまでこなす

アメリカン・インディ界の気鋭ショーン・ベイカーは、

リサーチ中にストリートで出会った女性たちを役者として起用。

低予算を逆手にとった創意工夫と確かな技術力によって

世界中の映画ファンを驚かせた。

(イメージフォーラムHPより)

 

クリスマス・イヴの朝、

トランスジェンダーのセックスワーカー

シンディ(キタナ・キキ・ロドリゲス)は

ヤクの売人で恋人チェスター(ジェームズ・ランソン)

の身代わりに逮捕され

28日間の刑期を終えて出所してきた。

ロサンゼルス、ハリウッド

サンタモニカ・ブルーバードのドーナツ店で

親友アレクサンドラ(マイヤ・テイラー)に

チェスターが金髪女と浮気したと聞いて

その女(ミッキー・オハガン)を

探し出すと息巻くシンディ。

彼女たちの仕事場を流すアルメニア人移民の

タクシー運転手ラズミック(カレン・カラグリアン)

には、妻子があるが秘密の性癖があった…

 

この映画全編スマホ撮影がウリになっているけど

多分言われなければ分からない

映像クオリティの高さ。

iPhone 5sにワイドスクリーンで撮影できる

アナモルフィックアダプターのプロトタイプを装着しました。

 

アメリカのクリエイティブなプロジェクトに向けて

クラウドファンディングによる

資金調達を行う手段を提供している

Kickstarter(キックスターター)で

Moondog Labsというレンズデザイン会社が

iPhone 5s用のアナモルフィックアダプターレンズを

完成させて発売するための資金調達キャンペーンをしていたので

ショーン・ベイカー監督はMoondog Labsに連絡して

プロトタイプの提供を受けられることになりました。

そのキャンペーンページ←クリック

↑ここでアナモルフィックアダプターの説明動画も見れます。

 

Moondog Labs社の

iPhone 5s用のアナモルフィックアダプターレンズ

 

 

↑iPhone内蔵ビデオで撮影すると

アスペクト比は16:9

 

Moondog Labs社の

iPhone 5s用のアナモルフィックアダプターを装着すると

2.4:1のワイドスクリーンで撮影できる。

 

ショーン・ベイカー監督はiPhone 5sが発売された時

ビデオカメラの性能がUPしたので

資金面からも俳優を緊張させない効用からも

iPhone 5sでの撮影を考えました。

そしてMoondog Labs社の

iPhone 5s用のアナモルフィックアダプターを使えば、

ワイドスクリーン撮影ができることに注目しました。

そしてまさにMoondog Labs社の

Kickstarterのページにあった呼びかけ

「Create compelling widescreen films 

and photographs with your iPhone ...

and maybe end up at Sundance!」

が実現したのです。

 

Kickstarter←HPへ

 

Kickstarter」←日本語版Wikiへ

 

Moondog Labs社←HPへ

 

Moondog Labs社の

iPhone 6用アナモルフィックアダプター

を使用したレビュー動画

 

 

 

 

『タンジェリン』撮影風景

7人程のスタッフで動き、

3台のiPhoneを使っての撮影

iPhoneに付けている取手は

ステディカム スムージー

 

『タンジェリン』は音もいいのです。

上の写真でも分かるように録音はプロの技師が行いました。

映像は色や光と影が強調された独特のルック。

これはiPhoneの動画を編集するアプリで

拘って調整したそうです。

 

image

 

image

 

イメージフォーラムでの初日に

共同脚本・プロデューサーの

クリス・バーゴッチさんと

主人公シンディの恋敵ダイナ役

ミッキー・オハガンさんのトークがあったので参加しました。

 

クリス・バーゴッチさん

『ドクター・ストレンジ』のようなエンタメ作品もいいけど、

僕と監督は自分たちを

未知のカルチャーシーンへ連れて行ってくれる映画が好きで

そんな映画を製作したくてリサーチを始めた。

取材で知り合った

キタナ・キキ・ロドリゲス(HIV/エイズリサーチセンターで

健康教育者をしていた)

マイヤ・テイラー(クラブ歌手から本作の出演を機に俳優へ転向)

の2人に演じてもらうことにした。

 

ミッキー・オハガンさん

キキさんに暴力されるシーンがあるけど

実際にひどいことはされていない。

キキさんはとても優しい人。

キキさんとマイヤさんとは

本当はとても仲良しだけど

それが演技に出ないように注意した。

バスのシーンで本当に怪我をしてしまい

足から血が流れた時にバーゴッチさんが

さっと自分のシャツを脱いで拭いてくれた。

 

質問コーナーでは

英語で直接質問する人ばかりで焦りましたが

通訳の方が付いていたし、

私は日本語で質問しました。(^◇^;)

