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チスル 感想 済州島四・三事件初めて劇映画化。サンダンス映画祭でワールドシネマ・グランプリ受賞!

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『チスル』
Jiseul
지 슬
2012年製作 韓国映画
ユーロスペースで鑑賞(4月)

浜松シネマイーラで7月5日(土)~11日(金)上映









↓予告動画


監督・脚本:オ・ミヨル

出演:
ヤン・ジョンウォン
イ・ギョンジュン
ソン・ミンチョル
ホン・サンピョ
ムン・ソクポン
パク・スンドン
カン・ヒ

第二次世界大戦で日本が連合国に降伏すると、
アメリカ軍とソビエト連邦軍が
朝鮮半島を北緯38度線で南北に分割し占領した。
アメリカ主導で進められていた南だけの単独選挙が
国の南北分断を決定的にするとして、
1948年4月3日、選挙に反対する済州島民が武装蜂起。
それが発端となり、米軍が作戦統治を行っていた韓国軍と警察は、
海岸線5kmより内陸にいる人間を暴徒と見なし、
鎮圧の名の下無差別に虐殺する。
事態は熾烈を極め、7年もの間に約3万人が犠牲となったが、
その大半は思想や信条とは無縁な人々だった。
日本に逃れた島民も多く、事件前に28万人いた人口は激減した。
「済州島4・3事件」は時の体制に
“アカの島”で起きた“共産暴動”と烙印を押され、
近年まで語ることさえタブーとされてきた。

監督は済州島に生まれ育った新鋭オ・ミヨル。
未だ真相の究明が十分に果たされていない
4・3事件の真実を初めて無辜なる民の眼差しから
描くことに成功した本作は、
済州島出身のキャスト・スタッフが結集し、
沈黙を強いられてきた生き証人の言葉にならぬ声を掬い上げ、
島民が逃げ込んだ実際の洞窟で撮影を敢行、
圧倒的な映像美で彼らの絶望と希望の刹那を描き出した。
陽光と夜の闇で織りなす冷酷なモノクロームの饗宴は、
なぜ殺されるのかわからず死んでいった人々、
なぜ殺すのかわからず殺した者、
時が過ぎても鎮魂されない人々に向けた一条の光となって、
多くの人々の心に訴えかけるであろう。

韓国では、ヤン・イクチュン監督『息もできない』の
インディペンデント映画動員記録を塗り替え、
異例の興行成績で大ヒット!
釜山国際映画祭でもNETPAC賞、市民評論家賞、
映画監督組合賞、CGVムービーコラージュ賞の4部門を席巻。
ロッテルダム国際映画祭、ヴズール国際アジア映画祭など
世界からも注目を集め、
サンダンス映画祭では韓国映画として初めて
ワールドシネマ・グランプリも受賞した。
(公式HPより)

とても重い歴史上の事件ですが
映画は殺される側の島民も、
殺す側の兵士も、
同じ人間として時にコミカルにも描かれ、
残酷でへヴィーな歴史告発映画ではありません。
静謐なモノクロ画面から
鎮魂の祈りが伝わってきます。


この作品は4月にユーロスペースで観しました。
考えてみたらユーロスペースでロードショーの映画、
4月から結構観ています。
「悪の凡庸さ」シリーズで書こうと思っていて、
まだ書いていませんでした。
かなりへヴィーな作品だろうと心構えをしていましたが、
ただ重い映画ではなかったです。
虐殺される島民も、
する側の兵士も、
どれだけ「アカ」の意味が分かっていたのか?
共産主義、コミュニズムに関する知識があったとも思えない人々が、
殺し、殺されていくのです。
「アカは殺せという命令だから殺す」
これは、
『アクト・オブ・キリング』でも、
今日からユーロスペースで公開
『消えた画 クメール・ルージュの真実』の
リティ・パニュ監督のドキュメンタリー
『S21 クメール・ルージュの虐殺者たち』(2002)
(虐殺の記憶を超えて-リティ・パニュ監督特集ユーロスペースで鑑賞)
でも、同じ構造でした。
自分で善・悪の判断をしない、
自分の責任で考えることを停止してしまう平凡さに宿る悪。
これはハンナ・アーレントがいう「悪の凡庸さ」。
「自分は命令に従っただけ」
それで大量虐殺が遂行される。
『アクト・オブ・キリング』で描かれている
虐殺者はヤクザの人たちでしたが、
『チスル』『S21 クメール・ルージュの虐殺者たち』は、
殺される側の人たちと変わらない同じ普通の人々で、
その時立場が兵士(『チスル』)であったり
収容所の職員(『S21』)であったりしただけ。
だから、映画を観ている自分も「悪の凡庸さ」に
陥るかもしれないという
恐ろしさがあります。


ただ、上記しましたが、
『チスル』は、劇映画として、
どよよ~んと重い描写ばかりではありません。
コミカルな描写もあるし、
島民にも兵士にも人間ドラマがあります。
映像も白と黒のコントラストが美しいモノクロ映像です。
ラストの、神話的にも見え、
鎮魂の祈りを感じる静謐な映像に息を呑みました。

済州島四・三事件については、
『かぞくのくに』で舞台挨拶と監督を囲む会で、
浜松にみえたヤン・ヨンヒ監督が、
教科書が教えない歴史の事実として話してくれました。
ヤン・ヨンヒ監督のお母さんの婚約者が、
事件の犠牲で亡くなったそうです。

日本も「戦争をする国」になっていいのでしょうか。
国民が判断する機会もなく、
勝手な解釈を閣議決定する政権を許しておいていいですか。
主権在民になっていませんよ。
歴史から学ばず同じ間違いを繰り返すことになります。
韓国にはこの『チスル』のような映画が作られ、
多くの人に観られるという文化的な地盤があります。
日本は映画を文化として保護する意識も弱い。
とても残念です。


これは、ゲリラとして捕えられ、
処刑を待つ当時の済州島島民の人たち。
この人たちが共産ゲリラ!?





『チスル』は、済州島の方言で「ジャガイモ」。
優しい気質の島民は負傷した軍人にまで
自分たちの食料のジャガイモを差し出したそうです。







洞窟に隠れる島民たち
彼らを待ち受ける運命は...




『S21 クメール・ルージュの虐殺者たち』
虐殺の記憶を超えて-リティ・パニュ監督特集
(6月26日~7月4日)で公開。
『消えた画』の予習で観ました。



『消えた画 クメール・ルージュの真実』
7月5日よりユーロスペースで公開


シネマイーラで今日から公開の
『フルートベール駅で』も、
『グランド・ブタペスト・ホテル』も、
観たけどまだ記事を書いていません。
『チスル』は1週間限定なので先に書きました。
ぜひご覧ください。



『かしこい狗は、吠えずに笑う』



400裏


400表



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