『祖谷物語 おくのひと』
2013年製作 日本映画
ユーロスペースで鑑賞
↓予告動画
監督:蔦哲一朗
脚本:蔦哲一朗、河村匡哉、上田真之
撮影:青木穣
照明:中西克之
録音:上條慎太郎
衣装:田中美紗紀
渡邊彩香
メイク:桑本勝彦
スチール:内堀義之
キャスト:
武田梨奈 春菜
田中泯 お爺
大西信満 工藤
石丸佐知 琴美
村上仁史 アキラ
クリストファー・ペレグリニ マイケル
山本圭祐
木村茂
西トミヱ
田岡佳子
城戸廉
小野孝弘
美輪玲華
森岡龍 修二
河瀬直美 雨宮先生
日本最後の秘境と言われる徳島・祖谷(いや)を舞台に、
都会からやってきた若者と
人里離れた大自然の中で暮らす人々の交流を通し、
大地に根ざして生きることの尊さを描いた長編作。
弱冠29歳の新鋭・蔦哲一朗監督が35ミリフィルムで
四季折々の自然をカメラに収めて撮り上げ、
2013年・第26回東京国際映画祭「アジアの未来」部門にも出品された。
東京から自然豊かな山里の祖谷にやってきた青年・工藤は、
自給自足の生活を始めようとするが、
一見のどかな村にも、土建業者と自然保護団体との対立や、
田畑を荒らす野生動物と人間との戦いなど、
さまざまな争いがあった。
そんな時、山奥で質素な生活を送る
お爺と女子高生の春菜に出会った工藤は、
2人の静かな生活に心が洗われていく。
しかし、時が流れるとともにお爺の体が弱っていき……。
若手アクション女優として注目を集める武田梨奈が
アクションを封印し、春菜役を務めた。
お爺役に田中泯、青年・工藤役に大西信満。
「殯の森」「萌の朱雀」の河瀬直美監督も女優として出演している。
(映画.COMより)
映画魂が込められた作品
武田梨奈、田中泯、大西信満が
体を張って
その気概に応えています。
(^-^)/
祖谷は日本最後の秘境と言われているそうですが、
まだまだもっと凄い秘境はありますよ。
家人がそんな秘境出身なもので、
「祖谷」の秘境度自体に驚きはなかったです。
私も田舎出身ですが、
家人の田舎は田舎度が半端でなく本当に秘境。
私はカルチャーギャップと20年以上格闘しています。
先日シネマヴェーラ渋谷の野村芳太郎監督特集で
『八つ墓村』観ました。(劇場鑑賞は初めて)
あの舞台の秘境度もまだまだですが(笑)
小川真由美(外部から旧家に嫁いできた)
の立場には思わず同情してしまいましたよ(苦笑)
『祖谷物語』の秘境度には驚かなかったですが、
この映画を1年間かけて撮影した映像、作り手の熱意と、
それに応えたメインキャストの演技は素晴らしかったです。
田舎の自然や生活を賛美している訳ではなく、
祖谷の抱える問題点に対する
客観性、批評性が込められています。
お爺と春菜のように電気・ガス・水道もない、
自給自足の生活が祖谷のような秘境においても、
もう存在していない事を取材した上で、
物語として描いているのです。
武田梨奈、田中泯、大西信満は寡黙な人たち。
セリフで説明せず映像で語ります。
後半の不思議な展開も前半に伏線が張られています。
上映時間169分は確かに長尺ですが、
冗漫ではありません。
作品をを堪能するのには劇場鑑賞向きです。
田中泯さんはダンサー、
武田梨奈さんは空手家(今回は空手アクションは勿論なし)として、
抜群の身体能力、バランス感覚がありますから、
体を張った肉体演技(農作業や生活の中の体の動き)
も腰が入っていてとても美しかったです。
今回の東京でのアンコール上映は終わりましたが、
横浜シネマ ジャック&ベティ、京都シネマ、
山梨テアトル石和、神戸アートビレッジセンター
シネマ尾道、香川ホール・ソレイユなどで、
今後も上映がありますので、
ぜひご覧ください。
行きつけのミニシアターにリクエストもおススメします!