「バス停にシンディが座っているシーンで

乗客がたくさん降りてきますが

あの人たちは普通の乗客ですか?」

と聞いたらバーゴッチさんが

「いい質問ですね」と答えてくれましたよ。

ドーナツ・ショップの窓から見える通行人も

入ってくるお店のお客も、

バス停の乗客も実際にそこにいた普通の人たち。

iPhoneで撮っているため目立たなくて

自然な姿が撮れた。

監督の「カット」が掛かるとスタッフが

走って行って映画に使いますがいいですかと

契約書にサインをもらったそう。

大概OKをもらえたけど

中には絶対に使わないでという人も。

ドーナツ・ショップのママさん役は

プロデューサーの1人で衣装も担当している

シーチン・ツォウさん。

撮影の進行係もしていて、

お店に入ってきたお客さんが映った場合は

契約書にサインをもらう仕事もしました。

ショーン・ベイカー監督とキキとマイヤ

 

ショーン・ベイカー監督シーチン・ツォウさん

バーゴッチさん。

 

バスの中もゲリラ撮影。

シンディとダイナが喧嘩するシーンでは、

乗客に「警察に電話してた人がいる」と言われ

バーゴッチさんが次のバス停で

俳優、スタッフは皆それぞれバラバラの方向に

走って逃げるようにと指示したそう。

ミッキーさんが「本当の喧嘩だと思われるくらいの

迫真の演技ができたということだけど、

クリスはなぜ逃げ方を心得ていたんでしょうね」

と笑っていました。

 

『タンジェリン』は

iPhone撮影の機動性を活かしたライブ感が最高で

徹底したリサーチに基づく脚本、演出、演技が出色。

キワモノ映画ではありません。

トランスジェンダーのセックス・ワーカーの社会、

アルメニア人コミュニティがリアルに描かれています。

アルメニア人タクシー運転手らズミック役の

カレン・カラグリアンはアルメニア出身で

ショーン・ベイカー監督の作品全部に出演しています。

ラズミックの姑役のアラ・トゥマニアンが

ゴッドマザーのようにど迫力の

アルメニアのおばちゃんを演じています。

ミッキー・オハガンさんは綺麗な女優さんですが

劇中では下品な娼婦のダイナを熱演です。

Fワードが炸裂する世界ですが、

シンディの恋心は切ないし

(チェスターはクソ野郎ですが)

シンディーとアレクサンドラの友情には

ホロっとくる普遍性があります。

LGBT映画としてもリアルな

トランスジェンダーを描いた画期的な作品。

トランスジェンダー女優二人の生きいきとした

演技が評価され

マイヤはトランスジェンダー女性としては史上初めて

「ゴッサム・アワード」ブレイクスルー俳優賞

「インディペンデント・スピリット賞」助演女優賞などを受賞。

キキも「インディペンデント・スピリット賞」主演女優賞などに

ノミネート。

 

左からラズミックの妻役Luiza Nersisyan

バーゴッチさん、アラ・トゥマニアン

衣装が大阪のおばちゃん風!?

奥がシーチン・ツォウさん

 

 

 

 

ラズミックのタクシーのお客のこの子

日本人ぽく見えるけど

 Francis Lolaという子です。

 

 

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舞台になったドーナッツ・ショップ

「ドーナツタイム」は昨年6月に閉店

 

ミッキー・オハガンさんがツイッターを

フォローしてくれたので

お礼をしたら↓

 

 

 

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ショーン・ベイカー監督が「いいね」してくれました。

嬉しいなあ。

 

ショーン・ベイカー監督はアートムービが好きで

クリス・バーゴッチさんはディズニー映画(だからシンデレラの「シンディ」)

と、スターウォーズが好きという、

この2人のコンビのやりとりで生まれる

脚本のバランスが絶妙。

ショーン・ベイカー監督はジョン・カサヴェテスが

一番好きとのことで、私と一緒。

しかもマイベスト・カサヴェテスムービーの

『ハズバンズ』のポスターが部屋に飾ってあるそう。

 

 

 

音楽(クラシック、トラップミュージックを使った経緯など)

や撮影、編集への拘りなどを語った

ショーン・ベイカー監督インタビュー←クリック

 

 

 

 

 

ショーン・ベイカー監督の

『ドロップス 傷だらけの街』(2011)

『チワワは見ていた ポルノ女優と未亡人の秘密』(2012)

未見なので見たいです。

 

新作はウィレム・デフォーが出演する

「The Florida Project」

6歳の女の子が主人公で

周りの大人たちは大変な暮らしをしている。

完成・公開が楽しみです。

 

 

『タンジェリン』

鑑賞は楽しくて新しい映画体験でした。

活き活きとしたライブ感がたまらなかった!

スマホで撮って

映画として見てもらえるか心配したけど

世界中の国々で上映され、

こうして日本でも公開されることになって

とても嬉しいとゴーバッチさんが語っていました。

テーマ、コンセプト、ビジョンが明確で

脚本、演出、演技がしっかりしていれば

技術的な面は低予算でもスマホ撮影でもクリアできて

素晴らしい作品を制作できることを証明。

インディー映画の新しい指標となる映画でしょう。

もうチャレンジしている人がたくさんいそうです。

 

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クリス・バーゴッチさんと

ミッキー・オハガンさんにもらったサイン

 

今週劇場鑑賞した映画

タルコフスキー特集2017

『ストーカー』

 

『サクリファイス』

 

『アンドレイ・ルブリョフ』

 

『ローラーとバイオリン』

 

『僕の村は戦場だった』

 


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