『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』
原題:BIRDMAN OR(THE UNEXPECTED VIRTUE OF IGNORANCE)
アメリカ映画
2014年製作
TOHOシネマズ川崎で鑑賞
↓予告動画
↓公式トレーラー
監督:アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ
製作総指揮:クリストファー・ウッドロウ
モリー・コナーズ
サラ・E・ジョンソン
製作:アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ
ジョン・レッシャー
アーノン・ミルチャン
ジェームズ・W・スコッチドポール
編集:ダグラス・クライズ
スティーヴン・ミリオン
脚本:アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ
ニコラス・ヒアコボーネ
アレクサンダー・ディネラリス・Jr
アルマンド・ボー
撮影:エマニュエル・ルベツキ
美術:ケヴィン・トンプソン
音楽:アントニオ・サンチェス
出演:
マイケル・キートン
ザック・ガリフィアナキス
エドワード・ノートン
アンドレア・ライズブロー
エイミー・ライアン
エマ・ストーン
ナオミ・ワッツ
リンゼイ・ダンカン
メリット・ウェヴァー
ジェレミー・シャモス
ビル・キャンプ
ダミアン・ヤング
あらすじは...
アメコミヒーロー「バードマン」で、
スターの栄光を掴んだが
今は落ちぶれたリーガン(マイケル・キートン)が、
起死回生で脚本・演出・主演でブロードウェーの
舞台劇に挑む。
寺島しのぶがWOWOWの
アカデミー賞授賞式の中継番組で
ラストシーンのネタバレしちゃいましたが(苦笑)
公開されたばかりなので、(初日に観ました)
ストーリー上の重要点については
詳しく書きません。
総論的なレビューです。
でも、まっさらな状態で見たい方は、
鑑賞後にまた読みにいらして下さいね。
タイトルに書いた様に、
イニャリトゥ監督の新境地で
ポジティヴな作品です。
彼の過去作が評価されたのはカンヌやヴェネチアで、
作家性の強いアート系の作品を撮ってきた監督と言えます。
メキシコの映画製作会社チャ・チャ・チャフィルムズを
共同で設立した、
イニャリトゥ監督、アルフォンソ・キュアロン監督、
ギレルモ・デル・トロ監督のスリーアミーゴズの中でも、
所謂エンタメ作品を撮ってこなかった人でした。
『バードマン』は昨年のヴェネチア映画祭のコンペ作品で、
オープニング作品として上映され、
私の記事でも紹介しました。
この作品『アモーレス・ペロス』以来の
会心作になっています。
途中の作品がスゴク好きだと言う方には
すみませんなのですが。
やはり過去作のように
ベースにずっと死の影があるのですが、
それをネガティヴで暗い方向に描かず、
ブラック・コメディーとファンタジー(妄想!?)
という方法論を選んだことがポジティヴなパワーを
作品に内包させました。
異国からの才能を常に取り込んできたハリウッドが、
外国人監督の作品を評価することは
珍しいことではないけれど、
2年続けてメキシコ人監督が監督賞です。
今年の作品賞はビッグバジェットの大作がありません。
一番予算が高いのは『アメリカン・スナイパー』ですが、
超大作とは言えない58ミリオンドル(約70億円)
『バードマン』は18ミリオンドル(約21億円)です。
今年の作品賞ノミネート作品は小粒でも、
作品内容は充実していると感じます。
『バードマン』はブラック・コメディーなのに、
作品賞を取ったことは画期的でした。
高齢の白人男性が占める割合が多いアカデミー会員ですが、
投票権が多い俳優たちが「出たい!」
と思う作品だったと感じます。
マイケル・キートン、エドワード・ノートン
エマ・ストーン、ナオ・ワッツ、
ザック・ガリフィアナキスの
メインキャストたちにはアテ書きしたかのような脚本。
彼、彼女らのパブリックイメージや、
演じてきた作品の要素を
自虐ギャグ、セルフ・パロディーのように
演じさせているように見えます。
でも、それはゴシップ好きな層も、
彼、彼女らの過去作をしっかり見てきた映画ファンも
楽しませることができるための仕掛け。
その演出にしっかり応えられる演技力のある
俳優たちが期待に応えた仕事をしたということです。
芸術的には映画より舞台の方が
高等だということになっている現実に、
映画として気骨のある挑戦的な風刺もしているが、
舞台芸術や批評家へのリスペクトも巧みにもぐりこませ、
風刺、批判のしっぱなしもしていない所が上手いです。
そうでなければこんな高評価を得ることもありません。
ツィッターやYouTube、フェイスブックなどのSNSが
変えてしまったネット情報に左右される
尋常でない社会への疑問、抵抗も盛り込まれています。
主人公リーガンが上演する舞台劇は
日本では村上春樹氏の訳で知られている
レイモンド・カーヴァーの短編
「愛について語るときに我々の語ること」
で、リーガンがカーヴァー的な人物であるとか、
ロラン・バルトが会話に使われたり、
マイク役のノートンがボルヘスを読んでいるなど
