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そこのみにて光り輝く感想ATG・ロマンポルノの香り懐かしいけど新しい 綾野剛、池脇千鶴、菅田将暉

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『そこのみにて光り輝く』
浜松シネマイーラで5月9日(金)までロードショー公開中ビックリマーク
TOHOシネマズ川崎で鑑賞
日本映画 2014年製作







↓予告動画


監督:呉美保
原作:佐藤泰志
企画:菅原和博
製作:永田守
   菅原和博
脚本:高田亮
撮影:近藤龍人
照明:藤井勇
録音:吉田憲義
美術:井上心平
編集:木村悦子
音楽:田中拓人
助監督:山口隆治

キャスト:

綾野剛    佐藤達夫
池脇千鶴   大城千夏
菅田将暉   大城拓児
伊佐山ひろ子 大城かずこ
田村泰二郎  大城泰治
高橋和也   中島
火野正平   松本

今年の日本映画を代表する1本になること間違いなし
綾野剛、池脇千鶴の代表作にもなるでしょう
アメリカンニューシネマ、ATG、にっかつロマンポルノ
の香りがする、現代性のある作品
『海炭市叙景』『さよなら渓谷』観た人は勿論外せない、
観ていない人も押さえておくべき作品


『海炭市叙景』に続き「函館シネマアイリス」代表菅原和博氏が、
佐藤泰志の原作を企画・製作した函館発のインディー映画です。

佐藤達夫は山の石の採掘現場で発破(はっぱ)の仕事をしていたが、
事故で同僚を失ったことの責任感から仕事をやめ、
街でパチンコしたり、酒を飲む生活をしていた。
パチンコ屋で偶然知り合った人懐こい青年大城拓児の家に連れて行かれ、
姉千夏に一目ぼれする。
大城家は父親が脳梗塞で寝たきりになっているが、
父は性欲だけは旺盛。母親は疲れ切っている。
拓児は仮釈放中で、
千夏の愛人の植木会社社長中島に面倒を見てもらっている。
千夏はこの家族のためにイカの塩辛作りのパートと売春で稼いでいる。
達夫の山の仲間松本は達夫を心配し、
仕事に戻れと話に来る。

こんな先の見えない生活をしている達夫と千夏が、
お互いに好意を持ったことから、
変化が起こる。


『海炭市叙景』同様、舞台を函館とはしておらず、
「函館」という言葉は出てこないが、
函館山や函館の風物が写し込まれて
「架空の街」感と、現実の「函館」感は、
観る側の視点で成立することになります。
私は今年あまり日本映画の新作を観ていないのに、
この作品で北海道が舞台の映画が3本目。 
『抱きしめたい』←クリック
『銀の匙』←クリック
は標準語でしたが、
本作は方言を使っています。


この映画は、ATG、にっかつロマンポルノの
匂いがするなあと思って観ていました。
それはそうだ、菅原さんが、佐藤泰志の小説に映画的要素を感じ、
ロバート・アルトマンの『ショート・カッツ』のような「街」を
テーマにした作品が作れないかと出発したのが『海炭市叙景』。
70年前後のアメリカン・ニューシネマや、
同時期の神代辰巳、藤田敏八、深作欣司の映画のような、
閉塞感の中で生きる男女の映画を作れるのではと出発したのが本作でした。
原作は23年前の小説ですが、
今を生きる若者と家族の物語に置き換えられ、
『酒井家のしあわせ』『オカンの嫁入り』の呉美保が監督することで、
男くさい物語に女性監督ならではの視点が活かされた、
懐かしいのに新しさを感じる作品になりました。

主演の綾野剛のうらぶれ感はとてもリアルでしたが、
許可を得てずっと酒を入れながらの撮影だったそうで、
役への入れ込み方や達成感は今までにない物だと本人も語っています。
入魂の演技が結実しています。