蔦監督はこの映画で今月、上海国際映画祭にも招待されましたので、
今回の上映での舞台挨拶はなかったのですが、
蔦監督が代表をしているニコニコフィルムのスタッフが、
上映後に鑑賞したお客さんにロビーで「ありがとうございます」
と挨拶してくれ、お客さんと交流していました。
ニコニコフィルムとは
我々ニコニコフィルム(通称=ニコフィル)とは
2005年に東京工芸大学の映像サークルとして
旗揚げされた若武者集団のことです。
矢島仁准教授の指導のもと、
映画の基礎となるモノクロフィルムの仕組みを学び、
撮影・編集はもちろんのこと、
暗室での現像、プリント焼きやネガ編集などの工程も
すべて自分たちで行ってきました。
しかも、現像においては機械ではなく、
自分たちでフィルムを木のリールに巻き付けて、
お手製現像液の入ったタンクに漬け込むという
極めて原始的な映画創成期並みの手法です。
このことによって我々は撮影以外の映画技術にも関心や向上心が芽生え、
フィルムに愛着を持つという他の学生が学び得ることができなかった
未来への遺産を手にすることができました。
(『夢の島』オフィシャルサイトより)
卒業製作作品『夢の島』では
シネマスコープ16ミリモノクロームを
自家現像という時代に逆行する作品を発表。
ぴあフィルム・フェスティバル2009で入選。
『夢の島』オフィシャルサイト←クリック
↓『夢の島』予告動画
待望の新作となる本作においても、
完全35mmフィルムでの撮影を敢行。
デジタル化が浸透していく映画業界の逆風に屈することなく、
100年後、1000年後まで残る本物を制作しようと志高く撮影に挑み、
世界の映画に引けを取らない映像美を実現した。
(『祖谷物語』オフィシャルサイトより)
デジタル技術の進歩で、
映画もデジタルビデオでの撮影、編集、
上映もデジタル上映という形式が一般化されています。
ただ、あえてフィルム撮影での表現にこだわる作家は、
フィルム撮影してから、
情報をデジタル変換してデジタル上映に対応しています。
この映画はフィルム撮影の質感が、
湿度感、森の匂いまで感じさせることに
成功していると感じました。
デジタル撮影・上映はコスト面など多くのメリットもありますが、
保存性については今の所、フィルムの方がコストが安く、
長期的な保存にも向いています。
東京国立近代美術館フィルムセンター
映画保存とフィルム・アーカイブ活動の現状に関するQ&A
↑とても参考になりますので読んでみてください。
先日の
ツァイ・ミンリャン監督リー・カンション
『郊遊 ピクニック』公開来日記念イベント←クリック
で、ツァイ・ミンリャン監督が、
今回の来日で、
野上照代さん(スクリプター、黒沢プロダクション・マネージャー)
と対談したら、
野上さんは、今の若い人は
ワールドカップにしか興味がない。
今後18歳以上に選挙権を与えるようになったら、
成熟していない若者の投票で、
世の中が悪くなると悲観してみえた。
でも、私は若い人たちに期待している。
と話されていました。
年配の方が心配される気持ちもお察ししますが、
私は現世利益を追って未来を考えない逃げ切り世代の考えや、
若い世代に還元されない老人資本主義の方が
社会的には悪い影響を与えていると思っています。
日本映画界でも気概のある若い人たちが、
どんどん活躍して欲しいです。
(皮肉なことに海外の映画祭などで、
国内より先に評価されることが多くなっています)
蔦哲一朗監督の祖父は、
徳島県立池田高校野球部元監督の故蔦文也さん。
蔦文也監督のドキュメンタリーも制作中です。
『祖谷物語』では、
監督はじめスタッフは、
人里離れた山奥で実際に畑を耕し、
蕎麦を育てました。
映像は1年かけて祖谷の四季の風景が
しっかり記録されています。
この撮影スタイルは、
21日からユーロスペースで特集上映が始まった、
「小川プロダクション」のドキュメンタリーの
遺伝子を受け継いでいるように感じました。
小川プロの作品にはとても興味がありながら、
『1000年刻みの日時計』を公開当時に観ただけなので、
今回この上映では全部観たい気持ちですが、
それは残念ながら無理。
何本か選んで観る予定です。
さて、秘境と言われるような田舎では、
外部からの移住者を受け入れている所もあります。
私は、現地の人の、
外部の人(移住者や観光客)や、
現地から出て行った人に対して見せる顔や本音を
リアルに見聞きしてきました。
現地出身者と結婚した者に対する対応、
これは実地体験してきました。
何年たっても克服できないカルチャーギャップや
困難があります。
これは簡単にブログにも書けないです。
今の所、文章にする気持ちにはなれません。(冷や汗)
『祖谷物語』観ていて、
正直な所、落ち着かない気分ではありました。
この記事も冷静に書くぞ~と気合を入れて書きましたf^_^;
でも、やはり色々考えが逡巡してしまい
書くのに時間がかかってしまいました...
この映画をおススメして下さった、
ブロガーsakuさんの『祖谷物語』記事←クリックでお読みください。
『祖谷物語 おくのひと』公式サイト←クリック
『祖谷物語 おくのひと』公式ブログ←クリック
オーディトリウム渋谷で、
7月3日(木)4日(金)21:00~上映します
どちらかで主演のmimpi*β(ミンピ)のミニライブ予定。
渡部亮平監督日プロ大賞新人監督賞受賞記念
まだ、ご覧になってみえない方はこの機会をお見逃しなく
何回でも観たい方もぜひご覧くださいね
渡部亮平監督応援しています
ぜひ、お近くの映画館にリクエストして下さい
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