『人生なき人生 』
イラン映画
東京国際映画祭コンペ作品
モフセン・マフマルバフ、サミラ・マフマルバフ、バフマン・ゴバティ監督などの助監督をしてきた
カワェ・モインファル監督第1作。(助監督経験豊富ですでに巨匠の様な風貌です。1974年生まれで監督デビューは遅かった澤井信一郎監督みたいかな?)
ウィーンへの留学準備が整っている若い音楽家のサティアールだが、父アルテシールは反対している。
その父が急に倒れ癌で余命半年の告知を受ける。
治療にお金がかかるのに父がお金を貸した相手が返してくれないので、
サティアールが代わりに交渉に行く。
彼のセタール(ギターのような3弦のイランの弦楽器)の演奏と歌が素晴らしいので、
それを聴いた相手がお金を返してくれた。
父は化学療法の抗がん剤点滴中に
同じくガン患者の女性マルジャンと知り合い…
登場人物たちの人柄、生活感などが丁寧に描かれていて、
どこの国の家族も同じ様な悩みを抱えているのだなぁと思った。
今年の東京国際映画祭では手持ちカメラぐらぐら映像をたくさん見たので固定カメラの安定感が嬉しかった。
監督が10年前にお父さんを癌で亡くされ
その経験が元になっていますし、
俳優の好演もあって、
私はガンサバイバーなので癌闘病描写ある映画に厳しくなってしまうけど本作は素直に見れた。
人情溢れるユーモアとバラエティーに富んだイラン音楽が素晴らしい佳品です。
クルド人としての父の人生、
父の束縛を乗り越えようとする息子の姿が描かれていますが、普遍性のある家族ドラマになっています。
サティアールの演奏する音楽はじめ、
バラエティーに富んだイラン音楽を堪能。
監督自身もセタールを弾くそうです。
音楽担当のニマ・アズィミネジァドさんがQ&Aで楽曲はそれぞれ彼が映画のシーンに合わせて作ったことを説明してくれました。
私はバフマン・ゴバティ監督映画の音楽センスが大好きです。
モインファル監督はゴバティ監督の作品にも参加しているので影響を受けたのかもしれないです。
映画では終盤に予期せぬ悲劇が起こりますが、
監督が「我々は人生の予測は出来ないけれど、
何があっても人生は続いて行くのです。
ラストの音楽と色鮮やかな映像には悲しみを乗り越えるための希望を込めました。」と語りました。
トルコ人の質問者から
トルコの驚きのネット検閲と
取り締まりとその罰を聞いたり、
私の前の席でコンペ作品『ザ・ホーム 父が死んだ』のアスガー・ユセフィネジャド監督と主演女優モハデセ・ヘイラトさんが熱心にビデオを撮っている姿も見られました。
映画祭ならではの雰囲気を楽しみました。
東京国際映画祭2017では
コンペ部門作品は
『アラケット ロヒンギャの祈り』
『ナポリ、輝きの影で』
『ペット安楽死請負人』
『グレイン』
『ザ・ホーム 父が死んだ』
『迫り来る嵐』
『泉の少女ナーメ』
『シップ・イン・ア・ルーム』
『スヴェタ』
9本を観賞。(コンペ作品は15本)
全部観てないけど東京グランプリは
『迫り来る嵐』か『スヴェタ』な気がします。
その他の賞の予想です。
審査員特別賞
『迫り来る嵐』か『スヴェタ』
最優秀監督賞
ジャンナ・イサバエヴァ『スヴェタ』
最優秀女優賞
ラウラ・コロリョヴァ『スヴェタ』
最優秀男優賞
ドアン・イーホン『迫り来る嵐』か
マッティ・オンニスマー『ペット安楽死請負人』
最優秀芸術貢献賞
『グレイン』か『泉の少女ナーメ』
アジアの未来部門作品は
『アリフ、ザ・プリン(セ)ス』
『人生なき人生』
『老いた野獣』
『僕の帰る場所』
『殺人の権利』
『現れた男』
10本中この5本観賞しただけですが、
受賞予想は、
アジアの未来 作品賞
『アリフ、ザ・プリン(セ)ス』
国際交流基金アジアセンター特別賞
『殺人の権利』か『僕の帰る場所』
日本映画スプラッシュ部門は
『Of Love&Low 愛と法』
9作品中この1本しか観てないのですが
ぜひ『Of Love&Low 愛と法』に
受賞して欲しいなぁ。
その他には
ワールド・フォーカス部門
『セクシー・ドゥルガ』
『イスマエルの亡霊たち』
『アンダーグラウンド』
『シリアにて』
『メイド・イン・ホンコン デジタル・リマスター版』
『レインボウ』
クロスカット・アジア部門
『ヤスミンさん』
『回転木馬は止まらない』
以上24本観賞(今日3本観ます)
一番印象に残ったのは
今のところフィリピン映画『アンダーグラウンド』