池脇千鶴は映画デビュー当時から好きな女優で、
出演作は殆ど観てきました。
主演作では強い存在感を示し、
脇役の時も器用にこなしつつ印象を残してきました。
本作はまさに「こんな千鶴ちゃんが観たかった!」です。
もう若くはないけど、
崩れかけた女の色香と可愛らしさ、
そして誰にも汚されない強さを内包した千夏を、
体と演技で絶妙に表現しました。
昨年は『さよなら渓谷』の真木よう子、
今年は池脇千鶴の年になるのではと期待しています。




『共喰い』で演技開眼した!?菅田将暉が、
本作でも、とてもいい芝居をしています。
『許されざる者』の柳楽優弥も想起しましたが、
チャラい顔をしながら、
家族を気遣い、姉を慕い、何とか現状から抜け出そうとあがいているが、
自分の感情を制御できない危さを抱えた青年を、
リアルに造形しました。
助演男優賞に絡んでくるのではないでしょうか。






その他の助演者もベテランがグッと引き締めてくれています。
火野正平の孤独の深さを表現したワンシーンは注目です。

高橋和也が裸の熱演もさることながら、
いやらしさと情けなさ、人間の業の深さを体現しました。

にっかつロマンポルノで活躍した伊佐山ひろ子の
疲労感、倦怠感はさすがでした。

田村泰二郎さんはちょっとゾッとするリアリティーでした。

函館港イルミナシオン映画祭ディレクターも務める、
あがた森魚さんもカメオ出演。




脚本は『さよなら渓谷』にも共同脚本で参加した高田亮。
原作を上手く現代に移し込んでいます。

そして、制作スタッフの充実した仕事ぶりも素晴らしいです。
美術・録音・照明・撮影の技術が、
作品の細やかな世界観の醸成にとても大きく影響しています。
制作スタッフ、出演者一丸の本気度が伝わって来る作品でした。

私は近藤龍人さんのカメラが大好きです。
本作の仕事にも唸りました。
ベッドシーンはカメラは役者と一体になっています。
近藤龍人さんの光の捉え方にいつも感心していますが、
これは印象に残って忘れられないだろうと思える、
ラストシーンは白眉です。


まあ、私がこんな記事を書くと、
またインディー映画に肩入れしている、絶賛している。
とか、思われてしまうでしょうねェ。
でも、自分としては、
基本苦手なラブロマンスものだし、
入り込んで観た訳ではないです。
冷静に観ていましたよ。
この映画は客観性を保ちながら細部も味わえた作品でした。
(まだ書いていませんが、
今月は客観性を保っていられなかったような作品も観ましたので。)

キネ旬などの日本映画べストテンや、
各種映画賞に絡んでくる作品となることは間違いないでしょうし、
純粋に作品的にも、
レベルの高い作品、良い作品を見逃したくない方には、
ぜひおススメです。
きっともう観たよ!予定に入っている!って方も、
多いと思いますけど。

呉美保監督の作品は今迄も公開時に観てきましたが、
今回は彼女も大きくステップアップして、
代表作になりますね。

濡れ場は、ロマンポルノなどに比べたら、
ギラギラ感や、衝撃度が違うという指摘もあるでしょうけど、
私はこれはこれで、監督の見せたい表現が
きっちり撮れていると感じました。
役者さんたちはしっかり脱いでいますョ。

この映画の評価は、
特に男性に対してはその人のジェンダーバイアスが測れる、
恰好の作品でもあるなあと、
ちょっと挑戦的!?な投げかけも書いて終りにしておきます。

それから、パンフレットはシナリオも収録されていて、
インタビューなど内容も充実しているのでおススメですよ。

オカンの嫁入り[DVD]/TOEI COMPANY,LTD.(TOE)(D)


酒井家のしあわせ [DVD]/スタイルジャム


海炭市叙景 [DVD]/ブロードウェイ


さよなら渓谷 [DVD]/キングレコード


海炭市叙景 (小学館文庫)/小学館


そこのみにて光輝く (河出文庫)/河出書房新社





『かしこい狗は、吠えずに笑う』

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