『映画よ、さようなら』
原題:La Vida Util
2010年製作
ウルグアイ=スペイン合作映画
ケイズシネマ(K's cinema)で鑑賞
『映画よ、さようなら』予告動画
監督:フェデリコ・ペイロー
脚本:イネス・ボルタガライ、
ゴンサロ・デルガド、
アラウコ・エルナンデス、
フェデリコ・ペイロー
撮影:アラウコ・フェルナンデス
録音:ラウル・ロカテリ
楽曲:エドゥアルド・ファビニ
挿入曲:レオ・マスリア
マクナイーマ
編集:アラウコ・エルナンデス
フェデリコ・ペイロー
美術・衣装:エミリア・カルレバーロ
制作:ラウラ・グッドマン
フアン・ホセ・ロペス
ペドロ・バルシア
日本語字幕:比嘉セツ
出演:
ホルヘ・ヘネリック
マヌエル・マルティネス・カリル
パオラ・ペンディット
両親と暮らすホルヘ(45歳)は、
とあるシネマテークに勤めて25年。
フィルムの管理、作品の選択、
プログラムの編成から映写、
果ては客席の修理を一手に担い、
ラジオでシネフィル向け番組を担当して、
会員をつのる日々。
映写機材は古く、
シュトロハイムの「グリード」の上映では、
館長自らマイクを持って、
作中の詩をスペイン語で
ボイス・オーバーするアナログな上映館ながら、
ホルヘは、秘かに思いを寄せる大学教授のパオラに、
誇りを持って、
「25年間、毎日、ここにいる」と言う。
だが、ここ数年、観客は激減し、
建物の賃料も8ヶ月滞納していた。
何とかせねば、と焦るホルヘだが、
館長もスタッフも老朽化した機材のことで頭がいっぱい。
誰もホルヘの訴えに耳を貸さない。
ある日、ついに立ち退きを迫られ、
出資元の財団からも、
利益が出ないまま続けるわけにはいかない、
と通告される。
シネマテーク以外の仕事を知らないホルヘは、
思わずバスの中で涙する。
ついに閉鎖の日、途方に暮れるホルヘの頭の中に、
突如、「駅馬車」のワンシーンが響き渡り、
映画(=人生)を生きることに向かって足早に歩き始める。
髪を切り、25年の人生が詰まった黒い鞄を置き去り、
そして...。
(公式サイトより)
『映画よ、さようなら』公式サイト←クリック
この映画は尺が63分のモノクロ映画です。
原題「La Vida Util」には、
「耐用年数(賞味期限)」という意味と
「生き甲斐のある人生」という意味があるそうです。
冒頭に
「これはフィクションで
ウルグアイのシネマテークとは
無関係です」とテロップが流れます。
(日本にはシネマテークと名がついた
映画館(ミニシアター)がありますが
「シネマテーク」の本来の意味は
日本でいうと
東京国立近代美術館フィルムセンターのように
上映ホールがあり、
映画フィルムや
映画に関する資料を蒐集、保存する機関のことです。)
主人公のホルヘが務めるシネマテークでは
マノエル・ド・オリヴェイラ特集
アイルランド映画特集
日本映画特集
現代のウルグアイ映画特集など
様々な上映をしています。
成瀬巳喜男映画っぽい!?
映画音楽が流れたり、
レオ・マスリアの不思議な歌
「失われた馬たち」
(軍事政権時代1984年発表)
がシネマテーク閉館のシーンで流れたり。
音楽が印象的な作品です。
前半はシネマテークが閉館になるまでで、
シネマテークの内部やラジオのスタジオなど
屋内でのシーンが主になっています。
後半は仕事を失った
ホルヘの行動が描かれます。
デジタル撮影、デジタル上映の時代になり
映画を取り巻く環境が激変しました。
ホルヘのように映画漬けな人生の
その仕事に終わりが来ることも。
でも、映画は自分の中に存在するし、
人生も続いていく。
新しい人生の中に映画もある。
フェデリコ・ペイロー監督は
ウルグアイ、そしてスペインの
シネマテークで働いた経験のある人。
相当なシネフィルでしょう。
この映画は、シネフィルには
オマージュの出典を探る楽しみがあるし、
そうでなくても
不思議な味わいのあるコメディーとして
観ることができるはずです。
シネマテークの経済観なさすぎな様子や
啓蒙主義的な感じの館長のトークなどは
シニカルなユーモアを感じる描写です。
映画愛と映画館に対する愛に溢れた映画です。
ラストシーンは
SF的にも見えたのですが。
(私だけかもしれないです。)
主人公ホルヘはとても味のある人物ですが
演じているホルヘ・ヘリネックは俳優ではなく
ウルグアイ映画批評家協会の元副会長の映画批評家です。
館長役のマヌエル・マルティネス・カリルも、
首都モンテビデオに実在するシネマテークの館長です。
存在感があって自然な演技なので
素人とは思えませんでした。
私はこの映画は昨年、
「ラテン!ラテン!ラテン!
