『夢想の楽園』
1926年製作
アメリカ映画
サイレント
サイレント映画ピアニスト柳下美恵さんのピアノ伴奏
シネマジャック&ベティで鑑賞
5月26日(金)まで連日15:00〜
サイレント映画ピアニスト柳下美恵さんの
今回はダイナミックな演奏も堪能できる
素晴らしいピアノ伴奏付きの上映です。
21日(日)は上映後に映写室見学ツアー、
24日(水)は上映後に茶話会あります。
私は初日20日の上映・演奏で鑑賞し、
柳下美恵さんとゲストの映画評論家宇田川幸洋さんを
囲んでの茶話会に参加しました。
(劇場1階の横浜パラダイス会館にて)
川口や下高井戸から来たという方もみえました。
西部劇愛好家のサークル「ウエスタン・ユニオン」の
筑紫さんが参加されてました。
宇田川さんは10代の頃、筑紫さんの書かれた
西部劇映画の記事を読んでいたそうです。
雑誌「ブルータス」のサイトに「ウエスタン・ユニオン」を
紹介した記事がありました。ここ←クリック
『夢想の楽園』は内容を全く知らずに観ても
1粒で2度美味しいどころか、
4度美味しい映画だと思います。
(その4度については後述します)
当時の売れっ子大スターコンビ、
ロナルド・コールマンとヴィルマ・バンキーが主演。
そしてこの作品がデビュー作となる
ゲーリー・クーパー(25歳)の初々しい姿が見られます。
フランセス・マリオン(大脚本家)
↑クリック がラッシュを見て
この新人はすごいと言ったそうです。
この作品まではエキストラ出演を何本もしていたクーパーが
大抜擢された作品です。
(名前がクレジットされた短編出演が
『夢想の楽園』の前に1本あるそうです)
大スターの2人を相手に存在感を示しています。
監督は『頭上の敵機』『キリマンジャロの雪』
『慕情』など117本もの監督作があるヘンリー・キング。
ジャック&ベティでこれから観る予定の方で
事前情報を入れないで観たい方、
(あるいはDVDで観たい方)
はここまでにして、
後は鑑賞後にまた読んで下さいね。
ジャック&ベティの大きなスクリーンで
柳下美恵さんのピアノ即興生演奏付き上映、
とても贅沢な気分が味わえますよ。
ジャック&ベティの昭和な雰囲気もぴったりです。
(『夢想の楽園』の製作年1926年は昭和の始まった年)
茶話会で原題「The Winning of Barbara Worth」
に、『夢想の楽園』との邦題は
日本人らしい繊細な感性を感じるという
話が出ました。
原題の「バーバラ・ワースの勝利」じゃ、
何に勝利!?な感じ。(^▽^;)
チラシ画像の後は
スタッフ、出演者、簡単なあらすじや
茶話会で聞いこと、
1粒で4度美味しい意味などを書きます。
詳しいあらすじや完全なネタバレは書きませんので、
興味のある方は読んで下さい。
『夢想の楽園』
原題:The Winning of Barbara Worth
監督:ヘンリー・キング
製作:サミュエル・ゴールドウィン
脚本:フランセス・マリオン
原作:ハロルド・べル・ライト
撮影:ジョージ・S・バーンズ
トーマス・E・ブラニガン
美術:カール・オスカー・ボルグ
技術:ジョン・K・ホールデン
効果:ネッド・ハーバード・マン
出演:
ロナルド・コールマン(ウィラード・ホームズ)
ヴィルマ・バンキー(バーバラ・ワース)
ゲーリー・クーパー(エイブ・リー)
チャールズ・レイン(ジェファーソン・ワース)
E・J・ラトクリフ(J・グリーンフィールド)
ポール・マカリスター("預言者"ヘンリー・リー)
クライド・クック(テックス・ジョー)
アーウィン・コネリー(パット・ムーニー)
エドウィン・J・ブラディ(マクドナルド)
サム・ブルーム(ホーレス・ブラントン)
フレッド・エスメルトン(ジョージ・カートライト)
ビル・パトン(リトル・ローズバッド)
ハロルド・ベン・ライトの小説「バーバラ・ワースの勝利」を
フランシス・マリオンが脚色した西部劇。
西部劇と言っても所謂男臭い典型的な作品とは違います。
この映画はプロデューサーのサミュエル・ゴールドウィンが
『幌馬車』(1923年)の成功を見て
対抗できる映画を製作したくて
当時売れっ子大スターのコンビだった
ロナルド・コールマンとヴィルマ・バンキーを起用し
西部劇に2人のロマンスを合わせたら最強!
