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『イーダ』構図とモノクロの陰影が美しい歴史を背負った佳品『物語る私たち』サラ・ポーリー恐るべし!

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『イーダ』
『物語る私たち』
今週観た映画。
キネカ大森名画2本立て。






↓トレーラー


『イーダ』
監督・脚本:パヴェウ・パヴリコフスキ
出演:アガタ・クレシャ
アガタ・チュシェブホフスカ
ダヴィド・オグロドニク

戦争孤児として修道院で育ったイーダ(アガタ・クレシャ)には、
実は会ったことのないおばがいると院長から聞かされ、
修道女の誓いを立てる前に、
会って来てはどうかと勧められる。
おばのヴァンダ(アガタ・チュシェブホフスカ)
から初めて自分がユダヤ人だと知らされるイーダ。
両親のお墓はないというヴァンダに、
イーダは最後に両親が住んでいた家に行きたいと言い、
2人の旅が始まる。

昨年8月にイメージフォーラムに観に行ったのですが、
電車が事故で遅れ、
『ドライブイン蒲生』だけ観て、
そのまま観に行けなくなり見逃していました。
今回、キネカ大森の2本立てでやっと観ることができました。

映像的には、
とにかく構図が素晴らしいです。
ワンシーン、ワンシーンが緻密に計算された完璧さ、
それぞれスチール写真にしたらアートになります。
アカデミー賞撮影賞にノミネートされた、
ウカシュ・ジャル、リシャルト・レンチェフスキによる、
モノクロ映像陰影がとても美しいルックです。

物語は、ポーランドの歴史にあまり詳しくないと
観方が浅くなる恐れはあるのですが、
無駄を省いたストーリーと映像で
役者の演技や佇まい、所作に語らせ、
映画として上手い作りです。

ユダヤ人が多いハリウッドが、
アカデミー賞でこの作品を
外国語映画賞に選んだことには、
プロパカンダの意味が込められていることを
否定できません。

ただ、この作品自体は、
ポーランドの歴史を背負いながら、
イーダという少女の目と成長を通して、
観る者の心に響く普遍性があります。
小さな作品ではありますが、
映画芸術としての完成度も高い佳品です。

ワルシャワ大学の学生でカフェにいる所を
スカウトされた映画初出演のアガタ・クレシャは、
演技というより、彼女の存在感で、
役としてのイーダを生きて、
この作品に生命力をを与えました。
アガタ・チュシェブホフスカ、
ダヴィド・オグロドニクがをはじめ、
脇役の俳優たちがリアリティーのある演技で
しっかり支えています。
『ショア』
(クロード・ランズマン監督によるドキュメンタリー映画。
ナチスのホロコーストについて、
主にポーランドにおける残虐行為についての証言を集めた
9時間30分の長編)
をイメージフォーラムでの再映で完全制覇した娘は、
『イーダ』を観て、
イーダとヴァンダが訪ねる村や、
ユダヤ人のお墓が『ショア』に実際に出てくるのと、
そっくりで、
特にリアリティーを感じたと言っています。

ナチスとポーランド人とポーランドのユダヤ人について、
知識があれば、作品世界を深く味わうことができます。

関連作品として『ソハの地下水道』がおススメ。
『イーダ』ではもっと残酷な歴史の影が描かれています。

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サスペンスフルな展開
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アガタ・クレシャは俳優になる気はないそうです。
ダヴィド・オグロドニクが
障碍のある主人公の青年期を演じた
『幸せのありか』も見逃しているので、
これもぜひ名画座の上映を待って観たいと思っています。




アガタ・クレシャ、パヴェウ・パヴリコフスキ監督
アガタ・チュシェブホフスカ





『イーダ』でサックス奏者を演じる
ダヴィド・オグロドニク



『幸せのありか』のダヴィド・オグロドニク


↓予告動画







↓予告動画


『物語る私たち』

サラ・ポーリー監督
語り:マイケル・ポーリー(サラの父)

サラが11歳の時に癌で亡くなった母のことを、
家族や友人たちが語ります。
サラには出生の秘密がありました。

この作品は昨年9月に観ていて今回再見。
とても好きな作品です。
私小説的な家族の物語を、
見事な映像トリックと組み立てで、
興味深い作品に仕上げました。
私はこの作品を観ていると涙が止まらなくなるのです。
作品について分析的にどうのという事を越えて、
魂に響いてきてしまうのです。
誰が観ても泣ける作品ではありません。(念のため)

サラ・ポーリーの監督としての
才能の豊かさ、冷徹さ、恐ろしさを知る作品です。




この2本は本当は1本ずつ、
きちんとレビューしたい作品です。
今週も体調が悪く、
3回も血液検査と受診に行かなければなりませんでした。
予定していた抗がん剤治療もできず、
1週間ずらすことになりました。
そんなことで、この2本を金曜日の受診の後に
観に行けただけでした。
本当に久しぶりのキネカ大森の2本立てでした。
来週はまた抗がん剤治療もしなければならず、
なんとか観ておきたい映画もあって、
またブログがどれだけ書けるか分からないので、
とりあえずこんな感じで書いておきました。




『かしこい狗は、吠えずに笑う』


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