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『原爆の子』感想 新藤兼人監督、乙羽信子主演 、滝沢修、宇野重吉他「第3回新藤兼人平和映画祭」

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『原爆の子』
「第3回新藤兼人平和映画祭」

新文芸坐で鑑賞



↓『原爆の子』原爆投下、投下直後のシーン。


監督・脚本      新藤兼人
原作      長田新篇
製作      吉村公三郎
共同製作      山田典吾
撮影      伊藤武夫
美術      丸茂孝
音楽      伊福部昭
(1952年10本の映画音楽の内の1本。ゴジラより前です。)

出演:
石川孝子      乙羽信子
母せつ      細川ちか子
父利明      清水将夫
森川夏江      斎藤美和
夏江の夫      下元勉
岩吉爺さん      滝沢修
おとよ婆さん      北林谷栄
太郎      伊東隆
木島浩造      寺島雄作
妻おいね      英百合子
三平      (現地少年)
芳夫      (現地少年)
父早吉      伊達信
母千代      高野由美
労働者風の男      多々良純
教会員       小夜福子
孝司      宇野重吉
船長      殿山泰司
馬喰      東野英治郎
咲枝      奈良岡朋子
長屋の男      大滝秀治
医者      芦田伸介
お産を告げにくる男      柳谷寛
佐々木すみ江
原ひさ子

舞台は原爆投下から6年程経った広島市内。
広島で幼稚園教諭をしていた石川孝子(乙羽信子)は、
原爆で家族全員を失い、
今は瀬戸内海の島でおじ、おばと暮らし、
小学校の教諭をしている。
夏休みに彼女は広島へ行き、
以前働いていた幼稚園で
生き残った3人の子どもたちを訪ねることにしていた。
生家の後を訪ねた後、
偶然、広島の家で使用人をしていた
岩吉(滝沢修)が物乞いをしているのを見つける。
彼は原爆で受けたひどいやけどのために、
殆ど目が見えなくなり働けず、
物乞いをしていた。
孫の太郎だけが生き残った身寄りだった。
収入は殆どないため
太郎は孤児院に預かってもらっていた。
孝子は太郎を引き取りたいと申し出る。
固辞する岩吉に太郎と一緒に2人とも島へ行こうと誘うが、
そんなことはできないと断られる。
孝子は幼稚園の同僚だった森川夏江(斎藤美和)
の家に泊めてもらう。
夏江は被爆の影響で子どもの産めない体になっていたが、
自分で産めなくても産む手助けしたいと助産婦をしていて、
夫婦で養子をもらおうとしている。
翌日から孝子は3人の子どもたちを訪ねる。
最初に訪ねた三平の母は、
建設中の原爆資料館で働いていた。
原爆症で伏せっていた三平の父親が、
丁度孝子が訪ねて行った時
亡くなってしまう。
孝子が悔やみを言うと、三平の母に
「悔みを言ってもらっても死んだ者は生き返らん」
と言われてしまう。
(被爆者が激しい感情を見せるのはここだけ)
次に訪ねた敏子は、
孤児になり教会で暮らしており、
原爆症でいつ死ぬか分からない状態で寝込んでいた。
とし子は「お父さん、お母さんのことをお祈りするために、
ここに置いてもらうことにしましたが、
今は原爆で亡くなったたくさんの人々のためにお祈りしています、
いつまでも平和が続きますようにと神様にお祈りしています。」
と孝子に話す。
次に3人目の平太を訪ねると、
兄孝司(宇野重吉)と、
原爆の時の怪我で足を悪くした姉咲枝(奈良岡朋子)
と暮らしていた。
今日は咲枝が結婚する日だと言い、
家を出る前の家族のささやかなお祝いに孝子も同席する。
その後、また岩吉を説得しに行くが断られる。
岩吉の面倒をみている
近所のくずひろいのおとよ婆さん(北林谷栄)に
説得され、
岩吉はついに太郎を島に連れて行ってもらうことにする。
この決意の後も一波乱あります。

この映画のあらすじ紹介は、
色々な映画紹介サイトにありますが、
キネ旬のデータが出典になっているものは、
全部同じです。
これが所々間違い、
特に結末部分は激しく間違っています(x_x;)
映画を見て書いたとは思えないです...
なので、上記のあらすじは、
引用はせず自分で書きました。