『幌馬車』に負けない作品になるだろう。
と、考えて生まれた作品だそうです。
西部の砂漠へコロラド川から水を引き
農地を灌漑、開拓して豊かな土地にしたいと
長年夢見て計画しているジェファーソン・ワースには
小さい頃に砂漠で父母を亡くしたところを
助けた養女のバーバラ(ヴィルマ・バンキー)がいた。
バーバラは技師のエイブ・リー(ゲーリー・クーパー)
のことを慕っていた。
ジェファーソンはニューヨークから
投資家ジェームズ・グリーンフィールドと彼の養子で
技師のウィラード・ホームズ(ロナルド・コールマン)
を招く。
グリーンフィールドの資金で水門が完成し水が引かれ
キングストンの街が拓かれた。
バーバラに恋したホームズは、
金のことしか考えない義父グリーンフィールドと
仲たがいする。
グリーンフィールドが金を惜しんで
安上がりな設計にした水門は
上流の豪雨による増水に耐えられず
キングストンの街に危機が迫る。
89分の尺の中に
西部開拓の様々な人間ドラマ、
三角関係のラブロマンスが織り込まれています。
終盤には銃撃戦もあるし、
迫力のディザスター描写も。
ここは見所で柳下さんの演奏も大迫力。
特撮と実際のアクションを上手く編集してあり
現代のCGを使用したものに負けないと感じました。
茶話会の時、
前半の砂嵐と、
終盤の特撮とアクションの組み合わせは
どうやって撮ったのか気になりましたと
宇田川さんに質問したら
砂嵐は扇風機で飛ばしているとのことで、
特撮とアクションの組み合わせた洪水シーンは
本物の水を使っている生々しさが
CG描写より迫力を感じる原因ではないかとのお話でした。
1粒で4度美味しい意味は
1.柳下さんの素晴らしい即興演奏を聴ける。
(楽譜はなしで柳下さんが映画を観ながら
即興で演奏されます。)
2.西部劇だけどラブロマンスの要素が多目の
こんな作品もあったという新鮮さ。
3.ヴィルマ・バンキーはハンガリー出身、
ロナルド・コールマンはイギリス出身。
映画全体に野卑な感じが殆どなくて
どこが舞台なのか一瞬忘れそうな雰囲気もある。
4.だけどディザスター描写は容赦のない迫力。
リアリティーを追求した作りこみでハラハラした。
今見ると驚きも多く
柳下さんの即興演奏とともに
とても楽しめました。
「コールマン髭」
(口の上だけに短く生やした髭)
という言葉もあるくらいで
ロナルド・コールマンは日本でも人気があったようですね。
『夢想の楽園』は1926年の作品
アメリカ公開が1926年10月14日、
日本公開が1927年2月25日で早いです。
(デジタル大辞泉より)
色々盛り込み過ぎたからか、
ロマンス要素が多目なためか?
西部劇映画史の中で後世に残る名作には
ならなかったようですが、
ユーモアもあって笑えるし、
子どもたちがとてもイキイキと可愛らしいし、
ロマンスあり、アクションあり、
驚きのディザスター描写もあって
エンタメ映画として見所の多い作品です。
柳下さんの生演奏が映画に本当にフィットしていて
映画にグッと集中してのめり込んで観ていました。
そして、私的に大いに楽しめたポイント。
イケメン、美女好きな私ですが(^▽^;)
今のハリウッドスターには
しみじみうっとりする美しさは滅多に感じません。
でもこの映画のバンキー、コールマン、クーパーには
とてもうっとりしましたよ。
レアなサイレント映画を素敵な生演奏で観られて
とても贅沢な映画体験でした。
そして茶話会ではマニアックなお話を
たくさん聞けて勉強になりました。
私は専門性のある映画ファンではなく、
何か映画のジャンルの専門性を極めるのは
気が多くてできそうにない。
でもこういう場で話を聞くととても勉強になる。
「知らないで書く」って怖いな。
と、つくづく思う。
『夢想の夢』のゲイリー・クーパー
『ダーク・エンゼル』1925年
ロナルド・コールマンとヴィルマ・バンキー
『悲恋舞曲』1927年
ロナルド・コールマンとヴィルマ・バンキー
『夢想の楽園』の翌年1927年
同じくヘンリー・キング監督の
『魔炎』
ロナルド・コールマンとヴィルマ・バンキー
『スペインの花』
1928年の
ロナルド・コールマンとヴィルマ・バンキー
↑前回の「THE PIANO & CINEMA」の私の記事
宇田川幸洋さんの「キン・フー武侠電影作法」新装版が5月25日に発売されます!
新装版 キン・フー武侠電影作法 Amazon |
キン・フー武侠電影作法 Amazon |
アップリンク渋谷の
「柳下美恵のピアノdeシネマ」チラシ。
私は夜映画鑑賞は原則できないのだけど、
ドキュメンタリー映画好きとしては
6月2日の
『極北のナヌーク』行きたいなあ。
次回のシネマ・ジャック&ベティでの
THE PIANO & CINEMAも楽しみ。
コメディーをやっていないから
考えてみようかしらとのことでした。
5月にアップリンクでやった
『キートンのセブンチャンス』
テクニカラー版見たいです!
『キートンのセブンチャンス』は
私の生涯ベスト1アクション映画です。
こんなすごいアクション映画
現代の作品の中にもないです。
(しかもモテモテのキートンという珍しさ)
『夢想の楽園』
ゲイリー・クーパー(左)と
ロナルド・コールマン
今週劇場鑑賞した映画
『STOP』
『マンチェスター・バイ・ザ・シー』
『≒草間彌生 わたし大好き』
『夢想の楽園』
カンヌ映画祭ウォッチもしていますが
ごめんなさい、時間がかかるので
今年は記事は書かないかも。
SCREENDAILYの星取り表では
アンドレイ・ズビャギンツェフ監督「Loveless」
トッド・ヘインズ監督「Wonderstruck」
の評価が高いですね。
これは前評判通り。
アンドレイ・ズビャギンツェフ監督
トッド・ヘインズ監督と
ミシェル・ウィリアムズ、ジュリアン・ムーア
ミリセント・シモンズ、ジェイデン・マイケル
eigajikouツイッター←クリック
映画時光のなう←クリック
eigajikouインスタグラム←クリック
観た映画の感想投稿を
ツイッター、なうで再開しました!
月曜日UPなうのまとめもぜひ読んでください!