知識層の興味をくすぐる要素も散りばめてあります。
また、豪華なセレブスターの名前もたくさん
面白く使われていて、
エンタメ好きも楽しいという仕掛けもあります。
CGやVFXを上手く使ってあっと驚く
エンタメ大作感を醸し出しているシーンも。
そして、話題になっている作品全体が
ワンカットの長回しに見える、
カメラワークと編集はやはり素晴らしかったです。
『ゼロ・グラヴィティ』に続き2年連続で、
撮影賞を受賞したエマニュエル・ルベツキの、
定評のある光の捉え方、シーン全体を捉える
なめらかなカメラワークやロングショットは秀逸です。
編集は本当にスムーズな流れを作っています。
映画を見慣れた人にはカットしたところは
そんなに見つけるのは難しくはないはず。
でも探す楽しみはあります。
一番の見どころシーンは、
やはりアカデミー賞授賞式で
パロディーにされた流れのシーンでした。
音楽についてはパンフで浅田彰が書いていますが、
アカデミー会員でもある坂本龍一が、
ニューズレターで、
ドラム・スコアだからといって、
作曲賞のノミニーから、
アントニオ・サンチェスを外したのは頭が古い
と書いていたそう。
確かにこのドラム・スコアの劇伴は、
とても洒落ていて素敵です。
クラシック音楽の選択、使い方も巧妙です。
でもまあ、アート性があると合わないという人はいるし、
『アメリカン・スナイパー』のように
分かりやすい作品でもなく、
知性的な面を気取っていると捉える人もいるでしょうから、
そういうクチコミが広まると
アカデミー賞作品賞だからといってヒットはしないかも。
私としては、
ブラック・コメディーとして笑えて、
エンタメ性のあるファンタジーとしても楽しめ、
技術的な面の水準の高さが素晴らしく、
俳優たちの演技も堪能して、
とても満足できた面白い作品でした。
アカデミー賞作品賞でとても面白いと思ったのは
『ノーカントリー』以来かな。
最低もう一度はスクリーンで観たいと考えています。
セリフがとても聞き取りやすく、
字幕をあまり読まずに済み、
映像に集中できたのもよかったです。
納得の熱い好演でした。
リアルに演じて助演女優賞ノミネートのエマ・ストーン
助演女優賞レベルです。
デヴィッド・リンチ師匠『マルホランド・ドライブ』
オマージュシーンがファンには嬉しい。
マイケル・キートンに主演男優賞
あげればよかったのにと思いましたよ。
まあ、これからハリウッド作品で活躍してくれる、
難病、アル中薬中、性同一障碍、実在の人物、
上手く演じた人に行きやすいですからねえ...
一流監督に仲間入りなイニャリトゥ監督
親しく過ごしたというキャスト達。
私が連想したのは
アルフォンソ・キュアロン監督の
長回しシーン撮影とカットを繋げた
編集が素晴らしい、
大好きな『トゥモロー・ワールド』
トゥモロー・ワールド プレミアム・エディション [DVD]/
クライヴ・オーウェン,ジュリアン・ムーア,マイケル・ケイン
長回し撮影の大変さが『バードマン』の比では
なかったであろうアレクサンドル・ソクーロフ監督の
『エルミタージュ幻想』
エルミタージュ幻想 [DVD]/
セルゲイ・ドレイデン,マリア・クヅネツォワ,レオニード・モズガヴォイ
『バードマン』の
台詞の台詞に登場するマーティン・スコセッシ監督。
アカデミー賞欲しくてスコセッシ監督とタッグを組んで
頑張ってきたレオナルド・ディカプリオ。
スコセッシ監督には、
パーティーは謹んでもっと自分磨きをと説教され、
休業もしたレオの新作は、以前も紹介しましたが、
アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督作品。
マイケル・パンクのベスト・セラー
「The Revenant: A Novel of Revenge」
を原作とした
実在の狩猟家ヒュー・グラスが主人公の
『The Revenant』(原題)
トム・ハーディー、ウィル・ポーター他共演。
2015年12月25日にアメリカで限定公開して
来年のアカデミー賞レースに間に合わせる模様です。
果たしてレオは念願のアカデミー賞主演男優賞を
手にできるのでしょうか。
イニャリトゥ監督過去作
『アモーレス・ペロス』ガエル・ガルシア・ベルナル主演
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ガエル・ガルシア・ベルナル,エミリオ・エチュバリア,ゴヤ・トレド
『21グラム』ショーン・ペン主演
21グラム Blu-ray/
ショーン・ペン,ナオミ・ワッツ,ベニチオ・デル・トロ
『バベル』ブラッド・ピット主演
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ブラッド・ピッド.ケイト・ブランシェット.ガエル・ガルシア・ベルナル.
役所広司.菊地凛子.二階堂智
『BIUTIFUL ビューティフル』ハビエル・バルデム主演
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ハビエル・バルデム,マリセル・アルバレス,エドゥアルド・フェルナンデス
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