Action Inc.が届けたラテン映画10年間の軌跡」
のスニークプレビューで観て
今年の一般公開でもう一度観ました。
今、首都圏では
横浜シネマリンで公開中で、
10月29日(土)からは
下高井戸シネマで上映されます。
その他は公式サイトを見てネ。
つまらない、分からない
って人もいるだろうけど、
私にはなんとも不思議な味わいで
忘れられない映画です。
比嘉セツさんの
1人配給会社Action Inc.←クリック
配給の映画は殆ど観ましたが
どれも個性的で忘れがたい作品です。
『映画よ、さようなら』撮影風景↓
最前列がフェデリコ・ペイロー監督と
ホルヘ・ヘリネック
『映画よ、さようなら』の
パンフレットは内容充実していて
解説などを読むと
映画の理解がより深まります。
ウルグアイの実際のシネマテークは
非政府・非営利団体(会費と支援者の寄付で運営)
首都モンテビデオに映画館3館4スクリーンあり、
併設の映画学校の若者たちには熱気があるそう。
そのひとつシネマテカ劇場の
「映画の歴史特集」では映画誕生からの
ベスト千本(ノ゚ο゚)ノ
を上映する企画で
「終了までようやくあと300本余りとなった
世界一長い上映企画」で
次の千本企画も準備中らしいです。
通ったら相当な映画史通になれそう。
そして、特に
『しばらく「映画よ、さようなら」
背中を押してくれた作品
編集後記』
という比嘉セツさんの文章は
中・南米の映画事情にも触れてくれているし、
比嘉さんの映画への思いが
率直に伝わってきて胸が熱くなります。
比嘉さんが今年の春に
東京国立近代美術館フィルムセンターの
キューバ映画のポスター展とキューバ映画特集
イベントトーク「キューバ映画の過去と現在」
の時に、今年は映画の撮影現場での
仕事をされると話してみえたのですが、
それは
阪本順治監督の日本=キューバ合作映画
『エルネスト』の
キューバロケでの監督通訳のお仕事でした。
キューバの革命家チェ・ゲバラのゲリラ隊に参加し、
彼から「エルネスト」と名付けられた
実在の日系人フレディ・前村を
オダギリジョーが演じる『エルネスト』
(ゲバラの本名は
エルネスト・ラファエル・ゲバラ・デ・ラ・セルナ)
私が一番好きな日本映画の監督は阪本順治監督です。
比嘉さんが参加されるお仕事が
『エルネスト』の監督通訳とは嬉しい驚きでした。
すごく重要なお仕事です!
今、キューバロケが行われていて、
来年2017年秋の公開予定です。
公開がとても楽しみです。
オダギリジョー×阪本順治監督、
チェ・ゲバラとともに戦った日系人の生涯描く←クリック
↑キューバのチェ・ゲバラ邸などを訪ねた
阪本順治監督とオダギリジョー
フェデリコ・ペイロー監督の新作は
2015年第63回サンセバスチャン国際映画祭で
審査員スペシャル・メンションを受け
国際映画批評家連盟賞を受賞した
「El Apóstata」(背教者)
スペイン=フランス=ウルグアイ合作映画
カトリック教会から
背教しようとする男の姿を描くコメディー。
「El Apóstata」(背教者)トレーラー
映画の質に関してと
個人の好みのについては別問題だけど
それが曖昧、
あるいはぐちゃぐちゃになっている
ネットの中の
鍛錬なき印象批評もどきが溢れる世界と
どう付き合ったらいいのか
分からなくて疲れてしまいました。
さようならがしたいけど、
それができない自分がもどかしい。
「お前こそ鍛錬が足りない。」
その通りなので。
カサヴェテスが言ってた。
「人々は不満なことに意識を注ぎ過ぎてる」
今週劇場鑑賞した映画
『レッドタートル ある島の物語』
エリック・ロメール監督特集上映
ロメールと女たち
『友だちの恋人』
『レネットとミラベル
四つの冒険』
『海辺のポーリーヌ』
『満月の夜』
『好きにならずにいられない』
『太陽のめざめ』
『奇跡の教室 受け継ぐ者たちへ』
鑑賞した映画の短評は↓
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アメーバ映画時光の「なう」←クリック
に鑑賞後随時投稿しています。
ぜひ読んで下さい。
毎週月曜日に「なう」への投稿が
まとめてブログにUPされます。
投稿が遅れることがあるので
まとめ記事の下の
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ヴィゴ・モーテンセン新作「キャプテン・ファンタスティック」
マット・ロス監督
若き日のチェ・ゲバラ(エルネスト)を演じた
ガエル・ガルシア・ベルナル
彼女にプレゼントする子犬を抱えた
写真が欲しかったのだけど...
なかったのでこちら↓