この映画は初めて観ました。
想像していたよりかなり静かな印象の作品でした。
復興中の広島の風景は映像的にも貴重ではないでしょうか。
予算的な問題もあったかと思いますが、
原爆投下と投下後のシーンは短く、
激烈な描写ではありません。

乙羽信子さん以外のキャストは、
民藝の大先生方総出演です。
私はいつもは映画を見る時、
あまり感情移入はしないことが多いです。
今回もそんな感じで観ていたつもりでしたが、
岩吉爺さん(滝沢修さん、老けメイクで老け芝居です)
太郎君を島に行かせてやりなよ~って
芝居に引き込まれ強くツッコんでいましたョ。
おとよ婆さんの慈愛のある説得は流石だなあと感動。
(北林谷栄さん、老けメイクで老け芝居です)
橋から飛び込み川遊びをする子どもたちなど、
当時の現地の子どもたちの躍動感以外は、
殆どが抑えた演出です。
(子どもたちの姿は演出というより元気な躍動感を
自然に撮れているということですね)
感情的なのはお悔やみを述べた孝子に、
思わず言い返してしまった
三平の母親のシーンだけです。
反核のメッセージをエモーショナルには打ち出さず、
抑制のきいたドラマにしたことは、
海外でも広く評価されることに繋がったのではないでしょうか。




原爆投下後のシーンで
この時代の映画において
女性の裸体も映されるのが、
新藤監督らしさでもあるでしょうか。



滝沢修さんと乙羽信子さん



建設中の原爆資料館







宇野重吉さんと奈良岡朋子さん



1959年公開の新藤兼人監督『第五福竜丸』では
宇野重吉さんが久保山愛吉(第五福竜丸の無線長)さん役、
奥さんの久保山しずさん役が乙羽信子さんでした。


『原爆の子』と、同じ原作の
自身が被爆者である教育学者の長田新が
編纂した作文集
『原爆の子~広島の少年少女のうったえ』が原作の映画は他にも、
『ひろしま』(1953年日教組プロ製作、関川秀雄監督)があります。
当初は新藤監督と日教組の協力での映画製作が話し合われたそうですが、
結局決裂し、別々に作品が作られることになりました。
『ひろしま』は八木保太郎脚本、
音楽は『原爆の子』と同じ伊福部昭。
助監督に若き熊井啓が参加しています。
月丘夢路、山田五十鈴、岡田英次、加藤嘉他の出演。
こちらは2012年に浜松の上映会で観ました。
製作費は日教組組合員の募金で集められ、
当時の広島市民の方々など約8万8500人が
手弁当のエキストラとして参加しています。
原爆投下後のシーンなどは、とても迫力がありました。
8月6日の再現性にこだわったというのがよく分かります。
ただ、反戦・反核のメッセージも
ストレートに打ち出されていて、
(それが目的で作られているのだから当然なのですが、)
私は『原爆の子』より限定された時代性を感じてしまいました。
ただこれはあくまで私の個人的な感想です。
1955年に第5回ベルリン国際映画祭長編映画賞を受賞しています。
『ひろしま』は長く上映される機会がなかったとのことですが、
今は各地で上映会が行われています。
『原爆の子』と見比べてみるのは
とても興味深いことと思います。

原爆の子―広島の少年少女のうったえ〈上〉 (岩波文庫)


原爆の子―広島の少年少女のうったえ〈下〉 (岩波文庫)





迫力のある『ひろしま』の原爆投下後のシーン


↓映画『ひろしま』予告動画


今日8月9日は長崎原爆の日でした。
この記事も間に合わせたかったのですが遅れてしまいました。
そして、長くなってしまいましたので、
「第3回新藤兼人平和映画祭」で観たもう1本、
『はだしのゲンが見たヒロシマ』と、
シンポジウムについては次回にします。









↑菅原文太さんからのメッセージ、
ぜひ読んで下さい。


『かしこい狗は、吠えずに笑う』



『かしこい狗は、吠えずに笑う』
北海道フィルム・アートフェスティバル
会場:札幌シアターキノで上映
8月31日(日)
9月1日(月)


400表



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